なら、なんではいったんじゃい!!となった時の話
大学4回生の春だった。
みなそれぞれ、どこかしらかの研究室に配属される。
春と言えばお花見。京都の鴨川沿いの桜は美しい。新4回生の歓迎会と称して、わたしの入った研究室も、毎年花見でBBQをするのが恒例だった。
配属された同期は、私を含めて4人。
T君とT君、あぁイニシャルだと区別できない。天然キャラの”天T”と、真面目キャラの”まじT”としよう。その2人と、紅一点、Iさんの4人。
歓迎会と言っても、有志の先輩主催のBBQだから、教授は来ない。気楽なものだ。
ちなみに教授は酒を飲まない。飲み会で居酒屋に行くと、コース料理の締めのうどんを最初にオーダーするような人だ。しかも、きしめんにチェンジできないか確認する。全く、教授ってどこまで偉いんだろう。まぁ、きしめんチャレンジに成功してるのは見たことがないが。
とにかくBBQは、教授もいないし、お局のおばちゃん講師もいない。フレンドリーな助教を筆頭に、ノリの良い先輩達だけで、とても盛り上がった。
🌸🌸🌸
つつがなくBBQは終了。すると博士課程1年の先輩が「そろそろ後片付けやなぁ。鉄板洗ってきて」と指示を出した。
洗ってきて、と言われて周りを見渡してもそこは鴨川沿い。水場はない。いや、水はある。
すると、勝手がわかっているひとつ上のY先輩が鉄板の片方を持とうとしている。
さすが先輩、動きが早い。
結構大きな鉄板だったので、天T、まじT、そして私とで四隅を持つことになった。
4人でエッチラオッチラ川に向かう。
と、ここで予期せぬアクシデントが起こる。
Y先輩が止まらないのだ。
土手と川の境目はぬかるんでいて、重たい鉄板を持っていると、足元が沈む。
沈むと靴が濡れる。
最近、新調したばかりのスニーカーが濡れちゃう。
それでもY先輩は止まらない。
「ちょ、先輩!濡れますって」
Y先輩は、川向うの1点を見つめて前に進む。
川の向こうに限らず、まわりでは花見で盛り上がっている集団が沢山あって、その中で、今まさに川に突っ込もうとしている、異様な4人組。
ばしゃばしゃ
非常に地味な音を立てて、Y先輩は静かに浸水した。
「ちょいちょいちょい!!先輩止まって!!なにしてんすか!?」
3名が喚くが、Y止まらず。
Yと並んで前方にいた、天Tも当然浸水している。
表情は……『無』だ。
入りたくない。入りたくないが、今手を離すと重い鉄板が落ちて大惨事になる。怪我はマズイ。でも濡れるのもマズイ。どうしよう。
後ろを振り返ると、先輩たちがゲラゲラ笑っている。
横を見るとまじTが、諦めた表情で『無』になっている。
じゃばじゃば
浸水。
「鉄板濡れるからあっちに置いといて」
全員が浸水したのを確かめると、Y先輩が予想外のことを言う。
「川で鉄板洗ったらあかんやろ?」
なら、なんではいったんじゃい!!
そこからは仕事が早かった。
我々は汚れた鉄板そっちのけで、川で水をかけ合った。男4人で。
川の中で腕立て伏せをした。
男4人で。
土手の上から、子供に指をさされても気にしない。
21年生きてきて、子供に笑われ、親に「見たらあかん」と言われたのは初めてだったが気にしない。
そのあと、鉄板は優しい女性陣が洗ってくれました。
なんのはなしですか
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