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【エッセイ】 電車に乗らないのに毎日通った駅(三条京阪駅)

大学時代、電車に乗らないのに毎日通った駅のことを忘れられない。


──京都の三条京阪駅。


京都市内を南北に走る京阪電車と、滋賀から直結する地下鉄東西線が交わる駅だ。
有名な寺社仏閣の並ぶ東山地区に面していて、祇園や四条河原町などの観光スポットにもほど近い。とにかく利用者はとっても多い駅だった。


そんな人通りのめちゃくちゃ多い駅で、本来の駅としての機能を使わず(電車にも乗らず)自分は何をしていたのか?









い、イチャイチャしてました(照)。



え?



いや、その、人目も憚らずですね、当時の彼女とイチャイチャ(ハグやキス)していたのです。
それこそ毎日のように。



そう、引くよね。引いちゃうよね。だって自分でも思い出して引いてるもん。


念の為言っておくが、私も彼女もザ・日本人だ。

なんなら、別れの挨拶は「バイバイ」じゃなくて「ほなね」と言う位にはコテコテの関西人だ。
日常的にハグやキスをする文化圏ちゃいまんねん。


空港や駅のホームで涙を流しながら、「またね」と抱き合う二人をたまに見かける。

あれはきっと、遠距離恋愛か何かで、次に会えるのは半年後か1年後とかで、「またね(毎日連絡してね。無理しないでね。今日楽しかったよ、ありがとう。大好きだよ。会わない間に浮気とかしちゃダメだぞ。やだ、やっぱり離れたくない。このまま一緒にいたいよ。寂しいよぉぉぉぉぉ)」の「またね」だと思っている。

だから二人の世界に浸っているカップルを見ても「うんうん、寂しいよね。二人ともがんばれ」と思えるのだ。



一方でうちらは京都と滋賀の近距離恋愛だった。
駅で別れてもまた次の日には大学の教室で顔を合わせる。それなのに毎日ハグ&キッス。



最初は三条京阪で抱き合う我々を見て、「がんばれ」と応援してくれていたサラリーマンも、次の日も同じ二人を見たら「おや?またかよ」と二度見するようになり、それが1週間も続けば軽い舌打ちに変わっただろう。いつしか『三条京阪のバカップル』として珍百景認定されていたはずだ。


あーやっぱり恥ずかしい。若気の至りってなんて酸味が強いんだ。どうして毎日会えるのにあんなに別れが寂しかったのだろう。どうして親にすら「ダサい」と言われていたトレーナーの色違いいろちペアルックコーデで街を練り歩けたのだろう。どうしてメールでは赤ちゃん言葉だったんだろう。どうして。どうして……。



そんな『三条京阪のバカップルS K  B    』は決まって100円くらいのお菓子を買って、駅で立ったまま二人で食べるのだった。食べ終わると別れの時間が来ちゃうから、後半はチビチビとゆっくりクッキーをかじる。なんとも質素なデートだが、あの味が、あの時間が最高に幸せだった。


ある日、別れるのがあまりに寂しくて彼女の乗る電車に一緒に飛び乗ったことがある。彼女は滋賀の田舎の方に住んでいたので、片道1時間以上かけて向こうの最寄り駅まで付いて行った。


結局、そこで別れる方がよっぽどつらかった。
帰りの電車に1人揺られるのもこれまた寂しすぎて、三条京阪でバイバイするSKB生活に戻った。



当時の私にとって駅は単に「どこかへ行くための場所」ではなかった。


そこは「誰かの住む場所」との境目であり、交わった線が2つに分かれる場所だった。



あの時間、あの二人だったからこそ、刻まれた数々の記憶──。


あれから二人は別々の道を進み、もうSKBが結成されることはない。だけど三条京阪駅に降り立てば、あの時の甘くてほろ苦いお菓子の味と、なんとも言えない寂しさが胸を打つのだ。







#この駅がすき
#ekinote

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