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あの花火に、もう少しだけ近づきたくて。

暑さも冷めやまぬ夕方。


今日は花火大会の日だった。
屋台や出店も並んでいたけれど
僕の家から花火が見える。

だから家族や親戚みんなで家の前に椅子を並べ
ゆっくり眺めることにした。

「ドン!」

夜空に一発目の花火が咲いた。

娘にとって花火は、絵本の中でしか見たことのないもの。
きっと、こんなに大きな音がするなんて思っていなかったはずだ。

最初は目を丸くして、口をぽかんと開けたまま固まっていた。

驚いているのか。
見惚れているのか。

何発か花火が上がるうちに、その表情は少しずつ変わっていった。
気づけば、大きな声を上げて笑っている。

そして突然――


花火に向かって走り出した。

一目散に。

夜空のずっと向こうで光る花火を目指して、小さな足で全力疾走。

思わず娘の手をつかんだ。

転んだら危ない。

人にぶつかるかもしれない。

「一緒に行こう。」

そう思って手をつないだ。

でも娘は、僕の手を振りほどいて、また走り出した。

抱っこして戻っても。

手をつないでも。

また音のする方へ。

もしかしたら
絵本で何度も見てきた花火を
少しでも近くで見たかったのかもしれない。

娘が本当は何を思っていたのかは、まだわからない。

まだ言葉では伝えられないから。

それでも、体いっぱいに。

表情いっぱいに。

「楽しい!」

そんな気持ちだけは、はっきり伝わってきた。

抱っこして。

追いかけて。

また抱っこして。

正直、大変だった。

それでも今年の花火大会で
一番心に残ったのは夜空に咲く花火じゃない。

あの花火に、もう少しだけ近づきたくて。


夢中で走り続ける、小さな背中だった。











 ↑この記事で娘は花火の絵本に出会いました。
  


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