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【ファジサポ日誌】174. ハイブリッドサッカー~第28節 京都サンガFC vs ファジアーノ岡山 マッチレビュー ~

ファジアーノ岡山がJ1昇格を目指すプロセスにおいて、また戦術的に現在のJクラブの中において「お手本」になるチームはどこになるのか?ということを時折考えることがあった。

それが同じ「非保持型ハイプレス」を基軸とする京都サンガや当時のアビスパ福岡という回答を筆者は持ち続けてきた。

という訳で、筆者は京都の試合内容やその動向については定期的にチェック、気にしている。

一方で、福岡は監督交代によりスタイルが少し変わり、昨シーズンの京都は選手個人の運動量を含めた能力の限界突破に頼り過ぎているようにも筆者には映っていた。

記念すべきJ1開幕戦では2-0で勝利を収めたファジアーノ岡山であったが、レビュー内でも示したとおり、岡山の完成度の高さと同時に、京都の未完成ぶりも色濃く伝わってきた。

シーズンが進む中、京都のその後の戦術浸透についてもチェックしていたが、京都のサッカーを岡山がモデルとして参考にするには、戦力の質の違いも含めて、岡山には少々ハードルが高いと感じていた時期もあった。
実際のところ、今シーズンの京都の戦術浸透においては外国籍選手を中心に頻繁に戦力を入れ替えることを可能とする「財力」が力になっていることは間違いないと思う。

しかし、今回のアウェイ戦ではそれだけではなかった。
寧ろこの京都のサッカーであれば、岡山も目指すことが出来るのではないかという現実的な希望を持つことが出来た。
その希望は、京都の戦術完成のみならず岡山がJ1で実力を磨いていることにより、京都が今いるステージに少し近づいたことも意味していると思うのである。

勝負は負けた。しかし、この負けは次に勝つための負けである。

振り返ります。

1.試合結果&メンバー

サンガスタジアムbyKYOCERAでの対戦は、前回京都がJ2にいた2021シーズン6月以来(●0-2)となりましたが、今回は0-5の大敗を喫し、亀岡での初勝利とはなりませんでした。

チームの連勝は3でストップ、5失点は今季最多となります。

岡山の成績は再び11勝6分11敗の五分となりました。
最近は現在の上位陣との対戦が続いていましたが、鹿島や柏に勝利した一方で今回の京都や神戸、広島といったトランジションの鋭さを特長としたチームには敗れています。同様のスタイルを模索し続けている岡山にとって、今後の課題が色濃く反映されている成績とといえます。

J1残留の安全圏となる勝点40点台にも出来るだけ早く到達したいところです。今週のJ1のお休みで上手く切り替えて、次節名古屋戦に向けて再スタートを切ってほしいと思います。

京都はこの勝利によって、首位に返り咲きました。
前節と今節で得失点差+9を稼いだ点は混戦の優勝争いにおいて大きなアドバンテージとなるでしょう。

メンバーです。

J1第28節 京都-岡山 メンバー

岡山は先発CFを(22)一美和成から(99)ルカオに代えてきました。この試合のポイントの一つになったと思います。

前節湘南戦で負傷交代したMF(28)松本昌也がベンチ入り、大きな怪我でない様子に安堵しました。

京都は前節FC東京戦で警告を受けたLWG(18)松田天馬が出場停止、この試合でRWGを務めた(14)原大智が左に回り、右には(27)山田楓喜が入ります。

2.レビュー

(1)縦と横

お互いに縦への速さを知っている、油断すれば一気にゴール前へと運ばれる。そんな緊張感溢れる立ち上がりであったと思います。

多くのJリーグのゲームが開始5~10分ほどは浮き球で相手陣内にボールを送り合い、ゲーム最初の主導権争いを繰り広げる傾向が強い中、この両チームは1~2分の段階で目まぐるしく保持、非保持が入れ替わるトランジション合戦を繰り広げます。

岡山は京都の左サイド、LSB(44)佐藤響の裏のスペースを(99)ルカオに突かせるねらいをゲーム立ち上がりから明確に持っていました。
3連勝中のハイプレス&攻撃構築のキープレーヤーであった(22)一美を外してでも(99)ルカオを先発に使った理由は、このSBの裏にポイントを作りたかったからといえます。

2分38秒、岡山陣内右RWB(88)柳貴博からそんな(99)ルカオを狙ったスローインは珍しくミスとなります。
京都アンカー(10)福岡慎平が跳ね返したボールをLIH(39)平戸太貴が、岡山CH(24)藤田息吹を背にしながらも、正確な胸トラップからインフロントで右斜め前方へ蹴り出します。これがCH(41)宮本英治に当たり、そのこぼれ球をRWG(27)木村楓喜がワンタッチで前線に張るCF(9)ラファエル・エリアスへと出します。
(9)エリアスには岡山CB(18)田上大地とRCB(4)阿部海大がついていましたが(9)エリアスは難なく岡山ゴール前へと持ち出します。
最終的に(18)田上が防ぎましたが、何となく(9)エリアスに「今日はやれる」と思わせたプレーであった印象が残りました。

岡山はこの後、左のLCB(43)鈴木喜丈を起点にLWB(39)佐藤龍之介とLST(8)江坂任のコンビネーションから左サイドを突破、ここで右の(88)柳(貴)を狙ったサイドチェンジを繰り出しますが、これは繋がりません。おそらく(88)柳(貴)のクロスから(99)ルカオの頭を狙わせるイメージがあったのかもしれません。

タイトな縦の攻防から岡山が横幅を使おうとした場面でした。
京都も自陣左サイドからのスローインからサイドチェンジし、岡山のプレスを回避しようとしますが、京都RSB(2)福田心之助を狙ったこの横パスを中へ圧縮していた(39)佐藤がカット、前に運びながら京都2CBを引きつけて前方左脇へと走り込んだ(8)江坂にパス、(8)江坂は右足でコントロールしながら左足で京都GK(26)太田岳志と詰めてきたCBの間の狭いコースにシュートを突き刺します。

お互いの縦から横の攻防を制した岡山が、鮮やかに制したように思えました。しかし、ここでVARが介入。OFRにより、この時PA内に走り込んでいたRST(19)岩渕弘人がゴールに戻る京都(44)佐藤の進路に入って(44)佐藤を倒したプレーをファールとされ、岡山の先制弾はノーゴール判定となります。

岩渕に出された警告は「C2」、つまり「ラフプレー」です。
相手の進路に入って偶発的にぶつかったのみであればファールになってなかった可能性はあったと思いますが、左手で明確に(44)佐藤を倒していますので、これはファールをとられても致し方なかったと考えます。
VARがよく見ていたということでしょう。

(2)京都のビルドアップの特長

岡山としては、ねらいが嵌ったゴールであったこと、そしてこの確認に時間を要したことから、良い流れを一度断ち切られてしまった点は痛かったといえます。ゲーム再開後の岡山は、リズムが狂ったのか前線の選手を中心にトランジションに鈍りが見えていました。

京都は、その隙を突いて、岡山のハイプレス網を突破します。

J1第28節 京都-岡山 9分55秒~ 京都ビルドアップ

このシーンは(10)福岡にボールが入ったところを寄せた(99)ルカオがファールをとられるのですが、おそらく京都最初のビルドアップにして京都のビルドアップの考え方がよく現れていたと思います。

まず左サイドにいた筈のLST(14)原大智が右の(27)山田と同サイドにいることで(41)宮本のマークを混乱に陥れています。
岡山も同サイド圧縮を行うので、(41)宮本が(27)山田、そして(24)藤田が(14)原をケアしても良いのですが、京都の両IHが縦並びになり(24)藤田の前後にいることによって、(24)藤田をピン止めしているのです。
そしてこの両IHも含めて、京都右サイドの5人以外はしっかり休む時間をつくっている点が大きな特長と感じました。

ビルドアップにも色々あり、例えば柏のビルドアップはピッチ上の全員がボールサイドへと引き寄せられ、ピッチ上の11人が常に連動しています。
その証拠に柏の走行距離は長いといえます。

一方、この京都のビルドアップは岡山のハイプレス回避と一部の選手の立ち位置を変えることで味方の休息を生み出す仕組みになっているといえます。
これは昨シーズンの京都の弱点ともいえた走力に頼り過ぎたことによる夏場の失速への対策ともいえるボール運びといえます。

動く人と休む人の双方が生まれる非常にハイブリッドな攻撃ともいえます。
更に注目していただきたいのが(9)エリアスなのですが、攻撃の組み立てにはほぼ参加せず、岡山最終ラインの中央で常に準備をしています。
彼が下りて組み立てに加わる場面ももちろんあるのですが、やはりゴール前の仕事に集中できるという点は彼の爆発力の秘訣の一つといえるのではないでしょうか。

(9)エリアスは今シーズンの開幕戦にも出場していましたが、やはりポジションをしっかりキープしていた印象が残っています。この開幕の段階では彼にボールを届ける「道」が未整備であったということなのでしょう。

(3)岡山が磨くべき点

では京都の各ゴールがこうしたビルドアップからの美しい崩しによって生まれていた訳でもなかったという点がこの試合の奇妙かつ面白い点でした。

寧ろ、京都の各ゴールは岡山のミスを突いたものといえました。

岡山目線でみれば、1失点目は(19)岩渕のトラップが流れたことによるロスト、そして2失点目は自陣から持ち上がった(8)江坂へのサポートが完全に遅れているトランジションの鈍りからのロスト、3失点目は(41)宮本のパスミスと、全て岡山のミスや隙が起点になっている失点なのです。

当然京都の技術が素晴らしかったことは間違いありません。
1点目は(14)原の股抜きクロスをダイレクトでニアに蹴り込んだ(9)エリアスの足の振りの速さ、2点目は(14)原のプレスバックから一気に縦に突破する迫力、そして3点目は(9)エリアスのマーカーを背にしてもバランスを崩さない体幹の強さと反転の技術と(18)田上とGK(49)スベンド・ブローダーセンの僅かな間のコースを狙えるシュート技術はそれぞれがインパクトを与えるものでした。

しかし、筆者は各失点の起点を踏まえるとやはり5点は取られ過ぎとの感想を持っています。今後の岡山の成長を考える上で、きっちりやっていかなくてはならないのは、まずはボールを止める、蹴るという基本技術の徹底であったり、更なるトランジションの向上と現実的に行える努力なのかもしれません。

(4)岡山はどこに規制をかけるべきであったか?

2失点目の原因になったトランジションの鈍りに関しては、やはりハイプレスが嵌らず、各選手が縦に横にと京都に走らされ過ぎた点は見逃せないと思います。

J1第38節 京都-岡山 31分38秒

この場面は京都が既に3点目を奪った直後で、岡山ボールを京都が高い位置で回収したというシチュエーションなのですが、京都のボール運びと配置の象徴的な場面と感じましたので採り上げます。

京都CB(24)宮本優太と京都の中盤3人の繋ぎに岡山の前線、ボランチがほぼ規制を掛けられず、逆サイドに展開されていることがよくわかります。
厄介なのがこの中盤3人は縦横に微妙にポジションをずらしながらボールを受けることで、岡山のプレスを回避していることでした。

特にこの場面では左の(39)平戸が右に進出することで、やはり(41)宮本をピン止めしています。
逆サイド側の選手が反対サイドに進出して数的有利や混乱、岡山ボランチを無効化するという構造は、先ほど述べましたビルドアップの動きと同様なのです。

では、岡山はどこを規制するべきであったのか?
筆者は中央の選手、つまりこの場面では中央の軸であるアンカーの(10)福岡に有効な規制をかけるべきであったと考えます。

彼に規制を掛ける役割は岡山の場合CFになります。
(99)ルカオは頑張って規制をかけようとしていましたが、(10)福岡の細かい動き直しにまでは十分に対応は出来ていませんでした。

こう考えた場合、やはりこの試合において(22)一美を先発で起用しなかった点は裏目に出たのではないかと考えるのです。

それにしても3枚の中盤の優位性を活かしたチームとは現在の岡山はどうも分が悪いようです。今節の京都とは異なる優位性でしたが、神戸もそのうちの一つであったと考えます。

そして3枚の中盤形成を可能にしているのが、2CBで守り切れる強固な守備と筆者は考えます。つまり最終ラインに3枚を割かなくて良い分、中盤で優位性をとれる配置を形成することが出来るのです。

ちなみに開幕戦では京都の3枚の中盤も新戦力が加わっていたこともあり、比較的初期配置に忠実であったとの記憶が残っています。
2月とはコンセプトは同様ですが、全然異なるデキのチームになっていると言えます。

後半、京都RIH(16)武田将平が(14)田部井に報復行為ともとれそうなキックを浴びせていましたが、仮にここで退場になっていたら、この中盤3人の流動性はなくなっていたのかもしれません。

(5)収穫はウェリック・ポポ

さて、前半のみで3点のビハインドを負った岡山でしたが、後半開始から(41)宮本に代えてCH(14)田部井涼、(19)岩渕に代えて(22)一美が入ります。前半から出場していた2人ともパフォーマンスレベルはよくなかったと思います。良い交代でした。
(14)田部井が入ったことでプレースキックに期待する、(22)一美を入れて前線のターゲットを増やす。そんな意図があったものと思われます。

更に61分には(99)ルカオに代えて久々に(98)ウェリック・ポポを投入します。リーグ戦4試合ぶりの出場です。
これまでの交代出場4試合では、自陣からドリブルで持ち上がり仕掛けるシーンが多く見られましたが、この試合では長身を活かして、サイドからのクロスに合わせるプレーも多くみられることが出来ました。

75分、右サイド奥からの(39)佐藤のクロスにニアで合わせた(98)ポポのシュートは惜しくもクロスバーに直撃しましたが、高さでは完全に優位に立っており、飛び込むタイミングも良かったです。
出場がない試合でも常にベンチ入りしていた(98)ポポですから、首脳陣の期待は大きいものと思われます。

こういう極端な試合であったからこそ得られた出場機会であったかもしれませんが、この試合でのパフォーマンスであれば今後も期待できると思われます。

3.まとめ

以上、簡単にアウェイ京都戦をまとめました。
正直なところ5失点は獲られ過ぎとも思いましたが、京都にしっかり対策されてしまったという点と京都のハイブリッドなサッカーを魅せつけられたという感想を持っています。

まず対策という点では、京都の選手たちが岡山対策をしっかり体現出来ていたことから、分析の落とし込みにしっかり時間を使えているのではないかと推察しています。おそらくこれは分析にリソースをしっかり割けているからと考えます。

岡山も大槻コーチの加入で対戦相手の分析は強化されていると思われますが、分析体制の充実は今後のチーム成長にとっても必須と思いました。

そして「ハイインテンシティ」を標榜するサッカーの更なる進化を京都は体現していたと感じました。もちろん選手個々の力量、質による面も大きい訳ですが、今の京都は「ポストハイインテンシティ」の急先鋒にあるといえます。首位に相応しいチームといえます。

時代によってサッカーのトレンドも変わっていきますが、いつか岡山もこんなサッカーが出来るようになりたいものです。

今回もお読みいただき、ありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
J1ファジアーノ岡山、J3ギラヴァンツ北九州レビュアー
レビュー作成が趣味を超えてライフワークになりつつある。

昨シーズンは岡山悲願のJ1初昇格のゲームを記すことが出来た。
今シーズンも初のJ1の舞台となる岡山、念願のJ2復帰へ向けて勝負に撃って出る北九州の戦いぶりを追っていく。

日々勉強、分析、解析、解釈、更に磨いていきたい。

岡山在住の開業社労士。今年も日常に追われる。
鉄道ファンでもあるが、最近は鉄分不足が続く。





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