Apple時価総額5兆ドル突破、史上2社目に 半導体株は急落、熊本地震で日本株は軟調 FOMC結果待ちで神経質に|2026.7.29
AI関連株の物色は明暗が分かれる、地政学リスクと金融政策も交錯
米アップルの時価総額が28日、取引時間中に一時5兆ドルを突破し、米エヌビディアに続いて史上2社目の到達となった。人工知能(AI)関連の巨額投資に対する懸念から半導体株が急落する中、AI投資競争から一線を引いてきたアップルの株価が見直された形だ。一方、中国の半導体メモリー大手CXMTが上海市場の上場初日に466%急騰し、時価総額で中国株式市場の首位に躍り出るなど、AI関連の資金の流れには地域差も生じている。28日には熊本県で最大震度7の地震が発生し、ハイテク産業のサプライチェーンへの影響も懸念されている。29日には米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が発表される予定で、市場は金融政策の行方も注視しており、週内は複数の材料が交錯する神経質な展開が続きそうだ。
Appleが時価総額5兆ドル突破、史上2社目の快挙
28日の米国株式市場でアップル株は1%近く上昇し、340.08ドルを付けた。取引時間中には342.89ドルの高値を付け、時価総額が一時、初めて5兆ドルに達した。時価総額の5兆ドル超えは、米半導体大手エヌビディアに続き史上2社目となる。
ベアードの投資戦略アナリスト、ロス・メイフィールド氏は、ハイテク以外の銘柄への資金流入の背景についてバリュエーションが一因だと指摘し、「国内総生産(GDP)は堅調で、労働市場も着実に推移している。多くの地域で個人消費が再加速している証拠がある」と述べた。この日はコカ・コーラが通期の売上高・利益見通しを引き上げたことを受けて5%上昇したほか、ボーイングは経営再建計画の進展に伴いフリーキャッシュフローがプラスに転じたことを好感され4.8%上昇した。特殊ガラスメーカーのコーニングは第3四半期の売上高見通しが市場予想を下回り12%急落した一方、健康医療関連データ会社IQVIAホールディングスは通期利益見通しを引き上げ14%上昇するなど、個別銘柄の明暗も分かれた。
半導体株は急落、SOXは高値から25%安に
AI関連の巨額投資で恩恵を受けてきた半導体株には、直近の下落に上乗せする形でさらに売りが出た。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は28日に4.5%安となり、6月22日に付けた終値ベースの過去最高値からは約25%下落した。もっとも年初来では依然として56%の上昇を維持している。個別には、メモリー大手マイクロンが8.8%安、AMDが8%安、半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズも8%を超える下落となるなど、セクター全体で急速な調整が進んでいる。
こうした中、米国市場ではダウ工業株30種平均とS&P総合500種は続伸した一方、ナスダック総合指数は小幅続落するなど、指数間でも明暗が分かれた。S&P500の主要業種別では、ヘルスケアが2%超上昇、主要消費財も約2%上昇、素材は1.7%上昇したのに対し、半導体株の下落を受けて情報技術は1%超下落した。S&P500全体では値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を2.5対1の比率で上回っており、半導体を除く幅広い銘柄には資金が向かった格好だ。米取引所の合算出来高は172億株で、直近20営業日の平均である174億株とほぼ同水準だった。
NVIDIAの巨額融資保証にCDSも過去最大上昇
エヌビディアを巡っては、対話型AI企業オープンAIが主導する総事業費約5,000億ドル規模とされるデータセンター建設プロジェクトに対し、エヌビディアが最大2,500億ドル規模の融資保証を提供する交渉を進めていると伝わっている。これに先立ち、エヌビディアは韓国のSKハイニックスの親会社を含むSKグループとの間で5,000億ドルを超える規模の包括的な提携も発表している。売り手であるエヌビディアが取引先に資金や信用を供与して売上を創出する構造に対し、市場では収益の質を巡る懸念が強まっている。
こうした懸念を反映し、エヌビディアの信用リスクを保証するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のコストは、過去最大級の上昇を記録したと伝えられている。金利上昇は、債務による資金調達への依存を強めているAI関連企業に一段の圧力をかける可能性があるとの指摘も出ている。市場では、AI関連の巨額投資がいつ、どの程度の実質的な収益として結実するのか、投資回収の道筋を厳しく見極めようとする姿勢が広がっている。
中国CXMT上場で466%高、業界地図に変化
中国のメモリー半導体最大手CXMTは27日、上海証券取引所の科創板に株式を上場した。取引初日の株価は公開価格に対して466%急騰し、中国本土の上場企業として時価総額首位に躍り出た。世界的なAIインフラ需要の拡大を背景に、投資家の資金が集中した形だ。
この上場を巡っては、既存の半導体メモリーメーカーへの資金シフトや供給過多への懸念も指摘されている。また、中国が国内で開発した液浸型深紫外線(DUV)露光装置の量産を開始したとの報道も市場の重しとなっており、この分野で長年高いシェアを持つオランダの半導体製造装置大手ASMLの株式にも売りが出ている。国内の半導体メモリー大手キオクシアホールディングスをはじめ、東京市場の半導体関連銘柄にも警戒感が波及しており、東洋証券のストラテジストは、CXMTの上場や中国製DUV露光装置の量産開始を巡る報道を受け、半導体セクターを中心に先行きへの警戒感が広がっていると指摘した。
熊本で震度7の地震、供給網リスクを再認識
28日には熊本県で最大震度7の地震が発生した。半導体や自動車の工場が集積する九州地方で発生した今回の地震を受け、ハイテク産業のサプライチェーンへの影響が懸念されている。被害の全容はなお不透明で、関連企業の工場稼働状況について情報収集が続いている。震源地周辺には半導体や電子部品、輸送機器の関連工場が集積しており、市場では被害状況が判明するまで、関連銘柄への投資判断を見合わせる動きも出ている。津波注意報も一時発表されるなど、地域一帯への影響が広範囲に及んだ。
東京市場はきょう軟調、日経平均は6万円台前半へ
29日の東京株式市場で日経平均株価は、上値の重い展開が見込まれている。AI需要を巡る先行き懸念に加え、熊本地震を受けて製造業の工場稼働状況が不透明であることから、関連銘柄には買いが入りにくいとの指摘がある。日経平均の予想レンジは6万1,500円〜6万3,000円とされている。この日は米国でメタ・プラットフォームズやマイクロソフトの決算発表を控えており、内容を見極めたいとする動きも広がりそうだ。国内では日立製作所やコマツ、ANAホールディングスなどが決算を発表するほか、新規上場も予定されている。岡地証券の投資情報室長は、韓国株の動向を見なければ日本株の先行きは見通しづらいとした上で、熊本地震の影響について、自動車や半導体企業の工場があるため被害の全容が分かるまでは関連銘柄に買いを入れにくいとの見方を示した。
中東情勢は緩和方向、原油安が相場を下支え
株式市場を取り巻く地政学リスクには、和らぎの兆しもみられる。ホワイトハウスがイスラエルのネタニヤフ首相とウクライナのゼレンスキー大統領を迎える中、中東とウクライナの緊張が緩和するとの観測から、28日の米国市場では原油価格の下落が相場全体を下支えした。もっとも、イランによる米軍基地への攻撃も伝えられており、原油価格は不安定な値動きが続いている。29日時点で米WTI原油先物は1バレル=82ドル台で推移している。中東情勢は依然として流動的であり、和平協議の進展と軍事的緊張の再燃が交互に相場材料となる展開が続いている。
為替はドル底堅く推移、日米中銀の決定を注視
外国為替市場では、ドルが下落したものの1カ月ぶりの高値付近で推移している。主要通貨に対するドル指数は0.2%安の101.35となったが、6月下旬に付けた高値の101.80に近い水準を維持した。中東での緊張を受けたインフレ懸念の高まりや、ウォーシュFRB議長のタカ派的な姿勢を背景にした利上げ観測から、米国債利回りは4月以降着実に上昇しているという。
FOMCの結果は29日に発表される。CMEのフェドウオッチによると、市場が織り込む政策金利据え置きの確率は71%、0.25%ポイントの利上げ確率は29%となっている。一方、LSEGのデータでは、25ベーシスポイントの利上げが実施される確率を約40%と織り込んでおり、1週間前の約20%から上昇、9月までの利上げ確率は約95%とみられている。コーペイのチーフ市場ストラテジストは、利上げならドルの押し上げ要因となる一方、タカ派的な据え置きであっても利上げ観測が9月に持ち越されるだけであり、いずれにせよドルには強気の地合いに見えると指摘した。
週内にはイングランド銀行(英中銀)と日銀もそれぞれ30日、31日に金融政策決定会合を開く。日銀は政策金利を据え置きつつ、円相場を支えるため追加利上げの可能性を残すとみられているが、当局者は利上げの時期やペースについて曖昧な姿勢を維持する可能性が高いとの見方が出ている。コーペイのカール・シャモッタ氏は、投機筋のドル買い持ち高が積み上がっている点を指摘し、政策当局者からハト派寄りの姿勢がわずかでも示唆されれば急激な巻き戻しが起こる恐れがあると警告した。28日終盤の取引でドルは対円でほぼ横ばいの163.77円、ユーロは0.2%高の1.1393ドルとなった。市場では今週、FOMCに加えて日米欧の主要中銀の決定が相次ぐことから、為替・金利の変動幅が拡大しやすい局面が続くとみられている。

