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心理セラピストが見た“癒しの落とし穴”──「寄り添わない」セラピーが人生を動かす理由

※本記事は構造ハブ
【保存版】頑張っているのに幸せになれない理由──成功しても“感じられない”社会構造
内の第9章です。



心理セラピストとして活動していた頃、
私は何度か、クライアントと本気で衝突したことがある。

声を荒げたわけじゃない。
怒鳴ったわけでも、否定したわけでもない。

ただ、
「大丈夫だよ」
「あなたは正しいよ」
と言わなかった。

それだけだった。

周囲から見れば、
それはとても不器用で、
下手な立ち回りに見えたと思う。

セラピストは、
相手を受け止める仕事。
否定しない仕事。
安心させる仕事。

だから言われた。

「そこまで言わなくてもいいのに」
「もっと寄り添ってあげたら?」
「厳しすぎる」

正直、
その通りだと思ったこともある。

「大丈夫だよ」と言っていれば、
その場は穏やかに終わった。
関係も壊れなかった。

でも、
どうしても言えなかった。


理由は単純だった。

その言葉を渡した瞬間、
その人の人生が、
そこで止まるのが見えてしまった
から。

安心はする。
泣き止む。
表情もやわらぐ。

でも同時に、
身体の奥の違和感が、
そのまま残る。

「これ、解決してないな」
「また同じ話をしに来るな」

その未来が、
あまりにもはっきり見えてしまった。


だから私は、
代わりにこういう場所に立ってしまった。

・被害者でい続けられない場所
・正しさに寄りかかれない場所
・「でも、もう気づいてるよね?」が残る場所

それは、
クライアントにとって
とても腹が立つ位置だったと思う。

優しくもない。
分かりやすくもない。
逃げ道もない。

結果、
喧嘩になる。

「分かってくれない」
「何でそんなこと言うの」
「傷ついた」

そう言われたこともある。

関係が切れたケースも、
正直、ある。


でも、不思議なことが起きた。

そうやって衝突したクライアントほど、
一番よくなっていった。

・同じ愚痴を繰り返さなくなった
・急に行動が変わった
・環境や人間関係を静かに変えた
・ある日、ふっと来なくなった

それは、失敗じゃなかった。
たぶん、卒業だったんだと思う。

セラピストに依存せず、
自分の人生を引き受け始めた人の動きだった。


私はそこで、
ひとつの事実を何度も突きつけられた。

癒しだけでは、
人は必ずしも前に進むとは限らない

「そんな自分を抱きしめてあげて」
「大丈夫だよ」
「あなたは悪くないよ」

その言葉が、
人を守ることもある。

でも同時に、
考える力や、引き受ける力を奪うこともある

問題は、
癒しそのものじゃない。

癒しを「終点」にしてしまう構造。


私がやっていたのは、
癒すことではなかった。

ただ、
子ども扱いしなかった
だけ。

「あなたは、もう分かっている」
「引き受ける準備がある」

その前提に、立ってしまった。

それは、
親切でも、優しさでもない。

その人の人生を、軽く扱えなかった。

相手と、
相手の人生を、
信頼した結果だった。


このやり方は、効率が悪い。

数も増えない。
評判も分かれる。
嫌われることもある。

でも、
ちゃんと人生が動く。

だから今でも、
「大丈夫だよ」と
簡単に言える人を見ると、
少しだけ、私は立ち止まってしまう。

それは本当に、
その人のための言葉なのか。

それとも、
関係を壊さないための言葉なのか。


これは、
「優しくないセラピスト」の話じゃない。

人生を止めない方を選んだという話

そして、この話は、
心理セラピストに限らない。

親子でも、
恋愛でも、
仕事でも、
友人関係でも、

私たちは毎日、
同じ選択をしている。

安心させるか。
引き受けさせるか。

どちらが正しい、
じゃない。

ただ私は、後者を選んだ。

喧嘩になっても、
その人の人生を子どものままにしない関わり方を、
必要としている人もいると思っている。


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【保存版】頑張っているのに幸せになれない理由──成功しても“感じられない”社会構造


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