開催レポート|医療機関におけるセルフヘルプグループの情報提供に関する調査報告会
2026年6月17日に「医療機関におけるセルフヘルプグループの情報提供に関する調査報告会」を開催しました。
本noteは、開催レポートとなります。報告会当日の投影資料をダウンロードいただけます。もう一度報告を振り返りたい方、ご都合があわずご参加がかなわなかった方、よろしければぜひご覧ください。
開催概要
「医療機関におけるセルフヘルプグループの情報提供に関する調査報告会」
一般社団法人wreathでは、セルフヘルプグループに関する調査・情報発信に取り組んでいます。セルフヘルプグループが活動しやすい社会環境を整えていくため、セルフヘルプグループに関する課題を、調査を通じて可視化し、社会に問いかけていくことを大切にしています。
このたび、医療機関におけるセルフヘルプグループの情報提供の実態を明らかにすることを目的とした調査を実施し、調査報告書を公開しました。そこで、調査結果を広く共有する機会として調査報告会を開催しました。ゲストには、NPO法人Social Change Agency・横山北斗様にお越しいただきました。
日時:2026年6月17日(水)19:00〜20:10(開場18:55)
会場:オンライン(Zoom)
参加者:47名(ゲスト・運営含む)
申込ページ:https://wreathplus260617.peatix.com/
▼報告書はこちらよりご覧いただけます
『医療機関におけるセルフヘルプグループの情報提供に関する調査報告書』


開催レポ―ト
当日はこのような流れで開催いたしました。
19:00-19:05(5分) 趣旨説明
19:05-19:35(30分)調査報告、ゲストよりコメント
19:35-19:47(12分)ブレークアウトルーム
19:47-20:05(18分)ブレークアウトルームの内容の共有、質疑応答
20:05-20:10(5分)クロージング
▼投影資料をこちらよりダウンロードいただけます
(資料のうち、調査報告のページのみとなります)
当日は、医療機関におけるセルフヘルプグループの情報提供について、実態編、課題編、展望編として構成し、調査報告を行いました。

調査報告のあとは、調査報告へのご意見やご感想のご共有ならびに「セルフヘルプグループを必要とする方がつながりやすくなるためには、何をどうすればよいか」をテーマに意見交換をする場として、ブレークアウトルームの時間を設けました。

ブレークアウトルームのあとの全体の場での共有の時間では、「これまでに感じていたこと、なんとなくわかっていたことが調査結果として明らかになり、可視化された」などのお言葉をいただきました。ブレークアウトルームでの時間が限られており大変失礼いたしましたが、大切なお話をご共有いただいたことに感謝申し上げます。
ゲストのNPO法人Social Change Agency・横山北斗様からのコメント
報告会終了後、ゲストのNPO法人Social Change Agency・横山北斗様よりコメントをいただきました。ぜひご覧ください。
報告を聞きながら、もともと医療機関のソーシャルワーカーだった身として、「まさにこの通りだ」と何度もうなずいていました。情報提供が、制度や仕組みではなく現場のワーカー一人ひとりの責任感と裁量で支えられているという現状は、自分自身の経験とも重なり、胸に迫るものがありました。コメントでは、次の四つについてお話ししました。
第一に、SHGがどんな場であり、どんな社会資源かということです。ピアサポート・ピアカウンセリング・ソーシャルアクションの機能を持ち、「わたしだけじゃなかった」と思え、経験的知識が交わされる場です。
以前、社会保障の利用についてある疾病の患者さんにヒアリングをした際、自立支援医療を使えるか疑心暗鬼だったけれど、すでに制度を利用している同病の方とSHGで出会い、その方の一言で申請に踏み出せた、という声を聞きました。専門職がいくら制度を説明しても埋まらなかった距離を、同じ経験をした人の一言が越えさせた。SHGで交わされる経験的知識が、制度を「自分のこととして使える」ものに変えた瞬間だったのだと思います。
そして、SHGは、ソーシャルワーカーにとってクライエントをサポートするための社会資源であると同時に、一緒に資源をつくる共同創造のパートナーでもあります。これは、ソーシャルワーカーがどんな立場で実践を変えようとするときにも、通底する論点だと考えています。私たちが現場を変えようとする回路は、被雇用者として(民間でも行政でも)、職能団体を通じて、あるいは経営者として、と複数あります。けれど、そのどの回路でも共通して問われるのは、「誰の知を、誰とともに使って変えるのか」ということです。
ここで当事者やコミュニティとの共働を欠いてしまうと、それぞれの変革は容易に変質してしまいます。被雇用者として変えようとすれば組織都合の「改善」に終わり、行政の立場では使いにくい制度をかえって再生産してしまう。職能団体での取り組みは専門職中心主義に陥り、経営者として事業化すれば、支援者側が設定した問題を事業の形にするだけになりかねません。いずれも、当事者の経験的知識という土台を欠いたために起きる「変質」です。だからこそ、SHGを単に紹介先としての社会資源と見るだけでなく、共同創造のパートナーとして位置づける視点が要ると考えています。
第二に、これほど大切な場なのに「探せない」という現実です。約1800という数と多様性に反して情報が構造化されておらず、探しにくい状況があります。ただ、多くが手弁当で活動するSHGに、広報や発信、その体制整備まで求めるのは負担が大きいと感じます。
第三に、医療機関・ソーシャルワーカーという入口の難しさです。ワーカーは出会いの入口をすでに担っていますが、情報の収集や提供に困難が伴い、無責任には紹介できず二の足を踏むこともあります。さらに踏み込めば、そもそも患者のニーズに対して「SHGという社会資源を紹介する」というプランニングが、現場でどれほど行われているのか、という問いも浮かびます。これは自組織のSHGへの理解の問題でもあり、その点で2026年3月の医療ソーシャルワーカー業務基準は、追い風であり、組織を動かす説得の武器にもなりうると感じています。
そして第四に、だからこそのwreathさんへの期待です。適切な情報の構造を持つ情報プラットフォームは、当事者にもSHGにもソーシャルワーカーにも必要な社会資源です。
そして何より、今回の調査そのものに大きな意義があったと感じています。これまで現場のソーシャルワーカーやSHGが、それぞれの場で個別に抱えてきた情報提供の難しさは、なかなか言葉にされ、共有される機会がありませんでした。今回、その実態がインタビューを通じて可視化され、報告書という形にまとまったことで、立場の異なる人たちが同じ事実を見ながら語り合える土台ができました。課題を前に進めるには、まず関係者がその課題を共通の認識として持てることが欠かせません。本調査は、医療機関・ソーシャルワーカー・SHG・当事者が、これからともに考えていくための共通の出発点をつくった——その点にこそ、大きな価値があると考えています。
最後に、SHGが「生き延びるための命綱」になっている人もいるという話がありました——ソーシャルワーカーが提供する情報が、対象となる方にとってどのような意味を持つ可能性があるのか。そのことへの想像力を、ソーシャルワーカーとして持ち続けたいと思わされた時間でもありました。
本調査を実施されたwreathの皆さん、調査に協力されたMSW、SHGの皆さん、報告会で貴重な経験や意見をシェアしてくださった皆さんに敬意を表します。
ご参加いただいた方々からのご感想
開催レポートなどに活用させていただく旨をお伝えしたうえで、ご参加いただいた方々にご感想をいただいております。全員分となるとかなりの量となるため、恐れ入りますが抜粋して紹介させていただきます。
お話しでもでていたように調査していただいたことで、医療機関と自助グループのなんとなくもやもやしていたことが、はっきりしました。また、自身が自助グループと聞いてイメージしていたものと異なり、自助グループと一言でいっても多種多様であることを改めに実感しました。
医療機関においてセルフヘルプグループについてきちんと情報提供ができない理由として、診療報酬や責任が持てないなど、医療機関側の問題をあらためて認識することができました。わたしたちソーシャルワーカーは、患者さん・ご家族に対するミクロレベル以外に、組織に働きかけるメゾレベルや政策などに働きかけるマクロレベルなどの活動があります。今後、セルフヘルプグループにとって医療機関が安心して協働できるパートナーとなることができるように、ソーシャルワーカーとして引き続き活動していきたいと思います。セルフヘルプグループの生の声を聴くことができたのも、wreathさんの活動があってのことです。本当にありがとうございました。
自助グループは当事者が運営するという性質上、歴史や知名度によって医療機関からの信頼度に差が生まれやすく、歴史の浅いグループには高いハードルがあります。運営のスキルや経験にも幅があるなかで、利用者が安心して選べるような指標があればとも思いますが、自助グループの本質とは相容れない難しさもあり、そのジレンマもまた今日感じたことのひとつでした。wreathさんとはじめてお会いした頃のことを懐かしく思い出しています。今回のような立派な報告会が開催されるまでに積み重ねてこられたご努力に敬意を感じるとともに、活動の広がりを嬉しく拝見しています。
MSW側からは、社協やボラセンなど、SHGとつながっている地域の機関は見えにくいんだな(つながっていることを知られていない)と感じて、もっと関係機関に発信していかねばと感じました。 また、グループでは、「相互理解のために、SHGの勉強会などに、MSWを講師に呼ぶといいのでは」との意見がありましたが、逆に、SHGの主催者や活動者を、MSWの勉強会などの講師に招いてくれるといいなと思いました。
自助グループを掲げている方々の体(人生)を張った試みをダイレクトに感じる機会となりました。社会情勢が裁量を貧しくする中、それを口実にしてはいけないと、しかと受け止め直すひと時となりました。wreathという団体名もまた、エンパワーを感じることができ、立場や物理的な距離を超えて、連帯できることがあると思うことができました。
開催後記
調査報告会にお越しいただいた皆様、誠にありがとうございました。タイミングがあわず参加がかなわなかった方も、こうしてnoteをご覧になっていただき本当にありがとうございます。とてもうれしく、励みになります。
このたび、こうして調査結果を皆様とご共有できる場をもてたことに感謝しております。 限られた時間ではありましたが、調査結果のご報告を通じて、医療機関におけるセルフヘルプグループの情報提供の実態や困難についての共通の認識をもてたということが、大きな意義であったと思います。当方だけでは、まだまだ力不足です。この共通の認識を足がかりとして、これからもさまざまなお立場の皆様とセルフヘルプグループの情報提供について、ともに考えていくことができましたら大変心強く思います。
ゲストでお越しいただいた横山さんには、貴重なコメントを頂戴し心より感謝申し上げます。当方だけでは、気づくことがむずかしかった調査の意義を再確認させていただく時間となり、大変励まされました。先の「共通認識」についても横山さんのコメントからいただいた大切な気づきです。次の取り組みに進む力をいただき、心よりお礼申し上げます。報告会にお越しいただき本当にありがとうございました。
ご参加された方からは「情報はメッセージ」というお言葉が印象的でした。その場につながったかどうかではなく、セルフヘルプグループの存在そのものが、セルフヘルプグループの広報物の一つひとつがどれほど尊いものであるかを教えていただいたように思います。ただある、ということ自体に、これまでどれほどの人が励まされてきたことでしょうか。とても大切なお話をいただきました。
調査報告会が終わってから、これもお伝えできるとよかったと思ったことがあります。それは、セルフヘルプグループへの期待です。調査では、ソーシャルワーカーの方々から、セルフヘルプグループへの期待の声を聞かせていただきました。
たまたま私も役割として支援者をやっているだけなんですけど。まあ、役割なんですよね。で、支援者っていう役割ではできないことがいっぱいあって。やっぱり、同じ体験をしている人じゃないとわからないこととか、つくれない雰囲気だとか。支援じゃなくて自助なので、セルフヘルプなので。それは支援者ではできない役割だと思っているので。やっぱりその同じ体験を分かち合える場所を求めている人たちの集まりが必要だなっていうふうに思っています。ごめんなさい、ちょっとうまく言葉にできないんですけど。
〇〇の会のサポートをしたり、□□を亡くした□□さんに、同じように□□を亡 くした□□たちをサポートする会をつくったらっていう支援をしたことがあっ て。そのときにやはり他では話せないこと、タブーかもしれないような、ここあんまり喋ると警察に捕まるかもしれないような話まで、そこの会は本当に安心して話せるっていう。で、そこから「じゃあ次を見よう」っていうのにちょっと切り替えるきっかけになれるのかなっていうのを見てたりすると、医療の力じゃないなっていうのをやっぱり(感じます)。病院に来れば患者さんなんですけど、 病院に来なければ生活者なので。患者さんっていう言い方もちょっと変ですけどね。生きていく中で、医療以外に本音でちゃんと話せる居場所みたいなのがあるだけで、一人じゃないというか。(中略)もう死んでもいいとか思ってたりする方も「一人じゃないんだな」って思ってくれて、「もうちょっとだけ頑張ってみ るか」じゃないんですけど、この生きづらい世の中でなんとかっていう声をちょっと聞くと、当事者の力なんだろうなっていうのを感じました。
調査報告会では「みなさんがいまも苦しんでる仲間について考えてくださってることが幸せだ」と伝えてくださった方がおられました。私も幸せでした。うれしかったです。
調査報告会では、時間の関係から主に情報提供における課題に焦点をあてた報告となりましたが、あの場に限らず、セルフヘルプグループへの期待をもっている方がおられることを、この場でご共有させていただきたく思います。
さいごに、調査報告会後にいただいたご感想に「調査報告の内容もさることながら、場のつくりかた、集っている方のご発言やメッセージがとても心に響きました」とお伝えくださった方がおられました。
wreathの活動がはじまってから、画面にあんなにもたくさんの人がいることはなく、実はブレークアウトルームで泣いてしまうくらいあたたかな言葉をかけていただきました。一人ひとりのお心遣いがかさなって、あのような場が成りたっているのだと思います。ご一緒いただいた皆様に感謝申し上げます。
そして、こうした調査報告の場がもてたのも、調査にご協力いただいたソーシャルワーカーの皆様、セルフヘルプグループの皆様がおられたからこそです。心からの感謝を申し上げます。
このたびの調査結果を手がかりに、引き続きセルフヘルプグループを必要としたときにつながれる仕組みづくりに取り組んでまいります。これからもwreathの活動にご関心をお寄せいただけますと幸いです。これからもどうぞよろしくお願いいたします。このたびは、誠にありがとうございました。(記・下村)
お問い合わせがございましたら、こちらよりどうぞよろしくお願いいたします。
梅雨らしい天気が続いております。どうかご無理なくお過ごしください。

