【向日葵は枯れていない!第2章】72.ギラヴァンツ北九州 マッチレビュー ~ 第25節 vs AC長野パルセイロ 〜
モグラ叩き。
こんな言葉を思い浮かべていた。
課題をひとつクリアした途端に、今度は影を潜めていた別の課題が顔を覗かせる。そしてそのモグラを叩けなかったが故に、勝点を失ってしまう。
今シーズンのギラヴァンツ北九州は攻守にやるべきことが多くなってしまっている。何度もこの言葉を出して恐縮ではあるが「ハイインテンシティ」と「ハイポゼッション」の両立、ハイブリッドな戦法をモノにするにはJ2昇格を目指すライバル他チームと比べても、潰すべき課題が多いのだ。
その全ての課題を100%潰すことは難しく、おそらく増本監督はじめチームはそれぞれの課題を例えば80%ぐらいの及第点でクリアし、大きな穴がないバランスを重視したチームづくりを行いたかった、これは開幕前からの監督や選手のコメントを総合しての想像である。
ところが、現実には想定どおりの穴埋めが出来ていない課題や、仮に到達段階が80%なら、残りの20%の穴が試合で出てしまっている。そんな状況なのではないだろうか。
この長野戦に向けて、チームが危機感を持って準備してきたものは全てではないにせよ表現出来ていたように見えた。ゲームプランや攻守の設計もしっかり見えた。球際を含め実際によく戦えていた。
しかし、J2復帰という大目標を見据えるチームとして、必勝を期した一戦で結果が出なかったという点については、残念ながら力不足と言わざるを得ない。
それでも、取り戻しつつあるアグレッシブな戦いを90分、そして毎試合続けていくしかない。その先にのみチームや選手個人の未来も拓ける。
守護神(27)田中悠也が毎試合発信してくれているように、更に隙なく細部を詰めていくしかないのだろう。
振り返ります。
1.試合結果&メンバー
前半にCF(10)永井龍のテクニカルなゴールで先制、実に3試合ぶりの得点を上げた北九州でした。課題の追加点を奪うべく、後半は入りの15分を中心に更に攻勢に出ましたが、やはり決定力不足を露呈し、連敗ストップに燃える長野の攻勢を受け始めます。
何度も長野の決定機を食い止めた北九州でしたが、ラストプレーで無念の失点。勝点2を失うドローとなりました。
今シーズンは比較的影を潜めていた試合最終盤での失点でしたが、この大事な局面において悪癖が顔を覗かせたといえます。
総合的に見れば、良い時間帯に追加点を奪えなかったことが響いたと考えます。この試合においては敵陣ゴールを脅かすシーンはつくれていましたが、残念ながらあと一歩というところであったと思います。
今節は、上位陣も勝点獲得に苦労していましたが、栃木シティのようにATに2点を奪い撃ち合いを制したチームもあります。
上位陣の底力を見せつけられますと、どうしても北九州の攻撃には物足りなさを感じざるを得ません。6位奈良との7ポイント差は変わりませんが、いよいよ下が迫ってきました。
繰り返しになりますが必死で戦い続けるしかありません。
メンバーです。

北九州のメンバーには大きな変更がありました。
前節までリーグ戦全試合出場、不動のRSB/RWB(22)山脇樺織がメンバー外となりました。夏の移籍期間は既に終わっており、積極的な休養か負傷も含めたコンディション不良が考えられます。チーム状況を踏まえると、前者は少々考えにくく、後者なのではないかと推察します。
こうなると坂本翔のFC大阪への移籍がかなり痛いのですが、この試合では(6)星広大が右に回ることになりました。
そしてLWBにはルーキー(19)吉原楓人がリーグ戦初先発を果たしました。更にボランチの一角にはベテラン(20)矢田旭が入りました。
(20)矢田は今シーズン初出場となります。
そしてLSTで(29)高昇辰が先発します。
前線でターゲットになれ、かつプレス能力も高い彼の先発起用から北九州のゲームプランも見えてきます。
一方、前節までLSTに入っていた(99)樺山諒乃介はメンバー外となりました。ベンチにはMF(28)木實快斗、FW(49)駒沢直哉など久々のメンバーも目立ちます。
長野は前節アウェイ鹿児島戦で0-6の大敗を喫しました。
スタメン5人を変更してきました。
2.レビュー
前線にターゲットを増やした北九州でしたが、序盤は(10)永井や(29)高を狙うというよりは、自陣で長野のプレスを受ける前に、素早くラフなボールを長野陣内に蹴り込み、味方を積極的に走らせて長野陣内にポイントをつくることを優先していました。
(10)永井と(29)高は敵陣では縦関係になり、特に(29)高が前方に出て長野DFを引きつけ、その背後または左右で(10)永井が走り回るような関係性を形成します。
北九州はまず長野の右サイド、(19)吉原がいる左サイドを中心にボールを送り込み陣形をコンパクトに圧縮。(19)吉原がやや中に入ることで、昨シーズンの前線4枚のような関係性を築いていたように見えました。
こうした良い距離感から(10)永井がボールを運び、3分にはPA外からファーストシュートを放ちます。ゴールが見えたら積極的に狙っていくというこの試合における方針も見えていました。
長野陣内で相手にボールを持たれると、北九州は積極的に(10)永井、(29)高でプレスを掛けていきます。(29)高の先発起用にはこのプレス回数、強度を確保する意図もあったと推察されます。
また、この序盤から前線2人のプレスに後方のCH(20)矢田と(34)高吉正真が連動、それに伴い最終ラインも高い位置をキープする場面が目立ちます。特にビルドアップに加わる長野GK(21)松原颯汰への積極的なプレスは約束事になっていたと思います。
この試合での北九州にはボールの奪い所について、出来るだけ高い位置で奪い、効果的にカウンター攻撃に繋げる設計が用意されていたように見えました。

完全にこの図のとおりではありませんが、9分台の北九州の攻守が一例になると思います。
最近の試合では相手ボールになった際に5-4-1、または5-3-2の守備ブロック形成(撤退)が優先されており、相手に自陣まで運ばれることで、自ずと北九州のボール奪取位置は低くなっていました。よって低い位置からの攻撃構築に最近数戦の争点があったと筆者は捉えていましたが、この試合では工夫がみられました。
北九州は長野右サイドからのボール運びに対して、5バックを形成する前にLWB(19)吉原を長野のWBの対面に出し、これをスイッチにして味方で取り囲みます。この間最終ラインは4バックで守ります。
そしてボールを奪えればショートカウンターに入るのですが、ここで(66)髙橋がフリーになれることにより攻撃に厚みを加えていました。
仮にこの囲いを突破された場合は(19)吉原が最終ラインへ撤退するという仕組みです。
これはWBが本職でない(19)吉原に少しでも構えて守らせない配慮と考えられますが、効果的に機能しているように見えました。
今後、相手システムとの兼ね合いもありますが、良い設計なので継続してほしいと思う一方で、この試合のメンバー構成であるから機能したとも感じました。
というのは、仮に(22)山脇が復帰し(6)星がLWBに戻った場合は、右サイドで同様の仕組みをつくっても面白いのですが、その場合は(66)髙橋に一定強度の守備を求めることになり、(22)山脇に対面守備を行わせることで彼の前にスペースをつくれなくなるからです。
この点は(22)山脇の状況も含めて今後の展開を待ちたいと思います。
(※長野のボールロスト位置。試合全体のものになるが、北九州が長野の右サイドに対して高い位置でプレッシャーを掛けられていた様子がわかる。)
さて、北九州が自陣から素早く長野陣内左側~中央へ運び、前線2枚がボールを持つことで長野のLWBが戻り切れないうちに長野3CBを中央に引きつけ、空いた右サイドのスペースに(6)星が進出、RST(66)髙橋大悟らのクロスを引き出します。こうして北九州は序盤から長野を押し込みます。
一方、長野はワンタッチを多用しながらボールを運びますが、北九州が長野を押し込んだことで陣形が縦に間延びし、上手くパスが繋がりません。
そこでLWB(17)忽那喬司が中に進出、自らパスの中継点にもなりながら積極的にクロスを前線に送ることで、長野も少しずつ北九州陣内奥へと陣地を回復していきます。
こうした序盤の攻防を経て、10分過ぎから北九州は自陣からボールを繋ぎ始めます。これは中断前の2連勝時にも見られていた展開です。
北九州最終ラインは長野の前線をしっかり引きつけて、下りてきた中盤の(20)矢田や(34)高吉へとパス、彼らからこれも縦関係になっている前線の2人や中に絞り気味のポジションをとる(66)髙橋へ縦パスを差します。一方で左に関しては(19)吉原のボールを受ける際の動き出しが少々不足しており、前進が容易ではありませんでした。
また、ボールを繋ぐ際に北九州には複数人がボールに寄ってしまう傾向もあり、相手を引きつけたことによって出来た相手背後のスペースを十分活用できていない場面もありました。13分の長野のチャンスとなったFKは、ビルドアップの連係不足により北九州がロストした流れから長野に押し込まれ、その際に(20)矢田がハンドを犯し与えたものでした。
(※北九州のパスネットワーク図。特に前半の(20)矢田の位置に注目していただきたい。攻守の結節点になっていることがよくわかる。)
しかし、この時間帯に地上戦を行ったことにより、長野の浮き球への警戒を解く効果はあったと考えています。22分の北九州の先制点には、こうした北九州の試合運びが長野守備陣の虚を突いたという背景もあったように思います。
🟡Today's Highlight 🔴#高昇辰 選手がヘディングで逸らしたボールを、#永井龍 選手が技ありループ!✨
— ギラヴァンツ北九州 オフィシャル (@Giravanz_staff) August 30, 2025
待望の先制点をもたらします!#ギラヴァンツ北九州 pic.twitter.com/e1aWWastPn
(29)高がマーカーを外してヘッドで逸らして(10)永井へ、ダイレクトで右アウトサイドに当てるという芸術的なシュートでした。
この2人の相性は良いですね。ねらいどおりのゴールであったと思います。
陣形維持に気をとられ過ぎた長野の守りも良くはなかったです。
今シーズンはまだ4ゴールに止まっている(10)永井ですが、量産できない理由に本人のコンディションもですが、タスクの多さや周囲との関係性が深まらない面もあるように見えます。そういう意味からも(10)永井と(29)高の関係性はしばらく維持してほしいと感じました。
このゴールの直後の飲水タイムから長野はアクシデントがあったCF(11)進昂平からCF(18)浮田健誠に交代します。
北九州としては(11)進よりは昨シーズンのアウェイ戦でも手痛いゴールを決められた(18)浮田の方が不気味な存在であったかもしれません。
怪我の功名であったかもしれませんが、この(18)浮田の投入は長野ボールを前線で落ち着かせる効果があり、北九州陣内で時間をつくることで、長野の攻撃に厚みをもたらしていました。
26分RWB(33)安藤一哉の左足のクロスはPA内の(18)浮田の頭にぴたりと当てます。振り返るとこの前半から長野のクロスは有効な攻撃になっていたことがわかります。
この時間帯に少々不思議に感じたのが、北九州がGK(27)田中悠也からのビルドアップを続けていた点です。
筆者は前節相模原戦のレビューでは、ボール奪取位置が低くなった場合は、ボール保持による状況打開を唱えましたが、全てのシチュエーションに関して保持を選択すれば良いとは考えていません。
序盤にロングボールで激しく相手を押し込み、勢いが落ちたところでボールを持ち運ぶ、そして先制した訳ですからもう一度振り出しに戻って、ロングボールで敵陣に起点を作り直せば良かったのだと考えます。
また、この日の荒れたピッチ状況を踏まえても必要以上にビルドアップにこだわることは危険であったといえます。
北九州は相手がセットした状態でビルドアップを開始しますが、自陣からボールを出せず、長野に押し込まれます。28分(17)忽那のFKは(27)田中が辛うじてセーブします。
この段階でビルドアップの危険性に気づいたと思われる北九州は、自陣からの前進方法にゴールキックを選択。こぼれ球を高い位置で奪おうと粘りますが、長野も徐々にパスで繋げるようになり、前半の終盤は若干長野優勢の時間が続いたといえます。
ここから後半です。
最近の北九州の課題が後半開始15分間の失点でしたが、この試合ではチームとして追加点を奪うことに集中できた良い時間帯であったといえます。
長野にもチャンスがありましたが、全体的には北九州優勢であったといえます。
48分(66)髙橋のクロスに走り込んだ(19)吉原のシュートは角度がなく、相手GKに防がれましたが、これまであまりなかった相手PA内に斜めに入れるクロスからのチャンスであり、この形はこれからも繰り返したいところです。
続く49分には(29)高がPA内からシュート、52分には(20)矢田がPA外から強烈なミドルを放ちます。その後、更に左サイドに流れていた(10)永井からフリーの(66)髙橋へパスが出されますが、タイミングが合いません。
この一週間の改善内容や、何と言っても気持ちを出し切ろうとしていた北九州の攻撃陣でしたが、同時にゴールを決め切ることが出来ない不安もサポーターの多くが感じた時間帯であったのかもしれません。
(※後半15分時点でのゴール期待値は北九州が上回る。やはりこの時間帯にゴールを奪いたかった。そして(66)髙橋の交代と伴いゴールへの供給力が落ちている様子も窺える。)
スタメンの攻撃陣が一定のパワーを出し切ったと思われる61分に北九州は(10)永井に代えCF(18)渡邉颯太、(66)髙橋に代えRST(49)駒沢直哉を投入します。
この早い時間での(66)髙橋の交代については賛否が分かれそうなところです。彼自身のコンディションの問題はあるのかもしれません。予定されていた交代とも感じましたが、この交代の直前のシーンで右サイド全体の守備への切り替えが少し遅れていた点は気になりました。
よってこの交代はタイミング的にも妥当と考えました。(66)髙橋の交代の相手を(49)駒沢にすることで攻撃力を残す意図もあったと思います。
この後の北九州の攻撃について述べると、ボールサイドへ人を寄せる効果もあり(18)渡邉の落としとサポートの関係性は最近数試合と比べると改善されていたと思います。この時間帯から長野の攻勢が続くのですが、北九州からも追加点の匂いはまだしていたと感じました。
長野は左サイドからのクロスを蹴る位置の高さを変えながら入れてきていました。また持ち味の一つであるショートパスの交換から、左ポケットへの進入も交えており、北九州としては守りにくかったと思います。
67分に北九州は(29)高に代えて(17)岡野凛平を投入します。
(17)岡野がRST、(49)駒沢が左に回ります。
筆者はこの交代は試合のポイントになったと考えます。
この交代直後にRCB(4)長谷川光基の攻撃参加からチャンスをつくった北九州でしたが、自陣からの前進がロングボール主体でしたので、前線のターゲットが(18)渡邉一人になってしまった点が結果的に痛かったと思います。
おそらく前線プレス強度を確保する、そして自陣からドリブルによる持ち上がりを期待する意図が(17)岡野投入にはあり、その目的はある程度果たせていたのですが、スタミナが残っているのなら(29)高を残す方法もあったように感じました。
長野陣内でポイントを作りづらくなった北九州は徐々に攻撃の時間が減少し、長野に攻撃の時間を与え続けることになります。
この点はサッカーの難しいところであると思います。
結果的に北九州は自陣に退く時間が長くなってしまいました。
結局、最後の失点に関しても確率の問題と捉えることも出来るのです。
失点の局面の分析はもちろん大事ですが、試合全体でいかに相手の攻撃回数を減らすかがより重要と筆者は考えます。
そして、減らすためには自分たちの攻撃回数を90分通して確保する、増やしていくことを重視するという考え方も必要です。
そんなに難しい話ではなく「攻撃は最大の防御なり」と言うことです。
この試合のように退いて守り切る(退かされた)のであれば、(6)星のポジションに手当てが必要であったと思います。
結局そこに入れられる人がいない。
やはり(22)山脇不在や坂本の移籍が響いているのですが、RWBに(17)岡野を入れて走り回らせるという選択肢もなきにしも非ずであったかなとも思います。こう書いていて机上の空論でもあるなとも思うのですが。
一方で長身CB(13)東廉太投入により最終ラインの高さを補強するという手はあったのかもしれません。
(※終盤、長野の左サイドに有効な手当てが出来なかった点が悔やまれる。)
クロス対応自体は長野のクロッサーに対してよく詰めていた場面とそうではなかった場面の双方がありました。
最後の場面は(49)駒沢が詰めようとしましたが、長野の選手にブロックされてしまいました。こうした点は細かく追究していくしかありません。
しかし、攻め込まれ過ぎたことによって喫した失点と捉えます。
「鹿島る」に関しては、様々な試合を観ていますが、案外長時間キープ出来ているチームは少なく、逆にロストからピンチを招いているシーンを最近はよく見かけているような気がします。
コーナーフラッグ付近の狭いエリアでマイボールをキープし続けるというのは技術的にも肉体的にも案外難しいプレーなのかもしれません。
残り時間の過ごし方についても改善の余地はあると考えます。
3.まとめ
以上、長野戦を簡単にまとめました。
まず強調したいのは1週間の改善の効果はあったという点です。
一方で、勝点3を得るには足りなかったということです。
しかし、残り試合も減ってきましたし、この改善を継続していくしかないと思います。進むべき方向は間違っていないと思います。
6位以内に入れるかどうかは上位陣次第の面もありますが、まず北九州は目の前の1勝を挙げたいところです。
今月が正念場であると思います。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
※敬称略
【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
J1ファジアーノ岡山、J3ギラヴァンツ北九州レビュアー
レビュー作成が趣味を超えてライフワークになりつつある。
昨シーズンは岡山悲願のJ1初昇格のゲームを記すことが出来た。
今シーズンも初のJ1の舞台となる岡山、念願のJ2復帰へ向けて勝負に撃って出る北九州の戦いぶりを追っていく。
日々勉強、分析、解析、解釈、更に磨いていきたい。
岡山在住の開業社労士。今年も日常に追われるが、アウェイ遠征で鉄道旅を楽しみたい。2000年前後に北九州(市立)大学に在学。北九州は第2の故郷、未だに愛着は消えない。
