電車でパーティ
都市を動物に例えるならば、電車の路線は熱い血潮の流れる大動脈と言えるだろう。
ある早朝、僕は普段と違う電車に乗って出張先に向かっていた。
首都圏へ向かう電車はギュウギュウ。
吊革にぶら下がった人垣を通過して差し込む角度の浅い光。
幸運なことに座席に座れた僕は、早起きでうつらうつら、混雑による人々の熱気と電車のエアコンから吹き出す冷気との平衡状態を堪能していた。
しばらくの後、東京駅に到着する。
通勤客たちは一斉に降りていく。
ホッとしたように車両全体が少しだけ緩む。
降りる駅はもう少し先だから、僕も背筋を伸ばして座りなおす。
こんなにたくさんの人が丸の内で働いているんだなぁ、なんて思う。
ついさっきまでの混雑が嘘のように、いくつか空いてる席もある。
「これが都会のエアポケットか…」などと取り止めのないことも思う。
ドアが閉まって電車が動き出す。
ずいぶん軽くなった電車は軽快に走り出す。
しばらしくて、車両と車両の連結部分のドアが開く。
通勤電車で車両間を移動することは滅多にない。なぜなら、どの車両も混んでいるから、隣の車両に行く意味が無いからだ。
だが今の車両にはスペースがたくさんある。
確かにドアが開いても不思議ではない。
物珍しさも手伝ってか、ガラガラというドアが開く音は、際立って大きく聞こえた。僕は思わずその方向に目線を向ける。
ドアから出てきたのは、毛髪の薄い中年サラリーマン。胸を張って、堂々と歩いてくる。
すぐあとに続いて、制服を着た女子高生。
さらにオフィスカジュアルの若い女性。
そしてメガネをかけた男子高校生。
彼ら彼女ら4人は縦一列に並び、隊列を組んで進んできた。
ドラクエじゃん。
これはドラクエ3じゃん。と僕は思った。
隊列がちょうど車両の中程に差し掛かると、各員がごく自然にそれぞれ空いている座席を見つけ、何事もなかったように別々に腰掛けた。
さっきまでの隊列が幻だったかのように。
パーティが解散した。
