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ひらがなの寝言

どうしても眠かった。
体調も思わしくない。
その状態で息子の遊びに付き合っていれば眠くもなるというものだ。私は人形を動かしながら、うつらうつらと船を漕いでいた。

瞼が重い。息子の声が遠い。
意識がふわふわと夢にもっていかれそうだ。夕飯もお風呂もまだなのに。
夢と現実の境界で足踏みしていると、不意に自分の声で目が覚めた。

「ひらがなってそんなにあったっけ?」

どこからその台詞でてきた?
物凄い勢いで目が開いた。
息子に確認すると、うとうとしながら声に出していたらしい。どんな夢だったのだろう。まったく覚えていないことがとても悔やまれる。

眠気を引きずりながら立ち上がり、なんとか夕飯を終えてお風呂に入る。浴室の壁には、息子のひらがな表が貼ってあった。
相変わらず、夢で何があって「そんなにあったっけ?」と思ったのかは謎のまま。だけど改めてそのカラフルな表を眺めてみれば、無限の組み合わせを内包した五十音がびしっと整列している。答えはひとつ。「そんなに」ある。

「ひらがなってな、五十個あんねん」

どこかのモデル風に、夢の中の私に返事をした。息子が揺らしたお湯がぱちゃぱちゃと音をたてている。


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