あなたと一緒に生きていく (ショートショート)
高校3年間、わたしには好きな男の子がいた。
タカシ。
幼稚園からの幼なじみで、昔はよくお互いの家を行き来して遊んだ仲だった。
小学生になってからは、なんとなく顔を合わすのが恥ずかしくなった。
それでもタカシの飼いネコのハナが懐いてくれたから、ハナと遊ぶ口実で、たまに彼の家に遊びに行った。
中学二年の時、突然ハナがいなくなった。
と同時になんとなく気まずくなって、それ以来タカシとは遊ばなくなった。
離れてから、タカシを目で追うようになっていた。
最初は自分でも気が付かなかったけど、これが恋なんだと知った。
知ってからは、いとしくて、せつなくて、でもどこか心強くて、篠原涼子の曲を聞いて眠れぬ夜をたくさん乗り越えた。
高校3年生になって奇跡が起きた。
タカシと同じクラスになって、一緒に図書委員になったのだ。
彼と話すきっかけがまたできた。
放課後、一緒に本を整理しながら、たわいない話をして毎日過ごした。
幸せだった。時間が止まればいい。本気でそう思った。
でも、卒業と同時にわたしたちの人生は大きく変わる。
そう、文字通り変わるのだ。
卒業式の日の夜、日が変わるとわたしたちは生まれ変わる。
何に生まれ変わるのかは、サイン帳に書いてある。
タカシが書いたものもこっそりチェックした。
大丈夫。
明日からも私たちは一緒にいられる。
🌸🌸🌸
「タカシ……卒業だね」
「おぉ。高校卒業と同時に人間も卒業かぁ。明日から新しい生活だな」
「そうだね。タカシは何になるの?(知ってるけど)」
「おれ?聞いちゃう?しょうがねぇな。幼なじみだから特別教えてやるよ」
「えぇ、えらそう!!どうせこの後、サイン帳交換したらわかるのにぃ。で、なんなのよ?(だから知ってるのよ)」
「パン」
「え?」
「パンだよ。おれさぁ、実はミキちゃんのこと好きでさ」
「え!?(それは聞いてない)」
「彼女、焼きそばになるんだって。だから、おれ、彼女と一緒に焼きそばパンとして生きていこうと思って」
「そ、そうなんだ。ミキのこと……好きだったんだ。あ、あ、えと……えぇ!!そうなのー??しらなかったぁ!!なんだよー!!今まで言えなかったなんて、タカシ意外と小心者だなぁ!」
「う、うっせぇよ。お前は何になるんだよ?」
「ないしょ……言わないよ」
「なんだよー。まぁいいや。とりあえず日が変わったら告白してさ、おれたち焼きそばパンになるから!お前も元気でやれよ!」
「うん。そだね。元気でね」
🌸🌸🌸
それからのことは覚えていない。
どうやって家に帰ったのか。
あんなに楽しみだった卒業式なのに……。
もう……どうでもいいや……。
時計の針は無情にも12時になり、私の体は白い光に包まれた。
🌸🌸🌸
『ライン🎶』
深夜2時のLINE通知音が、静かな部屋に鳴り響く。
あ!タカシだ!!
「おいー!!聞いてくれよ。ミキちゃんさぁ……マサとくっついたんだよ……泣」
「え?どうゆうこと?焼きそばパンは?」
「オムそばだってさ」
「へ?おむそば?」
「そうだよ。マサのやつ、卵になったんだけど、ミキちゃん、卵に包まれたいって……!!ひどくない?おれ、切り込み入れて待ってたのに!!」
それからしばらくタカシの愚痴を聞いてスマホを置いた。
鏡に映った自分の姿を見てため息をつく。
赤いつぶつぶの新しいわたし。
そう、わたしはイチゴジャム。
パンのあなたに合わせるために、ジャムになったのに。
イチゴジャムパンにしちゃいなよ……なんて今さら言えないよ。
(おわり)
今週も参加しちゃいました!
新しい遊び場を見つけてしまった✨️
ヤスさん、楽しすぎます✨️✨️✨️
今週の3つのお題は、
・サイン帳
・焼きそばパン
・深夜2時のLINE通知音
でした。
このあと、ミキちゃんは、タイガくんとモダン焼きになって、修羅場になったとか。
全く、奔放ですね。

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