1人追いかけ再生工場① 『全部更年期のせいだ』
「ちょっと、神田さん。またですかぁ?これだから、仕事覚えるの遅いおじさんは。ブツブツ」
「すいません!」
店長の佐藤はいつもネチネチと嫌味を言ってくる。それもこれも私がミスをするからなのだが、このオバサンはほんとにうるさい。多分あれは更年期のせいだ。
近所のスーパーでパートを始めて3ヶ月。まだまだ仕事に慣れず、こうやって一日3回は佐藤の小言が飛んでくる。
「まだ慣れないでしょうし、仕方ないですよ。私がフォローします!」
溜まったカゴを回収するついでにわざわざ優しくフォローしてくれるのは木戸さんだ。
木戸さんはいつも優しい。
大学生のアルバイトで、もう1年ほどこの店にいるらしい。
50手前のこの歳になってスーパーでパートを始めた私が右も左も分からない頃からさりげなくサポートしてくれていた。この仕事の唯一の癒しだ。
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その日の仕事が終わり、休憩室でお茶を飲んで一息ついていると、ガチャっとドアが開いて木戸さんが入ってきた。
「あ、神田さん。お疲れ様です」
「木戸さん、お疲れ様。今日もありがとうね。」
「ほんと、店長は言い方良くないですよね!神田さん、一生懸命やってるのに」
「ありがとうね。おじさん、その言葉で一日の疲れがふっとんじゃうわ。」
「良かったです。神田さん、カッコイイから店長もイジワルしてくるんだと思います。」
「え?今なんて?」
「なんでもないです!お疲れ様でした!」
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それから私は木戸さんのことを意識し始めた。
お客さんに声をかける時のとびきりの笑顔。
「ありがとうございましたー」の声。
通り過ぎる時にふわりと香る優しい石鹸の香り。
ああ、木戸さん。抱きしめたい。
木戸さんのことを思いながら仕事をしていると、佐藤のネチネチ口撃も気にならなかった。
あっという間に仕事の時間が終わる。
休憩室でお茶を飲みながら彼女を待っている。
でもあれ以来木戸さんは休憩室に来ることがない。
仕方なく私は妄想にふける。
「神田さん、私冷凍室にずっといたから体冷えちゃった」
「木戸さん大丈夫かい?
あ、ほんとに手、めっちゃ冷たいじゃないか!
何か温かいもの。。ないな。すいません、これで良いですか?」
「え、神田さん。そんな、急に後ろから抱きついてくるなんて……。」
「イヤ……でしたか?」
「ううん、そうじゃない。……神田さん、あったかい」
私の妄想は止まらない。
お茶が冷たくなるまでたっぷり妄想して帰ろうとすると、佐藤がこちらを冷ややかに見ているのが視界の端に見えた。
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今日もパートだ。木戸さんに会えるのが楽しみで仕方ない。
ウキウキしながら準備をしていたら、犬に餌をあげながら妻がこちらも見ずに言ってくる。
「あなた最近楽しそうね。私がこんなに毎日大変なのに!ほんと、会社クビになっちゃってこれからどうしたら」
「そんなピリピリするなよ。更年期のせいじゃないか?」
「更年期??はあ?なんなの、あなたは!ブツブツ」
妻の小言を背中に受けながら今日も私は公園で妄想の世界に飛び込む。
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「ねえ、あのおじさん、ベンチでニヤニヤしてて怖いよママ」
「見ちゃ行けません!」
本田すのうさんが企画され、大いに盛り上がった下書き再生工場。60個もネタがあります。
私もいくつか参加して、はい終わり、でもよかったのですが、この企画に1人で挑戦している方がいらっしゃいました。
スナックゆったん@路地裏9番地さん。
千本ノックと一緒で、60個書き上げてレベル上がったら、会心の一作が出せるのでは?とジャンプ的発想でこの狂気に挑戦されてます。
これは私の変態道に通じるわ、と思いました。
そして、続けるかはわかりませんけど私もゆるりと追いかけようかなと思い始めました。
ということで1本目です。
最初主人公をおばさんにして、浮気するのも更年期のせいだ、って話にしたんですが、なんだかしっくり来なくて結局ヤバいおじさんをまた1人世に解き放ってしまいました。このままだと60人の変態が誕生するかもしれません。
今日の勝手に紹介記事はこちら。本田すのうさんです。
ショートショート、どんどんうまくなったはります。多分勉強してるんだろな😊
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サポートいただきありがとうございます😊嬉しくて一生懐きます ฅ•ω•ฅニャー