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悔しいね、しか言えなかった。

「なにもおれ悪くないのに……」

 そう言いながら、ソファの足に背中を預けてぽろぽろ涙をこぼす長男。

 彼には大切な友達が1人いる。U君だ。

 そのU君にゲーム内でフレンドを一方的に切られたという。



 頭に血が上ると癇癪を起こして相手に気持ちをぶつけてしまう。正直すぎるがゆえに、人とぶつかってしまう。そんな長男の特性を理解して、受け入れてくれる友達なんてそう簡単に出来るものじゃない。大人でも、親でも難しいんだから、小学生なら尚更だ。


 だけどU君は、辛抱強く長男と仲良くしてくれていた。


 長男が学校に行かなくなった四年生からの二年間、公園で遊んだり、家に何度も遊びに行かせてもらう仲だった。五年生に進級するときも、「仲のいいお友達がいたら同じクラスになるよう、なるべく配慮します」と学校の先生に言ってもらって、迷わずU君の名前を伝えていた。


 それくらい長男にとっては頼みの綱だったU君。


 学校にも行かずスマホもない長男にとって、U君との唯一の連絡手段はゲーム内のチャットだった。
 フレンドを切られたというのは、連絡手段を失ったこととほぼ同義だ。


 もちろん、家まで行ってピンポンするか、ポストに手紙を入れて気持ちを伝えることは不可能ではない。でも、やっぱりそれは長男にとってかなりハードルが高いようだ。


「どうしてフレンドきったの?」


「おれ、なんか悪いことした?」


 聞きたくても伝えられない。

「U君と離れてもいいの?」と聞くと、ふるふると首を横に振る。その度なみだがこぼれおちる。


「悔しいね」


 そうして口に出すと、ほんとに自分も悔しくなって、胸がぎゅうっとしめつけられた。



”うちの子、ちょっと繊細だけどいいところたくさんあるんですよ。たまに言葉は強くなるけど、ほんとはとっても優しい子なんです。怒った後は必ずひとり黙り込んで後悔してるんですよ。大きくなってきて、前よりも相手の気持ちを黙って聞けるようにもなったんです。だから。だから。仲良くしてやってください。彼のこと、よく見てやってください。”



 ほんとは、この気持ちを長男が関わるひと全員に言って回りたい。まだ自分の言葉で自分の気持ちを表せない長男の代わりに、親である自分が伝えたい。ねぇ、聞いて。ちゃんとわかってやってよ、って思う。



 だけど……それはしない。



 ぽろぽろ泣く長男を前に「悔しいね」って声はかけたけど、その場では一緒に泣かなかった。今これを書いて泣いてしまってるけど。
 一番悔しい思いをしているのは長男だから。そして、この経験から、次にどうしたらいいのか自分で考えて欲しかったから。


 いつまでも横に自分がくっついて、長男の前にある壁を壊していくことはできない。


 彼自身の力で切り開いて行ってほしい。


 きっと、それって簡単ではない。
これからも色んな「悔しい」とか「悲しい」とかをたくさん経験するんだと思う。




 パパもね、そうやって大人になったんだよ。
だけどね、「悔しい」とか「悲しい」ばかりじゃないんだよ。君が自分の頭で考えて、もがいて、諦めなければ、きっとその先には「嬉しい」出会いが待っている。



 今は「悔しい」だね。パパも悔しいよ。
何もできない。何もしない自分にも悔しい。もっと君のために何かできたんじゃないかって思う。


 でも、信じてほしい。「嬉しい」はやってくるから。きっと、大丈夫。



 ほんとの君は「悔しい」をちゃんと乗り越えていける強さを持っているって、パパ、信じてる。




なんのはなしです家






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