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BJを使い倒すというしたたかさ

夫が変だ。

いつもなら元気に「おはよう、朝だよー!」と起こしてくれる夫が、
今日は違った。
ただ一言、「会社に行ってくる」とだけ残して、
まだ外が暗い時間に家を出ていった。

私は知っている。
きっと農場がピンチなのだ。

昨日の夜、ソファでうたた寝して目を開けると、夫が通帳とパソコンを前に、曇った顔でじっと睨んでいた。私は気づかないふりをして目を閉じた。

その横顔を見て、胸がぎゅっと締めつけられた。

だって私は今、「Beauty Japan」という大会に挑戦していて、正直たくさんのお金を使っている。もちろん無駄遣いじゃない。必要経費だとわかっている。だけど…そんな夫の姿を見ると、どうしたって申し訳なくなる。

何より私が一番悔しいのは、農場の売上をまだ十分に伸ばせていないことだ。

SNSを活用しているつもりでも、思うような影響力は出せていない。
そして、料理をする人が日に日に減っていることを痛感している。

精肉はなかなか売れず、代わりにレトルトカレーやハンバーグのような“すぐ食べられるもの”が売れている。ありがたいことではあるけれど、加工品はコストがかさみ、在庫を抱えれば利益は薄い。

本業が、揺らいでいる。
それでも私は、Beauty Japanと両立させようとしていた。

でもね、両立なんて無理なんだ。

「あいうえお」を早口で言うのも、「12345…」を数えるのも、子どもでもできる。だけど「あ1い2う3え4…」と交互にやると途端に遅くなる。

同じこと。両立を狙えば、どちらも中途半端になる。

だから私は決めた。

【Beauty Japanに全振りする】

社員たちはこう思うかもしれない。
「紀子さんは有名になりたくて出てるんだ」と。

いや、違う。全然違う。
できれば私は顔なんて売りたくない。子どもを叱ったり信号を渡り損ねたり、そんな日常で知らない人に評価されるなんて面倒だから。

それでも、前に立つのはスタッフの顔を売りたいからだ。
真剣に農業に向き合うあの姿を、私は心から尊敬しているから。

本気の彼らに、アンチの言葉なんて絶対に浴びせさせない。

だから私は立つ。
2000人の前で渾身のプレゼンをして、たった一人でもいい、その心を震わせる。

その一人が「足利マール牛を食べたい」と思ってくれたら、
「農業をやってみたい」と思ってくれたら、
農業が“なりたい職業”になる未来がくる。

そして、多くの家庭の食卓が幸せで満ちて、日本が豊かになる。

そんな未来を、私は信じている。

あと48日。
私は、全身全霊で走り抜ける。


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