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【ファジサポ日誌】177. 隠れた6ポイントマッチ ~第31節 ファジアーノ岡山 vs 横浜FC マッチレビュー ~

サッカーは麻雀に似ているという人がいる。

アガリ方(ここでは勝ち方と置き換える)が非常に多彩なのである。
牌の組み合わせ、揃え方の組み合わせの種類が多い上に、アガリ方にもツモとロンがある。自力で相手を上回ることもあれば、相手の戦法を上手く活かしたアガリ方もある。
そうした点から、サッカーと似た非常に戦略的なゲームといえる。
J1も終盤戦に入ったが、ファジアーノ岡山のここまでの対戦相手を振り返ると、J2との違いのひとつはその戦法の多彩さにあると感じている。
まさに前節の相手であった東京Vとの今シーズン2戦は、共に彼らの多彩な戦法にしてやられた。

一方、ファジアーノ岡山の戦法は対照的に一点突破的であるといえる。
敵陣にロングボールを送り、相手陣内で前線3枚+両WBでハイプレス、蹴らせてボランチ、CBで回収し相手の背後を狙う。
極論すれば、この一点を磨きに磨いてきた2025シーズンである。

ところがリーグ終盤を迎え、セカンドボールの回収役として無類の強さを誇っていたダブルボランチ(藤田息吹、宮本英治)がほぼ同タイミングで負傷離脱、そして前々節の名古屋のように岡山が苦手とする相手にボールを持たせるチームとの対戦もあった。

名古屋戦前のJ2降格圏との勝点差は14ポイントと開いていた背景もあり、新たなボランチコンビ、神谷優太と田部井涼の推進力を活かした地上戦を試そうとしていた様子はみてとれた。もちろんこれは佐藤龍之介の代表離脱中の攻撃力をカバーするという目的も含んでいたと思う。彼の今後の動向を踏まえれば、来シーズン以降のことも少々視野に入っていたかもしれない。

ところが前節東京V戦は彼らの術中に嵌ったこともあったが、特にボール運び、攻撃方法の選択という点でチームがバラバラになってしまった。

筆者は京都戦の大敗はともかく(ひょっとしたら京都戦にもその気配はあったのかもしれないが)、近2戦の連敗の背景はこのような点にあったと考えている。

しかし、東京V戦後の江坂任は「緩さ」に言及し、田部井涼は勝点を積み上げてきたことへの安心感からの気の緩みと、選手たちは自分たちのメンタル面に敗因を求めた。

これにも実は理由があったと思われる。
岡山の連敗中、今節の相手であった18位横浜FCとの勝点差は12、ちょうど4勝差まで縮まった。チーム状態が決して良くないとはいえ、この試合を落としてしまうと横浜FCとの勝点差は一桁9に縮まる。
もちろん残留争いには他のチームも絡んでいるが、少なくとも相手は自分たちの戦いに自信を持ち、私たちは更に悪い流れに巻き込まれていくことになったであろう。

チームとしては何としてでもこの試合で負ける訳にはいかなかった、そして自分たちのサッカーをもう一度強く確認する必要があったのである。
選手や監督のコメントからは「ここで引き締めないとマズイ」との危機感があったものと思われる。

幸い岡山は1ポイントを積み重ねれば、毎シーズンの残留の目安となる勝点40に到達できる。まずはこれを最優先に狙うのは当然のことであったといえよう。

実はこの試合、隠れた6ポイントマッチと呼んでも過言ではない程の重要な試合であった。

振り返ります。

1.試合結果&メンバー

岡山のドローは非常に久しぶりで6/1の第19節湘南戦(1-1)まで遡ります。スコアレスドローは第6節川崎戦、第9節名古屋戦に続き今シーズン3回目となります。

雨天の中、お互いに「自分たちのサッカー」に徹した一戦になったと思います。前書きでも述べましたが、岡山はこのドローで勝点40に到達しました。もちろん通過点の一つに過ぎませんし、ここでまた気を緩めてもいけませんが、残り8試合で12ポイント差を逆転するというのは至難の業であることも事実です。

横浜FCは勝点1を上積み、横浜F・マリノスと並ぶ28ポイントとなりました。この岡山戦では勝点3は是が非でも欲しかったところであるとは思いますが、三浦文丈監督就任後2勝3分2敗と7試合で勝点9を上積み、勝利した相手には上位神戸が含まれるなど試合内容は向上しており、アダイウトンを始めとする夏の補強が当たっている点も見逃せなく、現在の残留争い4チームの中では最も上昇要素を持っているといえます。

メンバーです。

J1第31節 岡山-横浜FC メンバー

中2日での一戦ということもあり、両チームともメンバーに注目が集まりました。

岡山はスタメン5人を変更しました。
LCBには(43)鈴木喜丈に代わり(15)工藤孝太が7試合ぶりの先発、RWBには(26)本山遥が神戸からの移籍後初先発、LWBも(17)末吉塁が今シーズン初先発を果たします。
LSTは(8)江坂任に代わり(19)岩渕弘人、CFには(99)ルカオをチョイスしてきました。
注目のダブルボランチは(33)神谷優太、(14)田部井涼のコンビの続戦となりました。

(15)工藤以外は昨シーズンのJ2、つまりJ1昇格を勝ち取った主力メンバーでの構成となりました。
おそらく東京V戦での不甲斐ない敗戦を受けて、自分たちのメンタリティ回復を「昇格メンバー」たちに託したいとの意図もあったと思います。

個人的に注目しましたのがRWBのチョイスです。
(88)柳貴博も(28)松本昌也もどちらかと言えば攻撃力に定評がありますが、ここに敢えて(26)本山を持ってきたというのは、横浜FCのメンバーに不確定要素があるものの、彼のスプリント能力により横浜FCの左サイドに起点をつくらせない、岡山右CB脇のスペースのカバーに期待しての起用であったと思います。

横浜FCは岡山よりも更に3人多い8人のスタメンを変更してきました。
注目されるところでは、前節新潟戦(○1-0)でスタメン出場したLCB(5)福森晃斗がメンバー外、今夏加入したGK(24)ヤクブ・スォヴィクもメンバー外となったことです。一方、LWB(48)新保海鈴は先発、LCBに入った新潟医療福祉大在学中、特別指定選手の(70)細井響も左足の力強いキックとロングスローを武器にしている選手ということもあり、やはり横浜FCの左サイドの出力は警戒と感じた次第です。
前線には移籍加入後、破壊力抜群のゴールを決め続けているLST(90)アダイウトンもいます。

2.レビュー

岡山の自分たちの良さを取り戻す戦いが、横浜FC対策としても効果的であった一戦と感じました。

岡山から見た際の横浜FCの脅威は、外国籍選手揃い踏みとはなりませんでしたが、やはりLST(90)アダイウトン、CF(91)ルキアンを中心とした1トップ+2シャドーにあったと思います。
前節の新潟戦では(90)アダイウトンが遠目からの強烈なミドルシュートを決めましたが、より怖いのはアタッキングサードに進入されてからの個人技とこの前線3枚とこの試合で言えばCH(4)ユーリララなどとのコンビネーションプレーにあったと思われます。

そこで、岡山としてはこの前線3枚を出来るだけ岡山ゴールに近づけさせない、更にはこの3枚の距離を遠ざけさせたままにする守備が必要となりました。

横浜FCの前進は最終ラインからのロングボールが基本ですが、間髪入れずに前に蹴るというよりも味方の前線の状況をみながら少し最終ラインでボールを持つ傾向が序盤から見てとれました。
岡山はそこをスイッチにRST(27)木村太哉を中心にハイプレスを敢行、横浜FC守備陣の蹴り出す位置を低く設定させることに成功、キック自体も飛距離を出させないことに成功します。
岡山としてはゲームの主導権を握る上で、まずこれが大きかったと思います。

横浜FCも先制点を獲りたい、ゴールを先に許したくないという意識はこれまでの戦績から見ても明らかで、ロングボールの配球はカウンターを受けにくいサイドが中心になっていました。序盤にGK(21)市川暉記が左右両サイドへのキックを2本続けて失敗していたプレーからもよくわかります。

このサイドにこだわった配球が岡山の守備と守備から攻撃への移行をやりやすくした点も大きかったと思われます。
岡山はサイドに流れるロングボールに対して右はRCB(4)阿部海大、左はLCB(15)工藤孝太を中心にしっかり迎撃し跳ね返します。
そしてそのこぼれ球を両WBのみならず、ボランチコンビの(33)神谷と(14)田部井がしっかりこぼれ球の回収にあたります。
このボランチのコンビの役割を岡山が本来行ってきたサッカーに合わせた形に戻した点もこの試合のポイントであったと思います。
2人とも中2日を感じさせない執念でボールを拾って走っていたように見えました。

この試合のこうした傾向は「試合結果」の項目で添付していますFootballlabのデータにも分かりやすく現れていますので、また見ていただきたいと思います。

少しでも高い位置に配球したい横浜FCはCB(3)山﨑浩介が半列ほど上がりRCB(16)伊藤槙人からパスを受けて攻撃を試みようともしていましたが、やはりボールを持ってから若干の間があり、岡山LST(19)岩渕弘人のプレスバックに遭う場面も目立ちました。

(※守備スタッツでは共にこぼれ球奪取を記録した神谷と田部井、そのプレーエリアは両サイドへの偏りが見られた。)

(※序盤の横浜FCの各選手の立ち位置はボールを受けに下りたボランチも含めて総じて低い。山﨑が高い位置をとろうとする工夫もよく伝わる。)

さて、サイドでボールを奪うと右サイドでは流れてきたCF(99)ルカオを起点に周囲がサポートする形、これはいつもの岡山の攻撃パターンのひとつですが、(99)ルカオが落としたボールを後方の(26)本山が独特の軌道を描くクロスを放つ姿には少しばかり昨シーズンのプレーオフを思い返す雰囲気もあったように見えました。

一方、左サイドではLWB(17)末吉が抜群のドリブルと切り返しを武器に横浜FCの右サイドを切り裂きます。この攻撃の際に、相性が抜群と感じたのは(19)岩渕とのコンビネーションで、(19)岩渕のポジショニングが横浜FC、RCBとRWBの間に浮くような位置にいることからも横浜FCとしてはなかなか捕まえられなかったといえます。
更にこのコンビネーションにLCB(15)工藤がハーフレーンを使いながら近い距離感でサポート、追い越して前線へ進出する動きも見せており、その動きは各サポーターが欠場した(43)鈴木喜丈をイメージしていました。

(※全体的にパス本数自体が少ない試合なので、時間帯別のパスネットワーク図はより傾向を強く現していると考えられる。何と工藤が最前線に位置している時間帯がある。岡山のサイドアタックの傾向がよくみえる。)

こうした質量豊富な岡山のサイドアタックをみる限り、スコアレスドローの結果に物足りないとみる向きもあります。

この点について考えてみましたが、明確な答えには辿り着いていません。

リスク管理を重視したのではないかとも考えてみました。

岡山はサイドアタックに人数を割く傾向にあります。それはポケットへの進入を第一に考えているからと思われますが、そうなるとボックス内、ゴール前にはボランチや逆サイドのシャドーのみならずWBも入っていかなくては人数を十分に確保できません。(88)柳(貴)に求められている役割はまさにそうした部分であると思います。
この試合では、相手のロングカウンターに対するリスク管理を重視した結果、ボランチや逆サイドのWBが十分入れていなかったのではないかと仮定しましたが、実際にはよく入れていたと思います。この説は違うようです。

こうなってくると単にクロスやラストパスの質の問題にもなってくるのですが、例えば(17)末吉も久しぶりなことはあり、自身のプレーにキレがある分、ラストパス、クロスの場面でフリーの味方を見る余裕まではなかったのかもしれないとは思いました。

あと、岡山としてはCKさえ取れればとの考えはあったのかもしれません。
実際にCKは獲得できたのですが、やはり先に触れない傾向は変わらず、セットプレーそのものに関してはなかなか得点の匂いは感じられませんでした。

前節で苦戦した最終ラインに関しては、横浜FCの守備がローブロックの形成を第一とするチームスタイルであったことからハイプレスに晒される場面は少なく、またCB(18)田上大地を中心に気合いも十分であったことから危ない場面はそこまで多くなかったと思います。とはいえ横浜FC攻撃陣からは一発で仕留めてしまいそうな匂いも十分に漂っていました。

後半は最終ラインに(2)ンドカ・ボニフェイスを入れて回収力を上げ、(70)細井が一列上がったことによって最初の15分は横浜FCの時間が続きましたが、60分以降は再び岡山の時間となります。
切り札(8)江坂任を投入した岡山としては彼のクオリティによりゴールを奪いたかったところでしたが、第3の動きが乏しく、彼のスペースへ出すワンタッチパスに反応できる味方がいません。これに関しては体力的な面も少し顔を覗かせていたような気はしました。

3.まとめ

以上、非常に簡単に横浜FC戦をまとめました。
3連敗中、中2日という点を踏まえれば、スコアレスドローでも十分許容できる試合と感じました。
一番の収穫は(17)末吉の復調ぶりです。
昨シーズンJ2を戦った相手ではありましたがJ1初スタメンで十分戦えることを示してくれましたし、代表活動中の(39)佐藤龍之介が不在でもコンセプトを変えずに左サイドの攻撃を構築出来る点はポジティブです。
(8)江坂とのコンビネーションをどのように深めていくのかが楽しみです。次節もスタイル的には似ている町田が相手です。
強いですが、戦い方を変える必要はないように思います。

今回もお読みいただき、ありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
J1ファジアーノ岡山、J3ギラヴァンツ北九州レビュアー
レビュー作成が趣味を超えてライフワークになりつつある。

昨シーズンは岡山悲願のJ1初昇格のゲームを記すことが出来た。
今シーズンも初のJ1の舞台となる岡山、念願のJ2復帰へ向けて勝負に撃って出る北九州の戦いぶりを追っていく。

日々勉強、分析、解析、解釈、更に磨いていきたい。

岡山在住の開業社労士。今年も日常に追われる。
鉄道ファンでもあるが、最近は鉄分不足が続く。





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