飲食店で原価を下げるためにできること|5選
この記事でわかること
・円安・インフレによる食材費高騰の現状と影響
・飲食店経営における「FLコスト(食材費+人件費)」の重要性
・原価を下げるための具体的な5つの方法
①仕入れ先を見直す
②商品の分量を見直す
③食材を変える
④同一食材でもメーカーを変える
⑤発注量を変える
・実際に「原価率30%→20%」に改善した事例とそのプロセス
・コスト削減だけでなく「経営の最適化」につながる考え方
1. はじめに — 円安・インフレ時代の「原価上昇」とどう向き合うか
ここ数年、飲食業界を取り巻く環境は劇的に変化しています。
特に、円安や世界的なインフレの影響で、食材費の高騰が止まりません。
たとえば、輸入牛肉や小麦粉、油類などの価格は過去数年で2〜3割上昇。
さらに2024年には「令和のお米騒動」と呼ばれるほど、国内の米価格も高騰しました。
物流コストや人件費の上昇も重なり、仕入れ価格は飲食店経営を直撃しています。
その一方で、価格転嫁には限界があります。
値上げすれば客数が減る、でも値上げしなければ利益が出ない——そんな板挟みの中で、多くの飲食店オーナーが悩んでいます。
では、この厳しい状況をどう乗り越えるか。
その鍵は「FLコストのコントロール」にあります。
2. 飲食店は「FLコスト」をコントロールすることが重要
飲食店経営における基本指標、それが 「FLコスト」 です。
これは Food(食材費)+Labor(人件費) の略で、売上に対してこの割合がどれだけ占めるかを示します。
一般的に、
FLコストは 55〜60%以内 が健全とされ、
70%を超えると利益がほとんど残らない構造になります。
しかし現実には、原価も人件費も上がる一方。
特に人件費は「人ありき」の商売である以上、安易に削ることはできません。
全国的に最低賃金は上昇を続け、2025年には東京都で 時給1,200円超え が現実味を帯びています。
そんな中で利益を確保するには、“下げにくい人件費”ではなく、“コントロール可能な仕入れ原価”に目を向けることが重要です。
3. 原価を下げるためにできること|5つの実践策
ここからは、実際に原価を下げるために行える具体的な5つの施策を紹介します。
① 仕入れ先を見直す — 「慣れ」から「比較」へ
多くの飲食店では、開業以来ずっと同じ業者から仕入れているケースが多いです。
信頼関係は大切ですが、定期的な見直しを行わないと「いつの間にか割高」になっていることもあります。
見直しのポイント
同一商品を 他社で見積もり比較 する
仕入れロットを増やして 単価交渉 を行う
まとめ配送・共同購入など 地域ネットワークを活用
特に最近は、オンラインで比較できる 業務用食材ECサイト(例:シェフマルシェ、Mマートなど)も充実。
発注フローの一部を切り替えるだけでも、数%のコストダウンが可能です。
② 商品の分量を見直す — “減らす”より“最適化”
「原価を下げる=量を減らす」と考えるのは早計です。
お客様の満足度を維持したまま、無駄な量を減らすことが大切です。
たとえば、
ご飯の盛りを 250g→220g に変更
トッピングの野菜を 季節野菜にローテーション
廃棄率の高い副菜を 別メニュー化して再利用
このように、見た目や満足感を損なわずに構成を見直すことで、原価を10〜15%下げることも可能です。
「お客様が本当に求めている満足感」を再定義することが、原価改善の第一歩です。
③ 食材を変える — 「代替素材」でコスパを取る
急激な値上がりが続く食材は、代替食材への置き換えも有効です。
たとえば、
牛バラ肉 → 豚バラ+自家製ダレでコクを出す
生クリーム → 植物性ホイップや豆乳ベースに変更
高価な国産野菜 → 冷凍・輸入・カット野菜を上手に組み合わせる
重要なのは、「安くすること」ではなく、**“価値を下げずにコストを抑える”**という発想です。
味の再現性やオペレーションを崩さない範囲で、柔軟に代替を検討しましょう。
④ 同一食材でもメーカーを変える — 「味×価格」の再評価
同じ「醤油」や「マヨネーズ」でも、メーカーによって 味・粘度・コスト が大きく異なります。
ブランド志向にとらわれず、**ブラインドテスト(比較試食)**を実施するのも効果的です。
ある店舗では、マヨネーズをA社→B社に変えただけで 年間10万円のコスト削減に成功しました。
“当たり前に使っているものを一度疑ってみる”ことで、思わぬ発見があります。
⑤ 発注量を変える — 「小口発注」から「まとめ発注」へ
発注サイクルを見直すのも、意外なコスト削減ポイントです。
特に冷凍・常温保存できる商品は、大量仕入れによるスケールメリットが効きます。
月2回発注 → 月1回にまとめることで 送料削減+単価交渉が可能
同系列ブランドや他店舗と連携して 共同発注
メーカー直送ルートを開拓して 中間マージンを削減
ただし、在庫過多にならないように「仕入れ→販売→キャッシュフロー」のサイクル管理も重要です。
4. 当店の実践事例 — 原価率30%→20%への道
当店(杉並区久我山)は、自社配達をメインとしたバーチャルレストラン複合業態を運営しています。
月商は650〜750万円ほどですが、2024年後半には円安・インフレの影響で原価率が30%に到達。
営業利益を圧迫し、黒字ギリギリの経営状態になっていました。
そこで、先述の5つの施策を軸に、約2ヶ月間の原価改善プロジェクトを実施しました。
改善プロセス
1.ジャンル毎にリスト化
ジャンルを
加工食品
野菜
魚
肉
包材・消耗品
分別し、ジャンル毎に商品、月の発注量、金額をリスト化。
2.ジャンル毎に相見積もり
ジャンル毎にリスト化した商品群をもとに、各ジャンル毎に3-5社問い合わせを行い、月の想定発注量や金額を出したリストを送り相見積もりを実施。
1番安価でサービスの良い業者を選定。
3.全体最適:シミュレーション
選定した業者の仕入れ価格を元に、月の発注量をベースに、仕入れ価格全体のシミュレーションを実施
総売上に対して、全体の原価率が何%になるかを把握
4.個別最適:業態やメニュー毎に原価率を計算し、分量を変更
全体最適によって原価率は30%から23%まで下がる見通しになりましたが、それでも目標の20%に到達できなかったため、個別に原価率を算出。
原価率が20%を超えている業態は分量変更、材料などの調味料変更を行い、それでも原価率が20%以下にならない場合、値上げで価格転嫁を実施。
結果、原価率は30%→20% に改善。
月間で約70万円のコスト削減に成功しました。
さらに、並行して行った「営業時間の最適化」も大きな成果につながりました。
他社のデータ分析の結果、午前の分の営業時間を11:00-15:00→10:00-14:00に変更することで、人件費は変わらず、1日あたりの売上を1-2万円改善することで、結果として人件費率の逓減も図ることができました。
単に原価を下げるだけでなく、「時間・人・コスト」の最適化を図ることで、経営体質そのものを改善を図りました。
5. まとめ — “下げる努力”より“整える努力”
原価を下げることは、単なるコストカットではありません。
それは、経営の筋肉を引き締めることです。
「仕入れ先を変える」「分量を調整する」「メーカーを変える」——
どれも一見地味な取り組みですが、積み重ねることで確実に利益体質が変わっていきます。
重要なのは、「下げること」ではなく「整えること」。
無理に削るのではなく、自店にとって最適な仕入れ・最適な価格・最適な営業体制を作ることが、持続的な利益につながります。
▽今日からできる3つのアクション
仕入れ先を1つ比較してみる
1商品の原価構成を可視化する
時間帯別売上をチェックして、ムダな時間を削る
たったこれだけでも、明日から数字は変わり始めます。
原価改善は「コストカット」ではなく、「経営再設計」です。
令和の飲食店が生き抜くために、今こそ“原価を整える経営”へシフトしていきましょう。
当社では仕入れ先の紹介やコストの見直しなどを行っております(無償)。
気になる方は、気軽にご相談いただければ幸いです。

