番外編#3 あしなが育英会への寄付について(小学校受験)
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■平均135.7万円
これは、私立小学校の学費ではありません。
あしなが育英会さん(以下:敬称略)が実施する、高校生向けの月額3万円の給付型奨学金制度。そちらに申請した家庭の平均世帯年収です(2023年度)。
しかも、給付される3万円は、学費としてではなく、日々の生活費に回されるケースが多いそうです。子どもがいる現役世帯(18歳以上65歳未満)における相対的貧困率は12.6%。これは、世帯年収が127万円以下の割合です。
一方で、ご存知の通り、私立小学校に通う生徒は全国で1.4%。これだけ話題の私立中学校に通う生徒でも7.6%(東京都内では25%)です。
つまり、我々に馴染みのある層よりもはるかに多い比率の家庭が貧困世帯なのです。
・遺児の実態
2025年3月11日で、東日本大震災から14年が経ちました。当時幼児だった子どもたちが、今ちょうど高校生くらいになっている年月です。
東日本大震災では、震災遺児・孤児の数が約2,082人(2025年4月1日時点、あしなが育英会集計)。両親、あるいは家計の担い手である親を亡くしたことで、精神的にも経済的にも困難を抱える子どもたちが現実に存在します。
また、震災に限らず、父親の自死によって突然家計が逼迫する家庭も少なくないようです。特に30代〜50代の男性の自死は年間約4,000人というデータもあります。当然その裏には、残された子どもが数多くいるでしょう。
■あしなが育英会という選択肢
情報感度とは不思議なもので、子を持つ親となると、子どもに関する様々なニュースが突然目に入るようになります。虐待、貧困、いじめ、事件や事故など、とても最後まで記事を読めないものも多いです。
海外に比べたらという視点もあるでしょうが、ただえさえこの少子化です。個人的には、まず日本の子どもを救えずして海外も何もないだろう、という気持ちが強くもあります。
・なぜあしなが育英会か
そんな社会状況の中で、多くのNPO法人や団体がそれぞれの問題に対して取り組んでいます。
noteの有料化当初から、狼侍は5つの団体に継続して寄付をしてきました。ただ、団体によってはSNSでの発言が炎上したり、資金の使途が不透明だったりすることもあります。
特に、寄付を募るためとはいえ、団体の代表者がタレントのようにメディアに登場するのは、個人的にはあまり良い印象を持ちません。
そうした中で、今回改めて選んだのがあしなが育英会です。代表者が前面に出ることがなくても、活動内容と知名度がしっかりしている。静かに誠実に、子どもたちの教育を支えている印象を持っていました。
一方で、活動の範囲や実態については、情報が発信されていながらも、これまで積極的にアクセスしてこなかったという反省もありました。
また、こうした支援活動に取り組む団体の方から直接お話を伺ったことも、これまでありませんでした。
そうした背景もあり、新潮社の担当さんのご協力のもと、今回あしなが育英会に取材をさせていただくことになりました。
■あしなが育英会について
あしなが育英会は、交通遺児を支援するための「交通遺児育英会」が設立されたのち、交通事故以外(病気・災害・自死など)の遺児を支援するために設立されました。
今回の書籍出版にあたり、著者印税のすべてをあしなが育英会に寄付させていただくことは、書籍の巻末にも記載させていただきました。

ここでは、今回の取材で伺ったあしなが育英会の特徴を、いくつかご紹介します。
・遺児探し
最初に驚かされたのは、阪神・淡路大震災、東日本大震災、そして昨年の能登半島地震など、大規模災害が発生した際の「遺児探し」の取り組みです。
あしなが育英会では、阪神淡路大震災の際に、新聞記事や貼り紙はもちろん、避難所を一つひとつローラー作戦で回って、遺児に該当する子どもを探し出したそうです。また、東日本大震災では、800ヶ所以上の避難所を訪問し、結果として2,000名強の震災遺児が特別一時金を申請することができたといいます。
・「給付」の難しさ
冒頭でも触れた奨学金制度について、2023年より貸与型から給付型へと切り替えが行われました(高校奨学金のみ)。しかし、これも実は非常にハードルが高い取り組みだと伺いました。
貸与型であれば、たとえ利子がなくても返済義務があります。一方、給付型は支出のみ。つまり、財源が限られるという大きな問題があります。当然ながら、すべての申請に応えることはできず、公平な審査が行われているものの、選考にあたる側としても非常に苦しい決断が続くといいます。

2023年度からあしなが高校奨学金制度を全額給付型に刷新しました。しかし、2023年度、2024年度と、2年連続で申請者数が定員を大幅に超えました。制度変更により、今まで以上に経済的に厳しい家庭からの申請数が増加。返済不安から申込みを控えていた層とみられています。
かといって、貸与型のままでは、実質的に生活費として使われているような少額の奨学金の返済を、将来その子に背負わせることになる。多くの支援団体が「現物支給」にとどまっている理由も、こうした構造の難しさによるものだと理解できました。
・街頭募金
あしなが育英会の街頭募金を、駅前などで目にしたことがある方も多いと思います。その募金活動に立っている人の多くが、実際にあしなが育英会の奨学金で支援を受けた卒業生だそうです。
「今度は自分が支える番だ」と、かつての遺児たちが街頭に立つ姿。自らが受けた恩を、次の誰かに繋げようとするその思い。まさに恩送りの心に、深く胸を打たれました。
■狼侍が寄付をする理由
私立小学校界隈という、教育界のマイノリティに身を置いていると、経済的に恵まれた家庭が多いという現実を日々感じます。
もちろん、その中にも教育費を捻出するために努力を重ねているご家庭は多くあるでしょう。
しかし、年間100万円前後の学費を支払えること自体、すでに大きなハードルを越えているとは思います。
会社経営の傍ら、情報発信を続け、ありがたいことに収益まで得られるようになった今、その恵まれた場所から生まれた利益を、厳しい環境の子どもたちに届けたいという気持ちが強まりました。
noteの収益は、さくらカレンダーの運営費(月額30万円ほど)、取材や発信活動に使わせていただきつつ、残りの部分は、対局にある環境の中に生きる子どもたちへと還元したいとの思いが、寄付の背景にあります。
・マイノリティに望むこと
とはいえ、その恵まれた層への情報提供という教育的支援は、鬼に金棒を与えるような矛盾もあります。最初から恵まれない層のために動けば良いのではと。
それでも狼侍としての発信を続けてきた理由は、二つあります。
一つは、私自身が提供できる価値ある情報がお受験にあったこと。本業の傍らで継続できる活動の範囲であったことです。
望外のご支持をいただき、noteの収益や書籍の販売にまでつながるとは、正直、夢にも思っていませんでしたが。
もう一つは、この圧倒的マイノリティな層に価値ある情報を届けることで、その子どもたちがより良い環境で成長し、やがて日本や世界を変えるような、厳しい環境の方々を救える人間に誰か一人でもなってくれたら、という願いがあるからです。
あくまで個人的な価値観ですが、恵まれた環境で育った人間は、最低限の生活への不安が少なく、大多数の人が生活や将来設計のために費やす時間を、ある程度ショートカットできるのではないかと思っています。
そこで得た時間を、社会に対して新たな価値を提供する時間に使ってほしいと願っています。
■おわりに
あしなが育英会は、派手な広報こそありませんが、遺児に寄り添い、静かに実直に支援を続けてきた団体です。奨学金の給付化の裏にある難しさや、避難所を一つひとつ訪ねて子どもを探すような地道な活動。取材を通じて、その支援がどれだけ現場に根ざしたものであるかを実感しました。
狼侍自身、恵まれた教育環境に関する発信を続ける一方で、その対極にある現実にも目を向け、得たものを少しでも発信できればと思います。
もし、関心を持っていただけましたら、あしなが育英会の活動と寄付の仕組みについて、ぜひ一度ご覧いただけたら幸いです。
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