一番危なかったのは自分だった
あの夜、どうやって生き延びたのか
ガラスで足を貫かれたまま、
玄関で動けずにいた。
正直、
何が起きているのか分からなかった。
外では異常な音が鳴り続けていた。
風なのか、
何かが壊れている音なのか、
もう判断もつかなかった。
ただ、
「普通じゃない」ということだけは分かった。
その時、
チャイムの音と、
玄関を叩く音が聞こえた。
近所の人たちだった。
うちの周りは女性が多くて、
おそらく助けを求めて来たんだと思う。
でも正直、
自分はそれどころじゃなかった。
暗い部屋の中で動けずにいて、
外に出ることすらできなかった。
あの状況で外に出てきたその人たちの行動力に、
少し驚いたのを覚えている。
助けを求められていたはずなのに、
一番大怪我をしていたのは、
自分だった。
しばらくして、
レスキューが来た。
これで助かる。
そう思った。
でも現実は違った。
応急処置をしていたせいか、
優先度は低いと判断されたのか、
自分は後回しにされた。
その瞬間、
一気に不安が押し寄せてきた。
ここにいても、
誰も助けてくれないかもしれない——
そう思った。
このままじゃまずい。
そう感じて、
自分で病院に行くことを決めた。
足の痛みを無理やり押さえつけて、
なんとか車に乗り込む。
エンジンをかけた時、
少しだけ安心した。
でもそれも一瞬だった。
外は相変わらずひどい天気で、
雨と風の音が異常に大きい。
走りながら、
ずっと違和感があった。
「こんなにうるさいものだったか——」
そう思って、
バックミラーを見た。
そこで、
やっと気づいた。
後ろの窓ガラスが、
全部割れていた。
風と雨がそのまま車内に入り込んでいて、
まともな状態じゃなかった。
それでも、
止まるわけにはいかなかった。
痛みも、
怖さも、
全部後回しにして、
ただ必死にハンドルを握った。
あの時は、
「生きて帰れるかどうか」
それだけしか考えられなかった。
あの夜は、
本当に終わる気がしなかった。
