2026年4月4日(土)《GB》
《本日県立劇場で熊本大学と大学院の入学式が行われました。入学した皆さん、希望を胸に抱いて頑張ってください》
【熊本大学理学部棟:国本 佐輔・志摩 ミライ】
「隣空いてますか?」
「あ、はい。空いてます」
ある程度前方の席をキープしてボーッと説明会が始まるのを待っていると、知らない女性に声をかけられた国本 佐輔は少し驚きつつも軽く返事を返した。ここは熊本大学理学部棟。本日は午前中から熊本大学の入学式が県立劇場で行われており、今年熊大に入学する学生たちが新しい生活のスタートを切った。そして入学式は滞りなく行われ、午後からは各学部での入学説明会が実施されることになっている。県立劇場から一番近いのは薬学部がある大江キャンパスであり、次が医学部がある本荘キャンパス、そしてそれ以外の学部はかなり距離が遠い武蔵ヶ丘キャンパスに存在している。県立劇場までの交通手段は各学生に寄るのであろうが、午後には各キャンパスに移動して入学説明会に参加しないといけない。本荘キャンパスや大江キャンパスは比較的に移動がしやすいが、武蔵ヶ丘キャンパスは移動手段もかなり限られてしまう。そこで公共交通機関で移動する学生に対して、通常冒険者組織で使用しているシャトルバスを運行し、県立劇場から水前寺駅まで学生たちをピストン輸送したのである。そして水前寺駅からはJRに乗って武蔵ヶ丘駅まで移動。そこからは徒歩で熊大に向かうことが可能なのである。もちろん本日シャトルバスを利用することが出来たのは土曜日でもあるし、まだ大学の講義が開始されていないからという理由になる。
「ちょっと席を外すので荷物を見といてもらってもいいですか?」
「はい。見ているだけなら」
隣に座ったと思ったら何やら言葉を発した後、その女性はすぐに立ち上がって講義室の外に出ていき、軽く返事を返した国本は呆然としながらその背中を見送った。置かれていた荷物は白いバッグと赤いケースのスマホであり、どちらもテーブルに置かれている。そしてそのバッグには何故か名前札のような物がついており、それを見ると“志摩 ミライ”との記載があった。これが本名なのかどうか思案していると、先ほどの女性が戻ってきて隣の席に座った。
「ありがとうございました」
「いえ、何もしてないですよ」
笑顔でお礼をの言葉を述べた女性に、平静を装って国本が返事を返す。そしてこの後すぐに今後の理学部物理学コースのスケジュール等の説明が行われ、予定時間通りに説明会は終了となった。
「お疲れ様ー。あ、私は志摩 ミライといいます。よろしくお願いしますね」
「国本 佐輔です。よろしく」
軽く挨拶を交わした後、志摩はそそくさと講義室から出ていく。それを見送りながら国本は大きく背伸びをした後で、講義室から退出するために立ち上がったのであった。ちなみにこの後で国本はいくつかの事象について頭を悩ませる。1つ目はまず志摩が自分の隣の席に座ったことである。もちろん知り合いではないので隣に座る理由はない。ただ、今年の物理学コースの女性は彼女1人だけであり、他は全て男性である。どこに座っても隣は男性になるので、比較的人畜無害そうな自分の隣を選んだのかもしれない。そして2つ目は志摩が荷物を置いて席を立った時にスマホを持っていたことだ。すなわち机に置いていた物とは別にもう1つ所持していたことになる。もちろんスマホの2台持ちなどは今時珍しくもないだろうが、説明会中に何かを調べるときなどは席に置いて行った赤いスマホを使用しており、もう1つのスマホは戻ってきてからすぐに白いバッグに収納していた。何かの使い分けかもしれないが、気にしてしまうと気になってしまうものだ。そして3つ目。これが1番重要かつ厄介なことであるが、志摩のルックスがまさに国本のどストライクだったのである。
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