【3分間小説】17時の交差点|オレンジ ― SMAP
この作品はフィクションです。特定の曲や歌詞にインスピレーションを得て執筆していますが、実在の人物・出来事とは関係ありません。音楽をきっかけに生まれた短い小説としてお楽しみください。
「ねぇ、東京に行くって……本当なの?」
息を切らしながら教室に飛び込むと、一直線に俺の席へ向かってきた。
「あぁ。なんだ。もう聞いたのか」
「行っちゃうの?東京」
「……大学、受かればな。ホームルーム始まるから戻りな。あとで話そう」
驚きなのか、怒りなのか。それともどちらの感情も混じっているのか、あいつは俺に一瞥をくれて教室を後にした。
この日は一日中、上の空だった。
あいつになんて説明しよう?そればかり考えて、授業なんてまるで耳に入らない。
東京の大学に進学することは、悩まなかったわけではない。あいつの顔だって浮かんだ。
でも、俺に悩む権利なんてない。
あいつはただの幼馴染で、彼氏もいる。
俺が悩む理由に、あいつがいちゃダメなんだ。
「──ってことで、東京の大学に進学したいんだ。別に東京に行きたいわけじゃない。俺が勉強したいことが東京にあるだけだ」
1日かけて最もらしい理由を用意した。
「そう・・かぁ。純ちゃん、頭いいもんね!そっかそっか」
一瞬、寂しそうな顔を見せてくれたけど、すぐに笑顔になる。
「えーーー。でも淋しいなー!純ちゃんに会えないじゃん!」
頬を膨らませて笑う可愛いやつ。
もうすぐこの笑顔も見られなくなるんだ——
3月だと言うのに静かに雪が降る。
「いた!!純ちゃん!!!帰るの早いよ!!!」
卒業式が終わり、ひっそりと家路につく俺を
あいつが走ってこっちに向かってきた。
「滑るぞ!」
「子供じゃないもん、大丈夫よ。それより、帰るの早いよ!明日出発なんでしょ?もっとみんなと喋ろうよ!」
「引っ越しの準備とかあるんだよ」
「ん〜〜そっかぁ。じゃあ、真菜と帰ろう!」
「彼氏はいいのかよ」
「たっくんはクラスの打ち上げ行くって〜。ちなみに真菜たちのクラスは夜からだから、真菜は大丈夫!」
「そっか」
寄り道しながら他愛のない会話をして、ふざけ合って、笑い合った。
この時間が、永遠のように感じられた。
ふと気づくと、陽が暮れ始めていた。二人の分かれ道が近づくほどに、口数が減る。自然と歩く速度も落ちてきた。
「明日出発かぁ。本当に純ちゃん東京行っちゃうんだ」
「お前も明日から卒業旅行だろ?」
「うん。ワンチャン駅で会えるかもねw」
「いや無理だろw」
「純ちゃん・・・」
突然立ち止まって俺を見上げる。
ああ、だめだ。
「私、じゅ・・・」
「拓也と仲良くしろよ!」
言わせない。
俺の声にあいつは驚いた。そしてすぐに理解してくれた。
「!!・・・うん!純ちゃんも元気でね」
笑顔でそう言って、あいつは走り去っていった。
これでよかったんだ。
あいつの目が輝いているように見えたのは、俺の涙のせいだろう。
上京して1年が経った。あいつには一度も連絡していない。
地元にも帰っていない。
この夕焼けを見るといつも思い出すんだ。
あのときの君の涙と、笑顔を。
自分勝手な俺でごめん。
本当は、俺じゃないやつと幸せにしているお前を見ているのが辛くて、東京に逃げたかったんだ。
俺じゃダメなのか?
そんなこと言えるはずもない。俺はお前の幸せを1番に願っている。
だから、「さよなら」
それが、俺なりの“ありがとう”だったんだと思う。
『さよなら。』僕を今日まで支え続けてくれたひと
『さよなら。』今でも誰よりたいせつだと想えるひと
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大変はげみになります。