見出し画像

緑色が少し苦手になった話 1

「それって、搾取だよね」

普段、あまり人に話すことがないような内容の話を流れで話したら、相手に言われた言葉でハッとした。
そうか、自分がされていたのは「搾取」だったのか。


わかばさんと知り合ったのは約七年前。
当時オープンして数ヶ月のカフェで同じタイミングでカウンター席に座っていたことがきっかけだった。
今ではお昼時や土日祝日は混雑するお店になったけれど、当時は出来たばかりだったからかそんなに来客数も多くなくて、カウンター席で一人で本を読んだり編み物をしたりして長居させてもらっていた。
いや、今も混雑する時間帯を避けてお店に行き、ゆっくり時間を過ごさせてもらっている。
最寄り駅から少し歩いた場所にあるお店は、私の家から駅に出るよりも近く、メニューのすべてを店内で手作りしていることも気に入って、ちょくちょく行くようになった。

時期はあまり覚えていないけど、いつものようにカウンターの一番左の席で編み物をしていたら、話しかけてきたのがわかばさんだった。
鮮やかな緑色のヘアターバンをしている、少し肌の色が濃いふくよかな女性。
彼女は右端の約三席を使っていた。
自分が座る席と荷物を置く席、そしてカウンター上に広げた荷物がもう一席分を占めていて、それが少し気になった。
「何を作ってるの?」
話しかけられたときに何を作っていたのか、今はあまり覚えていない。

編み物をしていることが多かったので、その後もそれがきっかけでカウンターに来ている人に話しかけられることはあったけど、第一号はわかばさんだった。
彼女は私の編んでいるものを見て「ワーオ!」と言った。何度も。
その後は矢継ぎ早に色々と聞かれ、突然名前を名乗られて名前を聞かれた。
「ワーオ!」に加えて距離が近いなと思ったので、偏見かもしれないけど海外暮らしが長い人なのかなと思った。
でも、それから約七年の間に「ワーオ!」を聞くことはほとんどなかったから、そのときはテンションが高かったのかもしれない。
実際に海外留学していたことがあったというのは大きいと思うけど。

わかばさんもよくお店に来ていて、その後もカウンター席で会うことが増えた。
彼女の身につけるものや持ち物には必ず何か緑色のものがあった。
自分の名前からも好きな色のようだった。
私の姿を見ると隣に座ってきて、たくさん喋った。
カフェには一人で時間を過ごしたくて行っている部分もあったので、特に本を読んでいるときに隣に来て話し続けられるのは、本当は少し困っていた。
初対面から距離が近いなと思ったけれど、顔を合わせる回数が増えるとすぐ、彼女の話は自分の病気の話やツラいこと、不幸自慢のような話題になった。

「私、鬱なの」
まだ初めて会って数回で言われたとき、突然だなと思った。
うつ病は自分も経験したことがあって、そのときはかなり苦しかった。
学生の頃は不眠と拒食に過呼吸。
就職後は仕事を休職したりもした。
病院では薬が出るだけで、薬を飲むことで余計に脳が働かなくなっている気がしてすごく不安になった。
紆余曲折あった末、病院に行くのをやめてカウンセラーにカウンセリングを受けることにして、結果的にそれが自分には良かったと思う。
もちろん病院に行くのをやめることを推奨しているわけではない。
ちょうど縁あって良いカウンセラーさんを紹介していただき、半年くらい通って「もう大丈夫」と言われた。
自分でも楽になったと思うし、囚われていた考え方とか親に対する見方とか、色々なことが変わった。

わかばさんに「私、鬱なの」と言われたとき、そんなに親しいわけでもないのに唐突だなと思った。
でも、誰に話すかは人それぞれだし、うつ病ならつらいだろうなとも思った。
初対面のとき、カウンター席三席分を一人で使っていたり距離の詰め方が急だったことから、ちょっと自分とは合わない気がして気をつけた方が良いかなと思っていたけれど。
「父親が厳しくていつも怒鳴られたり、ダメ出しされてばかりだった」とか「人混みで体調が悪くなる」とか「人が多くて電車に乗れない」とか、彼女の言うことに自分も同じだったなと思うこともあり、距離を置いた方が良いと思う自分と親近感を抱く自分が存在していた。

今なら、当時の自分が抱いた「違和感」をもっと大事にすれば良かったと言える。
モヤモヤする感じ、違和感、直感は結構な確率で当たる。
それらを否定したり打ち消すことを頭で考えて、理由をつけて自分を納得させようとすると、後になって苦しくなったりすることが多い。
無意識に行っていて、後から気がつくことが多いのが困りものなのだけど。

これは何故か人から相談(?)をされたり愚痴を言い続けられて気持が持って行かれがちな私の、緑色が少し苦手になった話。

(つづく)



こんにちは。読んで下さってありがとうございます。
見切り発車の羽根宮です。
今まで一つの記事で終わらない話を書いたことがありませんでした。
ドキドキ。
小説を書く時はプロットとかを書いたりするのでしょうが、これは本当に見切り発車なのです。
でもまあ、やってみます。

緑色は目に優しくて、自然の色できれいな色です。
緑色に罪はありません。


マガジンも作りました。


いいなと思ったら応援しよう!

羽根宮糸夜 ご覧下さいましてありがとうございます。もしサポートいただけましたら、感謝して活動費に充てたいと思います🐱