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【向日葵は枯れていない!第2章】75.ギラヴァンツ北九州 マッチレビュー ~ 第28節 vs FC大阪 〜

「今シーズンベストゲーム」
多くのサポーターがそう思ったとおり、筆者もそのように感じている。
とにかく勝ったことが収穫であった群馬戦から攻守共にバランスの改善と精度の上昇が図られていたように見えた。
相手は中3日ではあったが、上位FC大阪であったことを踏まえても、素直にチームの成長を讃えるゲームである。

試合終了後の髙橋大悟のコメントは「勝ち続けるしかない」であった。
そのとおりであるし、今日の試合より次はもっといい試合をして勝つ。
上位との勝点計算も再び気になってくるところでもあるが、今はまだそのシンプルな気持ちで戦い続けていければ良いと思う。

チームの成長の要素について少しばかり振り返っていきたい。

1.試合結果&メンバー

金曜ナイター、いわゆる「金J」として開催された一戦でしたが、スタンドには北九州サポの黄色と赤色が目立ちました。放送中もチャントの声圧がしっかり伝わってきました。

北九州の連勝は実は今シーズン4度目となります。
乗れそうで乗り切れず、乗り切れないどころか不振に陥る。
開幕直後以外はそんな不安定なサイクルの繰り返しのような今シーズンですが、そろそろ今シーズン初の3連勝をマークし、シーズン終盤の「猛追」に繋ぎたいところです。そんな次戦はホーム戦、対戦相手は夏以降の苦戦のきっかけともなった高知です。言うまでもなく重要な一戦になります。

もう少しデータ面を振り返りますと、前半のみで2得点をマークしたのは第3節ホーム讃岐戦以来の今シーズン2度目となります。前半のうちに2点目を獲れそうな試合自体はこれまでもありましたが、そこで獲り切れず同点に追いつかれるという展開も味わってきただけに、この点もチームの成長として捉えたいところです。

メンバーです。

J3第28節 FC大阪-北九州 メンバー

北九州は前節で負傷交代した(10)永井龍に代わって入ったCF(29)高昇辰がそのままワントップに入ります。プレス、ポストプレー、周囲とのコンビネーションをの質を踏まえても妥当な選出であったと思います。
そして出場停止の(14)井澤春輝に代わりCH(32)高柳郁弥がボランチの一角に入ります。攻撃の組み立て役を担えるという点ではこれも妥当な起用といえます。

FC大阪は大嶽直人監督の退任、藪田光教監督の就任により4-4-2から初期配置4-1-4-1のシステムに変更していますが、実際には状況によって細かく可変していました。
ロングボールから前線に起点をつくるというスタンスは変わりませんが、いわゆる夏場の失速を、攻撃にリソースを割くことで打開しようとする意図がみえます。
そうしたシステム面よりも、非常に好内容に見えました前節栃木シティ戦(○1-0)から攻撃の主力3人を入れ替えてきた点が目立ちました。
これは中3日でこの試合に臨んだ影響と考えられます。
ホーム連戦とはいえ、花園の使用には何かと制約がかかるのでしょう。

FC大阪にはCB(3)川上竜やMF(41)野瀬龍世といった元北九州の選手がいますが、残念ながら今夏移籍したばかりのDF(34)坂本翔はメンバー外となりました。試合後には北九州サポーターに挨拶しに来てくれたようです。

2.レビュー

(1)鋭いトランジション~前半~

風向きの影響があったのかピッチを交換して始まりました。
両チームとも先制点の重要性を強く感じていたといえます。

大方の予想どおり、序盤はロングボールを使った探り合いからスタートしたました。
注目していましたFC大阪の実際の配置は、攻撃時にRSB(37)堤奏一郎が一列前に上がる3-4-3のような形や、最終ラインから一気にロングボールを送る際には二列目4人のうち3人が最前線に飛び出し、CMFのうち1人がボランチの位置に下がる4-2-4のような形をとっていたように見えました。
守備時には4-4-2のブロックを敷きますが、北九州のゴールキックに対してはCBの一枚が積極的に中盤付近まで飛び出して、少しでも前に跳ね返そうとしていた点も特長的でした。

春の前回対戦時と比べましても、FC大阪からは前への意識がより強く打ち出されていたといえます。

前線に人数を掛けて押し込もうとするFC大阪に対して北九州は、ボールサイドに陣形を圧縮気味にし、選手間の距離をコンパクトにすることでセカンドボールの回収を図ります。また、CH(34)高吉正真と(32)高柳が最終ラインの前で積極的にフィルターになっていました。

それでも若干、FC大阪が北九州陣内でプレーする時間が続きましたが、5分のFC大阪のセットプレーを凌いだところから北九州の攻撃局面へと移ります。この際に明らかに目立っていたのが北九州の選手たちのトランジションの鋭さ、素早さです。自陣から全選手がまるで蜘蛛の子を散らすように一気に陣形を拡げます。

ハーフウェイ付近に前進した6分、LSB(6)星広大からのスローインに対してもオフザボールで各選手が動き直しを盛んに繰り返していました。
このスローインは繋がりませんでしたが、北九州はFC大阪の前方へのキックコースに素早く体を寄せ、再回収。ここで(32)高柳が左サイドタッチライン際で絡んでいますが、間髪入れない2タッチで強いパスを出したことにより、FC大阪に前方へのキックを許しません。

こうして左サイドの狭い局面でスローインを得ながらFC大阪陣内に進入した北九州は、再び(6)星のスローインからハーフレーンで受けたCF(29)高昇辰がファールを獲得、素早いリスタートから電光石火の先制点が生まれます。

注目していただきたいのが、LSH(25)坪郷来紀の位置です。元々この前のシーンで左サイドに張っていたこともあるのですが、左サイド奥のスペースでFC大阪の選手たちの死角に位置しています。
そして(29)高がすぐにリスタートするにしても、その(25)坪郷に素直に出すのではなく、FC大阪のRSBとCBの間のスペースへと上手く出します。これは(25)坪郷のサイドからペナ角付近の中へ入ってくる動きを想定していたものといえます。
前節のレビューやXでの投稿でも書いているのですが、(25)坪郷とその周囲のコミュニケーションが最近数戦、急激に向上しています。

これもこれまで書いてきたことですが、その(25)坪郷の課題はシュートのタイミングです。ボックス内進入後に切り返してシュートを狙いますが、この切り返しを警戒していたDFにブロックされます。
しかし、このこぼれ球がころころと緩く転がったことでFC大阪守備陣のタイミングが合わず、詰めてきたRSB(22)山脇樺織が決めるというものでした。
DFの視野に中央にいたRSH(66)髙橋大悟が目に入った影響もあったと思います。

(※見事なスタッツ、後はゴールを獲れるようになれば彼はブレイクしますね。北九州市出身、生え抜きアタッカーのブレイク前夜です。)

一言で述べれば北九州のトランジションの鋭さがもたらした先制ゴールであったといえます。チーム全体もですが、増本監督がとにかく嬉しそうでしたね。

FC大阪としては明らかに先制点にこだわっていた様子が伝わってきていただけに出鼻を挫かれたショックは大きかったと思います。その後も北九州のチャンスが続きます。

前半から、僕自身点を取って優位に進められたらなと思っていましたし、チームとしても先制点は意識していたのと、前半(失点)ゼロで抑えられたらなというのがありました。けれど失点してしまって、相手にちょっと余裕が生まれたというのもありますし、自分たちでもう1個ギアを上げて点を取ることができなかったのが、今回の敗因かなと思います。

FC大阪(7)木匠の試合後コメント ~Jリーグ公式HPより~

FC大阪は、全体的に北九州陣内右側にポイントをつくろうとしていましたが、北九州はCB(44)辻岡佑真を中心に明確に前線にクリア、このボールを(29)高が正確に収め、再び北九州の攻勢へと局面は変わります。

9分、(66)髙橋からのCKに走り込んだCB(50)杉山耕二が合わせますがクロスバーの上に外れます。少しFC大阪守備陣のウォッチャーぶりも目立ちました。

11分にはハーフレーンをとった(6)星から縦に抜けた(29)高がクロス、OMF(20)矢田旭がシュート、更にそのこぼれ球を(22)山脇がシュートもFC大阪守備陣に跳ね返されます。
相手陣内で人数を掛けられている場面では、クロスに対して複数人がボックス内に入り、ゴールが見えたらとにかくシュートで終える。どちらかと言えばこれまでFC大阪が徹底してきたようなコンセプトを北九州が表現しているようでした。

ここで北九州のハイプレスについて触れると、FC大阪のロングボールの出元に強く規制をかけることを最優先にしており、アンカー(8)芳賀日陽へのパスコースは最初からそこまで気にしていないように見えました。
とにかく目の前の相手にプレスを掛け、正確に前方に蹴らせないというシンプルな方針が(29)高や(25)坪郷のピッチを横断しながらの2度追い、3度追いに繋がっていたと思います。この積極的なプレスが効果的であったと思います。

ずっと左からの組み立てが続いていた北九州でしたが、15分には(20)矢田がFC大阪アンカー脇のスペースで(44)辻岡からのフィードを受けて右に展開、相手を引き寄せたところでサイドチェンジし、左のスペースでフリーで受けた(25)坪郷がニアに鋭いクロスを放ち(29)高が合わせます。

こうなってくると北九州としては、課題である追加点を前半のうちに奪取できるのかどうかという点がポイントになってきます。

17分からはFC大阪のCKが3本続きますが、前回対戦時のように5分以上ゴール前に釘付けされることもなく脱出できた点も地味ながらこの試合のポイントの一つであったと思います。

ここから少し膠着状態が続きましたが、30分のFC大阪のボックス進入を(34)高吉がセーフティなスライディングで刈り取り、ロングカウンターへ移行。自陣から(25)坪郷が右サイドをドリブルで運びクロス、最後は逆サイドから上がった(6)星がシュートもややタイミングが合いませんでした。

多彩な攻撃を魅せる北九州でしたが、なかなか追加点を奪えない展開が続く中、ついにゴールをこじ開けます。

この前のシーンでも(29)高の正確なポストプレーが光っていましたが、ここで正確な落としを適距離で(20)矢田が拾い、右にいた(66)髙橋へ。この時(20)矢田が一度(66)髙橋によったことで、FC大阪守備陣を引きつけ、自身の前にスペースをつくった点は見逃せません。
狭い前方スペースに正確なパスを出した(66)髙橋は全速力のスプリントでゴール前へ、完全にポケットを取った(20)矢田はこれも外をスプリントしてきた(22)山脇を使い、FC大阪ポケットを完全に攻略します。

(22)山脇からのグラウンダーのクロスはGK(1)山本透衣が弾きますが、至近距離で(32)高柳が詰め、更に跳ね返りに詰めた(66)髙橋がゴールを決め切りました。

おそらく今シーズンの北九州が島原キャンプからずっと取り組んでいたであろう攻撃の形が出た瞬間であったと思います。
シュートが少ない試合での北九州は主にこのポケット内外でのパスワークが繋がらずシュートに至らなかったといえます。チームが(おそらく)目指していた形が出たという点では、今シーズンベストゴールとも言えるのかもしれません。

北九州としては長らく課題であった追加点を先に奪うことに成功した前半でした。

(2)我慢とその先に~後半~

2点のビハインドを負ったFC大阪は、エースCF(9)島田拓海、主力の(10)久保吏久斗、そして古巣対戦となる(41)野瀬龍世を投入し一気に戦局の打開を図ってきます。
サッカーでは2点差が危険とよく言われますが、特に北九州の攻守の課題といえる後半開始の15分で失点しないことが大きく求められました。
結論から述べればこの最初の15分はFC大阪の攻勢が続いていたといえます。50分には北九州陣内左サイドで丁寧に繋がれて、LCM(27)澤崎凌大がシュートも枠外に外れます。

北九州は相手のシュートに対して、CBコンビと(34)高吉を中心に枠内のシュートコースを細かく消していたように見えました。FC大阪に難しいコースへ「撃たせる」形をつくれていたと思います。
前節のレビューでも少し書きましたが、2CBに戻したことでGK(27)田中悠也も含めた守備陣の意思伝達、役割分担は上手くいっているように見えます。一方(50)杉山はこの試合で通算3枚目のイエローを受けました。どこかで出場停止の試合がやってくる可能性があります。
サブの(13)東廉太や(4)長谷川光基にも同様の連係が求められます。

最初の15分を凌ぎ切れそうな58分に北九州は(29)高に代えて(18)渡邉颯太、(20)矢田に代えて(99)樺山諒乃介を投入、前線を早めに代えることでやはり前からのプレスを維持しようとします。
64分には相手ボックス手前で(66)髙橋と(99)樺山の連係でロングカウンターに入ろうとした(41)野瀬の空振りを誘い、(99)樺山が豪快に枠内へシュートもGK(1)山本のファインセーブに防がれます。

そして(18)渡邉もFC大阪が最終ラインでボールを持った際には強度が高いプレスをおそらく一度も手を抜くことなく敢行していました。

FC大阪の反撃ムードを選手交代も使いながら少しずつ自分たちのペースに戻しつつあった北九州に、ついに欲しかった次の1点が入ります。

シンプルな形でしたが素晴らしいゴールであったと思います。
まずは(44)辻岡のキックがしっかりFC大阪の最終ラインに落とされており、ボールにも回転が掛かっていた為、(18)渡邉がラインブレイクしやすかった点、落とした位置も先制点同様にFC大阪の右サイドバックとセンターバックの間を突いたもので、交代投入直後の(21)牛之濱拓が右サイドバックを引きつけていた点も良かったです。(18)渡邉は得意のワンタッチでゴールに流し込み、今シーズン5点目をマークします。
彼も伸び悩みが見られていましたが、この試合をきっかけに復調してほしいと思います。

(3)勝因の整理

この試合の勝因を改めて整理してみたいと思います。

まずは北九州のハイプレスについてですが、FC大阪のビルドアップが最終ライン3枚で開始される際に、北九州は前線4枚で数的優位を形成しやすかった為、積極的なプレスが可能となり、FC大阪前線に有効なボールを配球させなかった点は大きいと感じました。
そして、このロングボールの跳ね返りを(34)高吉を中心に効率よく回収出来た点も大きかったと思います。
また、自陣からの繋ぎにもチャレンジしていましたが、繋ぐ場面と蹴って危険を回避する場面の判断がおそらくほぼパーフェクトであったとも思いました。
先に触れました最終ラインの対応も含めて、こうした守備面のパフォーマンス向上がまず第一にあったと思います。

次に(66)髙橋のポジショニングについて考えてみたいと思います。
先制点の場面ではゴール前にきっちり詰めており、自ら決めた2点目もゴール前で良い準備が出来ていた髙橋でしたが、彼に求める役割は多くのサポーターが求めていたとおりフィニッシュワークがメインになりそうです。

その為には(66)髙橋を如何に前線に押し出すかが重要なのですが、まず左サイドの高い位置でゲームを組み立てられるようになっていた点は見逃せません。(25)坪郷や(6)星、ここに(29)高、(20)矢田や(44)辻岡が絡んでくる形ですが、この試合において最も大きかったのは(32)高柳がサイドをサポートし、陣形全体を押し上げられたからであると考えます。

(※見ていただきたいのが高柳の位置である。中央のみならず、サイドでも攻撃のキーマンたちを後方から支援している様子が伝わってくる。)

(※全体のパスソナー・パスネットワーク図でも高柳と星や辻岡ら左サイドの選手たちとのパス交換が目立つ。組み立ての段階での好サポートが伝わってくる。)

そして、実は前線へのロングボールがしっかり収まり、高い位置から北九州が攻撃を開始出来た点も否めません。これは(29)高の能力的な部分が大きく影響しいていると思います。
この2シーズン、北九州のワントップは(10)永井がファーストチョイスでした。自陣で回収したボールをまず彼に当てて、前線のコンビネーションからSBが絡みゴールに陥れるというシーンも何度も見てきました。
では、彼がポストプレーヤーかと問われれば、それは違うと考えます。
(10)永井はあくまでも「ポストプレーも出来る」選手であったのですが、最近の攻撃の不振の一因には彼にポストプレーを求め過ぎていた面もあったのではないかと考えます。

前線で起点をつくる、時間をつくるという仕事を求めるのであれば、筆者は(29)高を今後もワントップのファーストチョイスとして起用、(10)永井復帰後はスーパーサブとして起用する方法も手ではないかと考えます。

そして何と言ってもここまで述べてきましたトランジションやオフザボールの動きも含めたパスワーク、判断の向上は気候の良化によるところも大きいと思いました。この夜のピッチコンディションは気温26.7℃、湿度52%にと真夏の時期と比べると大幅に涼しくなったといえます。
各選手が走りやすいコンディションになってきたことは見逃せません。

最後に、FC大阪側からの要因を考えると、監督の交代があってからの傾向なのかどうか不明な点はあるのですが、攻撃が整理された反面、フィジカルを全面に押し出す「いやらしい」配球が無くなったとは思いました。

3.まとめ

以上、FC大阪戦を簡単にまとめました。
FC大阪が中3日でこの試合に臨んだという点は無視できないのですが、それ以上に北九州の戦法が前節群馬戦よりも整理され、選手の組み合わせに関してもベストなチョイスが出来た点が大きかったと思いました。
ですので、このメンバーを変えないことが次戦に向けては重要と感じます。

今はただただ全力で目の前の試合を獲りにいきましょう!

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
J1ファジアーノ岡山、J3ギラヴァンツ北九州レビュアー
レビュー作成が趣味を超えてライフワークになりつつある。

昨シーズンは岡山悲願のJ1初昇格のゲームを記すことが出来た。
今シーズンも初のJ1の舞台となる岡山、念願のJ2復帰へ向けて勝負に撃って出る北九州の戦いぶりを追っていく。

日々勉強、分析、解析、解釈、更に磨いていきたい。

岡山在住の開業社労士。今年も日常に追われるが、アウェイ遠征で鉄道旅を楽しみたい。2000年前後に北九州(市立)大学に在学。北九州は第2の故郷、未だに愛着は消えない。

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