雨乞い難民【ショートショート|毎週ショートショートnote企画】
今日、私たちは雨乞い難民になった。
雲が全て消滅し、空が晴れ渡っている。
対策のために役所が配ったのは大きめの透明な瓶だった。
「この中で雲を育ててください。」と事務員からの指示。
私の息子は、必死に瓶の口に息を吹きかけていた
一瞬瓶が白く曇ったが、すぐに元に戻って透明になってしまう。
「できた雲がお空に飛んでいって、瓶が透明になるんだよ。」と息子は言う。
少し馬鹿馬鹿しいと感じながらも、私も手伝うことにした。
一晩中、私は瓶の口に息を吹きかけていた。ああ、苦しい。
夜明けに、窓の外を見てみると、なんと空が雲で覆われていた。
その日の夜、雨が降ったとのニュースが流れてきた。
ただ、その雨は地面まで届かないという。
役所のアナウンスが響く。「雲はちゃんと育ててから空に放ってください。未熟な雲は雨になりません。」
私たちのささやかな雨乞いは無駄になった。
瓶の蓋もどこかへ行ってしまった。
私たちは相変わらず雨乞い難民のままだ。
