『名前を忘れたドラゴンと三日月の鍵、夜を売る屋台』
その屋台は街外れにひっそりと立っていた。
夜店の主と思しき男は、頭巾を被り緑色の瞳で通りがかる人を見ていた。
考え事をしながら歩いてた私がふと店の方を見た時に暗くひっそりとした屋台の奥から緑の光が漏れて来た。
私は誘われるようにと屋台に近づいた。
すると、くぐもったような声で
「お客さん、今夜の貴方は夜を何処かに置き忘れて来ましたね」と言われた。
何のことか解らずにいると
「お客さん、夜はね、忘れられると悲しみが溢れて貴方は此れから先、夜には眠れなくなりますよ」
私は驚いて「夜に眠れなくなる?それは困った。どうすれば良い」と聞いた。
屋台の男は、「今日は、お客さんと出会えて私は幸運だ。此の三日月の鍵を持ってお行き。そして、君の家のドアを開ければいい。其の後、その鍵を北斗七星に向かって放り投げてください」
「北斗七星の尾の部分に鍵が引っかかるのが見えたら、ユベールと叫んでください。」
「それは約束です。出来なければ鍵はあげません」
私には意味不明でも彼にとっては意味のある事だろう。深くは考えずに了承して家に帰りつくと家の鍵を開けてから、彼に言われたとおりに、思いっきり高く鍵を放り投げた。
三日月の鍵は見事に北斗七星の尾に引っ掛かり大きく輝き始めた。
空かさず「ユベール」と叫ぶと、あの街外れの屋台の辺りから眩い光が発せられ、黒いマントを広げた何者かが飛び上がるのが見えた。
マントは翼となり立派なドラゴンが現れると私の方へ向って飛んできた。
ドラゴンは、テレパシーで私の頭に信号を送って来た。
「有り難う、私の名前はリジョンドゥ。忘れていた名前を取り戻したので故郷へ帰れる」
「貴方の元へも夜が戻りましたね」
星空へと昇って行くドラゴンが小さくなると同時に彼の残した光も徐々に消えて行き、私の肩には静かに夜が降りてきた。
一寸、面白そうな企画、照れくさいけど参加させて頂きます。
