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【ショートショート】ハトバスツアー

「どちらのツアーに申し込まれますか?」

「あぁ、おすすめを知りたいんですが……」


ここは家の最寄り駅にある旅行会社の受付カウンター。
最近仕事が忙しくて、気晴らしに日帰りでどこか行こうと考えた。

でも、いざ旅行会社に来てみると、ズラリと並ぶパンフレットに圧倒されて、どれがいいのか自分で決めきれない。


そこで、おすすめを聞くことにしたのだ。


「少々お待ちください」


窓口の若い女性スタッフはそう言うと、奥に行って上司風のおばさんと何やら話をしている。
眉をひそめながらこちらをチラチラ見てくるのが少し感じが悪い。


すると、相談が終わったのかスタッフは1枚のリーフレットを持って戻ってきた。


「こちらなんていかがでしょうか? ハトバスが主催するミステリーツアーでございます」

「ミステリーツアー?」

なんだろう。ミステリーは好きだから、ちょっとワクワクしてきた。

「はい。どこにいくか分からない。何をするかも分からない。秘密のツアーでございます。大変人気があるんですよ」

なるほど。おもしろそうじゃないか。それにしても、もう少し笑顔で接客して欲しいな。ずっと堅い表情のこのスタッフは苦手だ。


「ありがとうございます。これにします」


よし、とにかく週末が楽しみだ。


🚌🚌🚌💨


旅行当日の朝、指定されたバス乗り場にやってきた。


よく見る黄色いバスだが乗るのは初めてだ。
乗り場の横にいるスタッフに名前を告げ、座席の番号を教えてもらう。15のCか。通路側かな?



バスのステップを登って中に入るとギョッとした。




既に乗り込んでいる乗客たちがみな動物の顔をしているのだ。

なにより運転手がハトだ。いや、正確には顔がハトの人間だ。

制服を着て、頭に小さな帽子をちょこんと乗せたハトの顔をした人間がこちらを見ている。


プシュー



大きな音が背後からして振り返るとドアが閉まったのだった。


「お客さん、早く座席に座ってくるっくー」


ハト運転手にじろりと睨まれ「すいません」と奥に進む。なんでハトに謝ってるんだおれは。


座席はほぼ満席で、15のCはすぐに分かった。

となりにはトラが座っていた。
顔がトラ、首から下は黒のワンピースだから女の人だろうか。

それにしても、こんな間近でトラを見ることになるとは。いや、迫力がすごい。でも近くで見ると毛並みが美しい。

トラと目が合って、ジロジロ見過ぎていたことに気付く。途端に気まずい気持ちになり、「となり失礼します」と席に着いた。


「おみかん召し上がる? それともバナナがよかったかしらぁ?」

喉をぐるぐる言わせながら、トラの人は優しくはなしかけてくれた。その手にはミカン。どんだけ優しくてもトラだしちょっと怖い。
でもトラを怒らせたくはない。「ありがとうございます」と言って笑顔を返した。



🚌🚌🚌💨


「そろそろ目的地にとうちゃくするっぽー」


ハトの運転手からアナウンスがあり、バスは巨大な門の中に入っていく。


周りにはゾウやキリンなどの動物……の顔をした人たちがウロウロしている。


なんだここは?

周りの乗客たちも窓の外を見てざわざわしている。



バスが止まると作業服の男たちが乗り込んできた。
彼らはおれの知ってる普通の人間だ。


「ったく! 勝手に逃げ出しやがって。はやく園にかえるぞ!」


突然声を荒らげる作業服のおじさん。

なんのことか分からない。


「ちょっと! 何を言ってるんですか? ここはどこですか? 園ってなんなんですか?」

パニックになっておじさんに話しかけると、

「キーキーうるさいサルだなぁ」


と露骨に嫌な顔をされた。




その時窓ガラスを見てギョッとした。


そこに映る俺は────確かにサルだった。






よしまるさんの企画におかわり参加します。


コメントのやりとりで、10作品でもいいですよ、と言われました。いやいや10は無理やろって思ったけど、同じ題材で色々とショートショート考えるのも練習になるな、と思い直しました。

なので、書けるだけ書いてみたいと思います🥹
よしまるさん、よろしくお願いします☺️


#あなたの旅ショートストーリー

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