彼が言えなかったこと
彼は何を言いたかったのだろうか。
その疑問は、粉薬の苦い味がいつまでも舌に残るように、僕のなかでいつまでも消えることがない。あるいは遅効性の毒のように僕を少しずつ蝕んでいく。
彼がそこまでして伝えたかったこと、そんなことをしてまで伝えたかったこと、世の中に問いたかったのは、一体どういう言葉だったのだろうか。
僕の理解が足りなかったのかも知れない。
当時の僕は今以上に傲慢で、他人の考えについて残酷なまでに無関心だった。
ひとの気持ちを分かろうとする姿勢が足りなかった。今振り返れば、そんなふうに反省することもできる。
もっと分かってあげられたら、今とは何かが変わっていたかもな。そんなことを思うのは、また別のカタチをした傲慢さなのかも知れない。
彼は何かを伝えようとしていた。
情熱的に。一生懸命に。
伝えたいという気持ちだけは理解できた。
伝えられない、そんなもどかしさ、苦悩だけはビンビンに伝わってくる。
君の苦しさは分かるよ。
僕もそんな気持ちになることもある。
それでもやはり、何を言いたいのか、それを理解できなかった事実だけは変わらない。
もちろん彼にも原因がある。
圧倒的に説明が足りなかった。
伝える努力をしていなかった、というのはそれほど厳しい見方ではない。
周りからは独りよがりだったように見られていたかもしれない。
言ってはいけないことなのかもしれない。
口止めされているのかもしれない。
それでも何かヒントくらいは出してくれてもいいのに。
そう思った。
今となってはどうしようもないことを長々と書いてきた。
そしてなんのことか説明するのを忘れていた。
この歌のことだ。
言いたい事も言えないこんな世の中じゃ POISON
俺は俺をだますことなく生きてゆく OH OH
まっすぐ向きあう現実に
誇りを持つために
戦う事も必要なのさ
何度この曲を聞いても、「言いたい事」が何なのか分からない。
最初から最後まで聞いても、言いたいことを言えない世の中に対する非難はあっても、「言いたい事」が何なのかは分からないのだ。
言いたいことも言えないこと、その状況を訴えたいというのは分かる。OH OH。
だからと言って、少しは何かその主張を伝えてくれてもいいのでは無いか。
【おまけコーナー】
フランスの反町隆史
「言いたいこともいえないこんな世の中じゃ ポワゾン」
Dans un monde comme celui-ci où tu ne peux même pas dire ce que tu veux dire, c'est du poison
