「多様な声」が聴ける職場は、なぜ安全なのか? 〜全国安全週間に寄せて〜【#013】(産業保健-01)
産業保健は、働く人々の健康を支える重要な活動です。
そして、その活動は決して一人では成り立たず、様々な専門性を持つ人々が協力し合うチームによって行われます。
組織運営において多様性が不可欠であるように、産業保健の現場においても、多角的な視点と知識が求められます。今回は、産業保健における多様性の重要性に焦点を当てた内容をお届けします。
7月1日から始まった「全国安全週間」。
今年のスローガンです。
多様な仲間と 築く安全 未来の職場
この言葉を見て、「きれいごとでは?」「自分にあまり関係はない」と感じた方もいるかもしれません。でも実際には、「多様な仲間の存在と、多様な声をよく聴くこと」は、安全を守るうえで、非常に大切な考え方でかつ科学的なアプローチです。
同質性の高い組織のリスク
組織内のメンバーが似たような考え方ばかりだと、新しい視点や意見が生まれにくく、重大なリスクにつながることがあります。9.11テロはその教訓であり、CIAがテロの兆候を把握していたにも関わらず、組織文化が情報の共有を阻害し、結果的にテロを防げませんでした。
『多様性の科学』で述べられているように、多様な視点を持つメンバーが集まることで、問題解決能力が向上し、創造性や革新性が生まれます。また、多様性は組織全体のリスクを軽減する上でも重要な役割を果たします。
ちょっと事例が大きすぎたでしょうか。以下に現場で活用しやすい3つの視点でポイントをお伝えします。
【1】違和感はリスクの発見につながる
組織の「当たり前」は本当に正しいのでしょうか?
新人や異文化を持つ人は、その「常識」に疑問を抱くかもしれません。
例えば、「この部品は似ているから間違えやすい」という指摘をベテランが無視したり、
「手順書がわかりにくい」という新人の意見を聞き入れないことは、事故やヒヤリ・ハットを招く可能性があります。
経験不足は、環境への鈍感を意味するのではなく、むしろ潜在的なリスクを敏感に察知する能力を秘めているのです。組織は、この貴重な「違和感」を積極的に拾い上げ、改善につなげるべきではないでしょうか。
違和感は、職場の異常をいち早く察知する感度の高いセンサーになり得ます。
【2】イライラした瞬間が、改善のチャンスになる
「何でそんなこと考える?」「普通そうじゃないでしょ」と、誰かの発言にイラッとしたときは、自分にない新たな視点に触れた瞬間です。つい否定したくなりますが、そこで一呼吸おいて「なぜそう感じたのか?」「なぜそう考えるのか?」と相手目線で考え直すことです。この一手間をかけることが、安全や改善への第一歩になります。
「多様な視点」、自分と違う価値観に出会ったときの「怒りや違和感」こそ、内省と対話の入り口
【3】「聴く力」が、心理的安全性につながる
「心理的安全性」とは、組織の中で自分の考えや意見を率直に発言しても、拒絶されたり、罰せられたりする心配がない状態のことです。
「今は忙しい」「そんなの知らない」「前も言ったでしょ」
——こうした対応は、現場の声をつぶし、「心理的安全性」を損ねます。やがて誰も指摘や相談をしなくなり、不調やトラブルが深刻化していきます。
逆に、「それ、ちょっと詳しく教えてください」「どうしてそう思ったのでしょうか?」と返すだけで、
早期に不調を発見し、対応できる
現場からの改善提案が定着しやすくなる
パワーハラスメントが発生しにくい組織文化を醸成できる
といった好循環が生まれます。
「聴く姿勢」は、個人のスキルというより、“文化”です。その文化がある職場には、人が安心して声を出せる土壌が育ちます。
「多様な仲間と 築く安全 未来の職場」
このスローガンは、決して理想論ではありません。多様な声が届く職場こそ、安全で、変化に強く、成長できる現場です。全国安全週間をきっかけに、“聴く姿勢”を見直してみませんか。
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