第35話 撤退する幕府軍
「四郎様、幕府の先遣隊が城門前まで押し寄せております! 敵に鉄槌を!」
村人たちに担ぎ出され、四郎は原城の城壁に立たされた。目の前には数千の幕府軍、四郎は恐怖でガタガタ震えている。
「……おじいさん、無理だよ……あんなにたくさん敵がいるよ! ……帰りたい!」
「四郎さん、手をゆっくり上に上げるのです。……今です!」
城壁の裏で伊右衛門が糸を引くと、あらかじめ仕掛けておいた大量の白い鳥たちが、四郎の背後から一斉に飛び出した。
「なっ……鳥を操るというのか!?」
驚愕する敵軍。さらに伊右衛門が足元で点火した色とりどりの煙が四郎を包み込む。
「……えっ、あ、あの! 皆さん、危ないからもう……どっか行って!」
四郎の震える叫びは、伊右衛門が用意した巨大な反響筒を通り地響きのような雷鳴となって平野に轟いた。
「神の怒りに触れる前に去れと仰っているのだ!」
勝手に通訳する村人たち。幕府軍の馬は暴れ出し、兵たちは「本当に神の子だ!」と震え上がって退却していった。
「……おじいさん、僕、どっか行ってって言っただけなんだけど」
「四郎さん、それが言霊というものですよ」
その様子を見て茶々は、勝利の美酒に酔いしれるようにケタケタと高笑いするのだった。
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