見出し画像

クラプトン奏法 教則本にないギターの「コツ」教えます 特別編

 

Eric Clapton


 今回は、ギターマガジンや研究書にもでていないマニアックな、それでいて全ギタリストの関心がある核心的テクニックについての研究です。

正直な話、ギターをはじめた十代のころ、私はクラプトンにさほど興味はなかった。
 むろん、それなりに聴いてはいたが、ピンとこなかった。
 だからコピーなどもしなかった。

 最初に聴いたのがCreamだったのだが、それなりにいいとはおもったが、なにしろインプロヴィゼーションが長たらしくて、うんざりさせられた。
 私は、むかしも今も、ある程度かっちりした構成の曲が好みなのだ。アドリブのスリリングな瞬間もしびれるが、それでも、あんまりダラダラつづくと退屈せられる。
 そういう出会いのせいで、クラプトンは私にとって魅力的な存在ではなかった。

遅まきながら…

 まえにも書いたが、私が本格的にクラプトンと向き合い、そればかりか、お手本にしようとさえ考えたのは、十年のブランクを経て、再びギターをもつことになったからだ。
 もうとにかく、どうしようもなく腕は錆びついている上に、ヘンなクセだけのこっていて、哀しいくらいギターが下手になっていた。

 
 私は「リハビリ」のために、練習曲をさがした。

 そのとき、たまたま、ギターマガジンがクラプトン特集を組んでいた。読むと、名だたる日本のギタリストがクラプトンをほめそやしている。
 そして上手い人はみな、一度はCrossroadsのコピーを経験していることが解った。

 映像を見てみると、クラプトンのフォームは右手も左手も、とても美しく、妙なクセもない。

 そういう訳で、リスタートにあたって、クラプトンの弾き方を参考にすることにした。

2つのクラプトン

 かれも長年やっているので、時期によって、ギターへのアプローチにかなりの変遷がある。
 どこに焦点を合わせるかで、こちらのアプローチもかわる。
 目的はギター・リハビリにあり、クラプトンマニアになる心算もないので、全履歴を網羅する気もなく、焦点をどこかに絞る必要があった。
 ピンポイントで二つ選んだ。

○ まず選んだのは、ブルースブレイカ―ズ時代。
 ギターマガジンで、推奨されていたからだ。

 この頃のクラプトンは、レスポールとマーシャルの組み合わせで、ロックギターに「革命」をもたらした。
 マーシャルを大音量でドライブさせたサウンドは、当時としては、衝撃だったのだ。

 私見ながら、ギターソロの質だけみると、初期の方が、荒削りではあるが、ヴィヴィッドなアイデアにあふれている。
 課題曲は、Hideaway

 本来ならCream時代のCrossroadsをえらぶべきだろうが、ソロが長くて、こまかいところまでおぼえられない。
 私はバカの上に、根気もないのだ。
 だが、チャーさんは、ソロの質は、Crossroadsより、Hideawayの方がいいといっている。

 さまぎまなブルース・リックてんこもりの、Eのシャッフル。
 これが弾きこなせれば、ギター中級者になれる。


○ 二つめ。七十歳前後。
 ちょうどI Still Doというアルバムをだしたころ。

 直接の引き金は、ロイヤルアルバートホールで開催された、七十歳記念コンサートの映像を見たことにある。

 なにしろギターの音がいい。まあ、私の好みだが。
 そしてギターが、クラプトンだけなので、バッキングも一人でこなしていて、聞き取りやすいし、かれの手元のアップが多い。
 教材として、はなはだ都合がいい。

 とくに、一曲目。
 Somebody's Knockin' 私の好きな曲。JJ Caleの作品。
 しかも、演奏はスタジオ版よりも、ぜんぜんいい。ひさしぶりに出色のアドリブを聴かせる。バッキングもスタジオ版より進化している。

 ギターは、ミッドブースト内臓のストラト。アームは使用せず、ブリッジはロックされ固定されている。

 アンプは、フェンダーのツイード、Bandmaster。ダンブルが調整したらしい。26W、10インチスピーカ。小型コンボである。
 エフェクターは、レズリーとワウのみ。

 つまり、キホンの音は、ギターとアンプでつくられている。
 この音が、すこぶる良い。深みがあって、抜けもいい。
 歪みの質も、強いわりに肌理がソフトで、ブライト。
 低音がことのほかふくよかで、そのくせ、タイトでボワつかない。これは相反する特性であるから、なかなか両立しないのだ。
 歪み音と、芯になるクリーン音がべつべつにミックスされているようなトーン。
 最大に歪ませた場合でも、つぶれることなく、低音弦の響きを歪みが、てんぷらのコロモように包んでいる感じ。

 歪みは、ギターのヴォリュームで管理されており、たぶん7くらいで弾いていて、クリーンは2~3くらいに絞っている。
 ソロは、ミッドブーストをオン。

 かれのバンドマスターは、いわゆるダンブル・アンプにくらべて、歪みの肌理がこまかく、極端にいえば、マーシャルっぽい。
 ベースは5、トレブル7。たぶん低音強めのアンプなので、トレブルをやや上げているのだとおもわれる。
 とにかく、素晴らしいアンプ・トーン。
 ストラトにしては、太くつまった音に調整されている。
 もしかすると、フロントとミッドのハーフトーンかもしれない。

 このトーンが、クラプトンの到達点だと考えられる。

 奏法も、かなりラフに自然体で、解放弦のからめかたなども、以前には見られなかった型にこだわらない自由な感じにシフトしている。

 ライブでのアドリブを見るかぎり、おおむね、ペンタトニックから逸脱しない音を択んでいるようだ。ブルーノートをキホンに、マイナーペンタとメジャーペンタを行ったり来たりし、意外にBBボックスはつかわない。

クラプトン奏法 基礎編

 私なりの研究の成果を披露したい。
 自分でいうのも何だが、ギターマガジン等でもふれられていない、かなりマニアックな「情報」をお目にかけたいとおもう。
 それは音選びや機材ではなく、とにかくクラプトンの「指」にかかわる話である。

①左手
 とにかく美しい。単音もコードも、基本に忠実に、きっちり抑える。見ていて指のはこびが整然としているのに、感動すらおぼえる。
 私などは、たとえばローコードのAを、人差し指一本でゴマカシたりするが、クラプトンはほとんどそういうことはしない。つねに三本の指でちゃんと押さえている。
 これはどのコードでも同じ。必要のないかぎり、コードダイヤグラム通りに、全弦を忠実に押弦する。

 単音では、グリップを握りこみ、人差し指はややねかせ、あとの指は立たせる、ブルーズフォーム。
 とはいえ、なぜか通常は親指を伸ばし気味で、一音半チョーキングとか、特殊な場合以外は、親指でネックを握りこまない。

 人差し指を寝かせているのは、複数の弦を押さえて素早いパッセージを奏でることと、ミュートのためで、「スローハンド」とよばれたクラプトン奏法は、この人差し指の使い方がキモである。
 要するに、一・二・三弦は、つねに人差し指でセーハ気味になっている。

 それと、ハイダウェイをコピーしていて気付いたのだが、かなり、中指を駆使したフィンガリングをしている。
 クラプトンは、私が薬指で押さえるところを、かなりのパーセンテージ、中指でこなしているらしく、そうでないと、あのトーンはでない。

 有名なヴィブラート。
 かれは、親指をネックに掛けずに、伸ばした状態のままで、ネック全体を揺するようにしてヴィブラートをかける。
 なのに、ピッチは、ほれぼれするくらい誤差がなく、なめらかで均等な揺れを確実に表現する。

 チョーキングのピッチもじつに精確で、四分の一、ハーフ、一音、一音半と、段階に応じて、遅かろうと早かろうと、ジャストな音階でピタリと止まる。

 使用弦は、アーニーボールのレギュラースリンキーらしい。


②右手

 私がいちばん注視したのは、クラプトンの右手である。

 どのようにしたら、ああいう安定したピッキングが出来るのか、というのが私の最大の関心事だった。

 目を皿のようにして観察した結果が、以下の通り。

 まずピックは、親指と人差し指で、軽くつまむようにグリップしている。親指は反りかえっていて、逆アングル気味。
 ピックの先は、弦に対して90度ではなく、いくぶん糸巻側を向いていて、しかもやや斜めに当てているようだ。この微妙な「角度」がクラプトンのトーンを決めている。

 一ミリくらいのセルロイド材ティアドロップ型のピックをつかって、先の方だけで軽やかに、正確にピッキングしている。
 とにかく、想像以上に、ピックをやわらかくもっている。

 のこりの指は、シチュエーションに応じて、伸ばしたりむすんだりする。だいたい、高音弦でソロを弾く時は、小指や薬指で位置を決めながら、中指は伸ばしていることが多い。
 
 全体としては、小指側の横の面を弦にそえて、空手チョップみたいに、斜めやや立て気味にして、ミュートしつつ、されども固定はせずに、肘から手首をしなやかに連動させて、ピッキングする。
 その場合、手のひらはいつも、ウズラの卵でもはさんでいるように、やわらかに丸まっている。
 大山倍達の手刀のような感じ(?)かな。

 中指その他の屈伸は、たぶん、強めに弾く時に、人差し指を外側からささえて補強するため、そのときの状況に応じて、伸ばしたまま人差し指にそえたり、もしくは曲げて、人差し指の指先にくっつけたりしている模様。

 つまり、ピックに対して弦の抵抗の大きい時、あえてピックをもつ人差し指や親指に力を入れるのではなく、中指の第一関節や、第二関節を人差し指に押しつけることで、ピックのグリップをサポートさせているのではないか。
 その上で、軽く払うようにピッキングしている。

 かように、クラプトンはどんな場合も、ピックを強く握りこむことはせず、軽くもっているのである。
 どうも、そのように見える。
 いうまでもなく、そうした動作は自動的・無意識的にスムースにおこなわれる。

 これらの動作パターンは、単音弾きでも、コードストロークでも変わらない。
 とにかく、しなやか。手首がやわらかい。
 タイム感も精確だし、軽くつまんだピックで、歯切れよく、太く強いトーンを奏でることができる。

 以上が、クラプトン奏法を観察して得られた、現時点での、私の貧しい成果である。

 ここが違うとか、さらにこういうテクニックがあるとか、そういうご意見のおありの方は、ぜひともご教示いただきたい。
 情報を切望しております。

 まあしかし、わがリハビリの道は、日暮れてなお遠し。

 

いいなと思ったら応援しよう!

神原 伊津夫 福田恆存さんや、そのほかの私が尊敬してやまない人たちについて書いています。とても万人うけする記事ではありませんが、精魂かたむけて書いております。