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1人追いかけ下書き再生工場⑮ 『8周目の人生を生きてます』

【1周目】

ピピピピ
スマホのアラームが鳴って目が覚めた。

半分寝ぼけながら歯ブラシをくわえトイレへ行く。トイレで歯磨きはやめなさい!ってよく母親に言われたなぁ。でも長年の習慣は変わらない。
便座に座って用を足すと、洗面所で顔を洗った。朝食はトーストとコーヒー。咀嚼するうちにだんだん目が覚めてきて、最後のコーヒー1口で気合を入れる。いつもと全く変わらない朝。

よしゃ!今日も仕事がんばるか!

職場は自宅から自転車で30分。雨の日はバスも使うが今日は雨は大丈夫そうだ。

「いってきます」 誰もいない玄関でつぶやく。これまたいつも通りの朝の習慣。











玄関を出てからきっかり10分後、おれは目の前に現れたダンプカーに押しつぶされていた。享年28歳。あっけないもんだぜ。


【2周目】

ピピピピ
スマホのアラームが鳴って目が覚めた。

半分寝ぼけながら歯ブラシをくわえトイレへ行く。

はたとここで気が付いた。
あれ?さっきでっかい車に轢かれたよな。

夢だったのか?

夢にしては随分痛みがリアルだった記憶がある。パジャマの裾をまくりあげると、果たしてそこには痛々しい傷の治療痕があった。 やはりあれは夢なんかじゃなかったんだ。だとしたら、これはなんだ?また事故が起きる前に時間が巻き戻ったのか?いやいや、怪我の跡がある以上、巻き戻ったというよりはもう一度繰り返しているというべきか。

これはよくマンガや映画でみるタイムリープってやつじゃないか?知らんけど。だとしたら、昨日と同じように仕事に行くのはまずい。
時間を変えるかそれともバスを使うか。
いや、あぶないところだった。全部引っ掛け問題だ。ここは家にステイ一択!家から出なけりゃ無問題モーマンタイでしょ。












家でくつろぎながらゲームをしているとついつい寝てしまった。その間にマンションの下の部屋から火が出て瞬く間におれの部屋も全焼。享年28歳。あっけないな。


【3周目】

ピピピピ
スマホのアラームが鳴って目が覚めた。

半分寝ぼけながら歯ブラシをくわえトイレへ行く。

はたとここで気が付いた。
あれ、火事で丸焼きになったよな。

目を閉じると自分の体が焼ける匂いや部屋が崩壊する音まで聞こえてくるようだ。

思わず洗面所に走り鏡を見る。

やっぱりだ。俺の顔には痛々しい火傷のあとがくっきりと残っている。

そうか。家にいてもダメか。特に理由が固定されているわけじゃないということはどこからでも狙われる可能性があるということだ。どうする?どこに行けばこのバッドエンドから逃れられる?そうだ。おれ頭いい!人混みだ。たくさん人がいる場所ならきっと大丈夫。こんな馬鹿げた運命おれ以外にいないだろ。












急いで出かける支度をしたおれは律儀に会社に年休取得の連絡を入れ、自転車に飛び乗って近くのショッピングモールに向かった。久しぶりに入ったホビーショップで堕天使モエ☆キュンのフィギュアを恍惚の表情で何枚も写真におさめていると、脇腹に痛みを感じて倒れた。夢中で気が付かなかったが、突如現れた頭のおかしい通り魔にナイフで刺されたようだ。享年28さ……ってもういいわ!!



【4周目】

ピピ
スマホのアラームが鳴り始めると同時に目が覚めて立ち上がる。


流石に理解してきた。脳内にはぶっ倒れたおれを見つめる堕天使モエ☆キュンのつぶらな瞳が焼き付いている。脇腹を見ると新たな傷ができていた。なるほどな。人が多い場所なら回避出来る訳ではないということか。おや。閃いたぞ。今まで交通事故、火事、通り魔。全て原因は人だ。そうか、人がいないところに行けば助かるかもしれない。






それから2時間後。おれは山を登っていた。普段ゲームばかりで体力不足が悔やまれる。登山が好きな人の気持ちが全く理解出来ん。家でのんびりゲームしてる方が楽しいでしょ。あれ、おれ何でこんなことしてるんだっけ?そんなことを思ってふと空を見上げると見たことの無い空色に驚く。ん?赤?まだ午前中なのになんで……いや、そんな事より


なんだあれは!?



上空から赤黒く揺らめく大きな物質の塊、いわゆる隕石というものが落ちてきた。おいおい、NASAでも自衛隊でも地球防衛軍でもいいから助けてくれよ!の思いも虚しく享年28歳。山がえぐれて大きな窪みになったぜ。やれやれ。



【5周目】

人混みもだめ。山に逃げてもだめ。もはや地球を壊してでもおれを消しに来る何か大いなる存在がいるらしい。もう疲れたな。今日一日を既に5回も繰り返しているのか。何も考えたくない。

ぼんやりとパジャマ姿のまま玄関を出た。エントランスにある5段ほどの小さな階段に腰掛けてスマホをいじる。やっぱりモエ☆キュンさいこうだなぁ。フィギュア買いに行くか?いやいや、さっきそれで刺されたんだよ。じゃあ今公開中の『劇場版 堕天使モエ☆キュン モエモエパワーでみんな私のトリコにしてあげる』を観に行くか。いやいや、もう5回観たしこれ以上トリコにはなれないゴッドトリコにこの前なった(というひとり遊びをした)じゃないか。




フォン!




おれの楽しい脳内会議に聞きなれない音が割って入ってきた。

なんだぁ?


目線をあげると、空中に黒い点が浮かんでいる。
黒い点と目が合って見つめていると、黒い点はその下品な口をだらーんと大きく開くかのようにまあるい大きな円となった。



ひひひぃーーん!!!



今度は明らかに知っている音。いや、実物は聞いた事がないが、よく時代劇とかで聞く馬のいななきが聞こえてきた。というか出てきた。え?何がって?馬だよ。馬とそこに跨る鎧姿の戦国武者だよ。






殺気




これまで生きていて初めて感じた感覚。
1ミリも体を動かせない。完全に固まってしまったおれは為す術なく名前も知らない戦国武将に真っ二つにされた。享年28歳。


【6周目】

マジかよ。何でもありか。まさかタイムリープする世界に武将がタイムトラベルで飛び込んでくるとは。え?大丈夫?時空警察大忙しじゃない?よく知らんけど色々時間の法律破ってそうじゃない?そもそも武将って目の前に現れるもの全て切るの?ちょっとは考えた方がいいよ。まじで。脳筋すぎるて。


はぁぁ。もうやだ。
どうやっても結果は変わらない。
実際毎回痛みと傷跡は残るし。そろそろ痛みが原因で〇にそう。もう結末が変わらないなら今日を最大限楽しむしかないな。


おれは部屋に戻ってタンスに大事に隠していた5万円を手に握りしめ、風俗街へと向かった。人生最後に来たかった場所!そうだよ。ここがゴールだったわ。

とりあえず朝から営業してる店をなんとか見つけ、受付で高らかにおれの好みを伝えた。
顔は伊東美咲で、身長が170以上。スレンダーだけど胸は大きくて、おしりは小さめがいいかな。そして何より献身的でトークのうまい嬢頼んだYO!!


かしこまりました。


そして出てきたのは確かに身長170越え(いやもしかしたら180越えてない?)のでっかいオバサンが出てきた。ふっふっふ。童貞にとっては想定の範囲、ってか上出来だぜ。さぁ、最高の1時間半を楽しもう!レッツパーリィー!!



と、その瞬間部屋の天井や壁がドリフのコントのように崩れ落ち、眩い光の中辺り一面が無に帰した。おれが店に入るころ、隣国から核弾頭を積んだミサイルが発射されたらしい。享年28歳。童貞のまま乙。



【7周目】

ここまできたらだんだん諦めの境地に達してきた。自覚はなかったけどこの28年、もっと徳を積むべきだったということかな。確かに特に誰の役に立つこともなくダラダラと過ごしてきたのは間違いない。わかったよ。今日はいいことをしよう。そう言えばゴミ拾いをすると運気があがる、みたいなのを聞いた事があるな。人生最後の日に運気もくそもないとは思うが、とにかく拾おう。そうしよう。



一生懸命ゴミを拾いながら、無意識に普段会社に向かう道を進んでいた。そしてとある交差点に差し掛かり、あっと思った時には大きなダンプカーが目の前だった。享年28歳。これ最初にやったやーつ。



【8周目】

今一度落ち着いて周りを観察しよう。
確かに毎日同じ朝の過ごし方をずっとしている。何か変えるとしたら、、、

あっ!テレビか?普段ほとんど見ることはないが、一昨日のM1グランプリは面白かった。エバース面白かったのになぁ。残念だった。おや?今日何日だ?24日?クリスマスイブ?エバースのネタ?あれ、何だこのモヤモヤは。



しばらく考えてようやく思い出した。
そうだ、ちょうど10年前、高校卒業前のクリスマスイブ。
クラスで仲良くしていた幼なじみのミキ。


「お互い10年後に彼氏彼女がいなかったら高校の門の前に集合な!もしそこで再び会えたら、結婚しよう」


「いいね!面白い!まあ、私はその頃子供2人くらいいる かーちゃんだと思うけどね!」




そーだった!

すっかり忘れてたけど、そんな約束をしていたんだった。
そしてそれがまさに今日なのか。
絶対これだ!終わらないループを止める方法。
もうこれしかない!


おれは慌てて着替えると母校に自転車を走らせた。途中例の交差点を突っ切ったがダンプカーは来なかった。やっぱりそうだ!これが正解だ!よっしゃ、待ってろよミキ!おれが、お前を!幸せにしてやるぞー!!!!







高校の門の近くまで来ると、そこに1人の人物が立っているのが見えた。
後ろを向いているから顔は分からないがきっとミキだ。
やっぱりいた!


おれはうれしさと興奮で大声で呼んだ。


おーい!ミキ!!!



人影に向かって走っていく。
するとその人物が振り返り、



全く知らない人だった。
10年経ったとは言えさすがにミキじゃない。


思わず立ち止まると向こうから話しかけてきた。


「シュウジさんですか?わたし、ミキの親友のマユです」



「あ、は、はぁ。(親友って自分で言うか?)」


「ミキから今日の日のこと、もう何十回と聞いてました。私はシュウジくんと結婚するんだって。ずっと楽しみにしていて。それなのに。それなのに、先月……」



「え?どうゆうことですか?ミキ、どっか悪いんですか?」



「いや、あのねフフ。先月彼氏が出来たんですよ。ええ、フフ。でその彼氏ってのがね、まーこれがぶっさいくでフフ アハハ🎶  こんなぶっさいくに負ける男の顔がどうしても見たくって、ミキにあなたの代わりに断ってきてあげる!って言ってきたんですよ。アハ!アハハハ!そしたらほんとにぶっ!ぶさっ!!まーそりゃふられるわ……ンガッ」




黙れこの人でなし!いやこの場合こいつを石で殴ったおれが人でなしか?この際なんでもいい!もうやってられるか!!!









「ふう」



VRゴーグルを外すと、横で漫画を読んでいるミキオに蹴りを入れた。




「おいミキオーなんだよこのクソゲー。全然クリアできねーよ。お前クリアしたんだよな?もう最後のNPCで完全にやる気失くしたからルート教えて?」


「あ、でちゃった?魔のマユたんwww あいつやばいよね。あのエンディングはおれも無いと思うわwww で、戦国武者出てきた?」



「お、おう。出てきたよ」


「まじ?じゃあいい線行ってんじゃん!!あれ、事前に4回殺られてからじゃないと出ない隠しルートだから」


「まじ?5周目で出たのはじゃあ最短だったんか」


「おぉ!優秀じゃん!でね、あの戦国武者ってまっすぐ突っ込んで来るだけだから、初撃を交わして武器を奪うのよ。簡単でしょ?で、その刀もって黒い円に飛び込むの。そこから戦国モードね。あっち行ったらさ、色んな武将達が襲いかかってくるけど全部倒してね。あ、でも信長はドボンだから触っちゃダメね。あれは悪魔だから。倒せない設定になってる。多分。いや、もしかしたらいけるのか?今度……。あぁ、すまん。とにかく信長以外全員倒したら日本治まるから。そしたらグッドエンディング。おめでとう!クリア後は10人まで奥さん作って、一生遊んで暮らせるぜ!もちろん戦国時代だけどな!あとは埋蔵金探索モードってのもあってな、ベラベラベラベーラ」





はぁぁ、クリスマスイブ。
彼女必要すぎる。







メリークリスマス🎄🎅✨
年末で自己最長の創作を書きました。これで約5000字。来年はもっと練習しよう。


さて、恐らく今年最後の下書き再生工場です。


オリジナルは工場長自ら再生されました。

その後、第2工場で再生されたのがこちら。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
真面目に創作する主戦場がこの再生工場になっているので、色々とチャレンジしながら15作まで来れました。読んでくださる皆さんのお陰です。

どうですかね。15も書いてると何か変わりましたかね。え?変態要素薄い?ですよね。でもそこはほら、1人で再生続けることが変態道ですから。ねぇ奥さん。







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