【3分間小説】タイムカプセルに隠した10年目の本音|てがみ ―HY
この作品はフィクションです。特定の曲や歌詞にインスピレーションを得て執筆していますが、実在の人物・出来事とは関係ありません。音楽をきっかけに生まれた短い小説としてお楽しみください。
天気の良い日、ふと空を見上げて飛行機を見つけると、今でも思い出す。
もしもあの時、別の道を選んでいたら——という、もう一つの世界線の話を。
君と出会ったのは新入社員説明会。
偶然隣に座った君は同い年で地元も近く、私たちはすぐに打ち解けた。
仕事でも関わりの多い部署同士、顔を合わせる機会は自然と増えていった。住んでいる場所も近かったから、仕事帰りにご飯に行ったり、プライベートでもよく一緒に過ごしたりした。
お互いの恋人を交えて遊んだり、夜通し深い話をしたり。君は私にとって、気を遣わずに済む「家族」のような存在だった。
数年が経ち、お互いに転勤が決まった。
初めて生まれる、遠い遠い物理的な距離。
私たち同期は、先に出発する君を空港で見送ることにした。
「これ、後で読んで」
別れ際、一通の手紙を渡された。
帰ってから家で封を切ると、そこには思い出話や感謝の言葉が記されていた。そして、思いもよらない一文に驚いた。
『ずっと好きだった。(友達として)』
当時の私は、その言葉を文字通りに受け取って、「最高の友達を持ったな」なんて誇らしくさえ思っていた。
——それから、10年以上の月日が流れた。
部屋の片付けをしていた時、引き出しの奥から懐かしい封筒が出てきた。
久しぶりに開いた手紙。懐かしい日々を思い出して、私はふっと微笑んだ。
けれど、ある一箇所で、私の目は止まった。
「……友達として」
不自然に書き加えられたような、その一言。
その瞬間、君との出会いから別れまでの記憶が、ものすごい速さで脳内を駆け巡った。
人見知りな私をいつも気にかけてくれたこと。
好きな音楽の話で朝まで盛り上がった、あのカラオケ帰り。
「みんなが嫌がることを、いつもひっそり一人でやってるよね」
「一歩引いた後ろから、みんなを見守ってるよね」
私のささやかな思いやり。
誰も気づかなかったそれを、君だけがいつも見つけてくれた。
それがどれほど嬉しかったか。
……ああ、今さら気づいてしまったよ。
私も君が好きだったんだ。
なんで当時、気づかなかったんだろう。
いや、気づかないふりをしていた?
そして君もまた、自分の本当の気持ちに、気づかないふりをしてくれていたんだね。
最後、伝えようとして、でもやっぱり飲み込んで。
「友達として」という優しい嘘で、君は私を守ってくれた。
本当に、君はどこまでも「いいやつ」だ。
今さら「タラレバ」を言いたいわけじゃない。
君はきっと今、同じ空の下のどこかで、誰かの隣で笑っているはずだから。
ただ、心の中でだけ伝えさせてほしい。
気づかせてくれて、ありがとう。
見つけてくれて、ありがとう。
どうか、そのまま幸せに暮らしてください。
私も、君が見つけてくれた「私」のまま、ここで生きていくから。
置いてきた思い出は ふたりでやさしく包んで
いつかまた会ったなら 互いに理想な人に
振り向きもしないまま 去ってゆく君の背中を
冷たい陽が射すよ
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チップありがとうございます!
大変はげみになります。