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【3分間小説】最後のバレンタインになるはずだったのに|何度でも ― DREAMS COME TRUE

この作品はフィクションです。特定の曲や歌詞にインスピレーションを得て執筆していますが、実在の人物・出来事とは関係ありません。音楽をきっかけに生まれた短い小説としてお楽しみください。

家の前の街灯が灯った。
中で待てばいいのに、と母に言われたけど、どうしても外で待ちたかった。

かじかむ指先をコートのポケットに突っ込んで、その角を曲がってくる「影」を待っていた。

小学生の時に隣に引っ越してきた彼は、出会ったその瞬間から今までずっと私の憧れ。クールな立ち振る舞いも、少し低めの声も。

毎日のように浴びせる私の好き好き攻撃は、一度も彼を射止めたことがない。

「ねえ、これあげる!」
「好き!」
「今日こそ付き合って!」

でも、彼はいつだって「いらない」「興味ない」とそっけない。冷たくあしらわれては、友達にも家族にも笑われた。それでも私の心には、あきらめきれない火が灯るのだ。

10000回ダメでも、次の1回は。

そうやって10年近く、私は彼に体当たりを続けてきた。けれど、今年ばかりは余裕がない。

春になれば、彼はこの町を出て、遠い大学へと進学してしまう。だから、今日が最後のバレンタイン。

「……あ、来た」

見慣れた背の高い人影が、角を曲がってきた。私の姿を認めると、彼は少しだけ眉を寄せて足を止めた。

「……ストーカーかよ。」
その呆れたような声に、いつもなら「そうだよ!」と笑い飛ばすけれど、今日ばかりは足が震えた。

彼の好きなビターチョコに、隠し味のヘーゼルナッツ。彼が一番好きな味を、私は世界中の誰よりも知っている。

私は一歩踏み出し、コートの中から丁寧にラッピングされた箱を取り出した。

「これ……今年こそ、絶対に受け取って!!これで最後にするから、だから…!」

言い終える前に涙が込み上げてきた。両手で差し出した箱が、冬の冷たい空気の中で微かに震える。

これが最後のバレンタインだと思ったら、急に淋しさに襲われた。自分でもびっくりして、チョコを差し出しながら、ギュッと目を瞑り下を向く。

また「邪魔だ」と言われるだろうか。地面に落とされるだろうか。そう考えると、ふたたび涙が込み上げてくる。

さらに強く目を瞑り、降ってくるはずの拒絶の言葉を待った。

「……何言ってんの。これ、毎年恒例行事でしょ」

静かな声。
直後、手元から重みがふっと消えた。
恐る恐る目を開けると、私の箱が、彼の大きな右手に収まっている。

彼はそれを、まるで当然かのように、ひょいっと自分のポケットに放り込んだ。

「……え? ……え? ええええーーーー!?」

呆然とする私を置いて、彼は「じゃあな」と言い放ち、呆気に取られてる私を置いて家の方へ歩き出した。

「え!?どういうこと???ねえーーー!!!」

ハッと我に返って彼の背中を追いかける。少しだけ赤くなった彼の耳たぶが、夕闇に溶け込んでいく。

10年分の「次の1回」が、今、信じられない奇跡の音を立てて鳴り響いた。

10000回だめで へとへとになっても
10001回目は 何か 変わるかもしれない

何度でも|DREAMS COME TRUE

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しおりん🫖🫧 チップありがとうございます! 大変はげみになります。