【議題299】「殺虫剤」を「虫ケア」に変えたアース製薬の覚悟。中小企業の「新価値創造」
多くの経営者が「売れないのはデータが悪いからか」「市場が縮小しているからか」と画面の数字とにらめっこして頭を抱えています。
しかし、答えは決してパソコンの画面の中にはありません。この記事を読み終えたとき、あなたは「数字の分析」という孤独な焦りから解放され、目の前のお客様が抱える本当の痛みをワクワクしながら解決したくなっているはずです。
記事の要約
アース製薬の川端克宜社長は、節約志向が高まる現代において、安売りではなく「効き目とデザイン・ネーミングの掛け算」による新たな価値創造の重要性を説く。同社は「殺虫剤」を「虫ケア」と改称し、生活空間に馴染むデザインへ変革したことで顧客の心を掴んだ。川端氏は、データは参考程度に留め、売れるまでの消費者のリアルな行動を「売り場」で観察することの重要性を強調。店頭で選ばれる感動と、使用後に満足する「2度の感動」の提供がブランドの信頼を生み、人口減少が進む日本市場こそ、顧客の悩みを実直に解決し続けることでさらなる成長の機会があると語る。
出典:日本経済新聞(日経MJ)2026年6月29日 朝刊 「(トップに聞く) アース製薬社長 川端克宜さん デザインで感動ホイホイ」

3つのポイント
言葉と見た目を変える:「殺虫剤」から「虫ケア」へ。専門用語や横文字を排し、顧客の日常の言葉(ひらがな表記など)に徹底的に寄り添う。
データより現場のギャップ:アンケートや数値データ以上に、売り場でのお客様の「実際の行動」と「感情の動き」にヒントがある。
「2度の感動」を設計する:買っていただく時の感動だけでなく、実際に使った後の「あって良かった」という顧客の悩みの解決に全力を注ぐ。
ニュースの裏側にある「顧客の痛み」
アース製薬の川端社長の言葉には、私が苦情対応部門の現場で叩き込まれた「商売の本質」が詰まっています。
多くの企業が「マーケティング」という格好のいい横文字を使い、顧客の年齢や性別、購入行動のデータを集めることに躍起になっています。しかし、顧客は「データ」でモノを買うのではありません。「なんとかしてこの悩みを解決したい」という切実な痛みや欲求があるからこそ、財布を開くのです。
「殺虫剤」という言葉の裏には、「虫を殺す劇薬が家の中にある」という顧客の潜在的な不快感や恐怖という痛みが隠れていました。それを「虫ケア」と言い換え、部屋に置いても違和感のないデザインにした瞬間、その商品は「物騒な道具」から「家族を守る安心のライフスタイル」へと昇華したのです。
データと現実のギャップを見つけること。これこそが、大企業のような資金力を持たない中小企業にこそ実践してほしい視点です。「買いたい」というアンケートの数字と、売り場で実際に「他社製品と見比べて迷った末に買った」という行動のプロセスは全く異なります。顧客が日常で感じている「ちょっとした違和感」や「不便さ」を、誰よりも早く、泥臭く見つけ出すこと。ここに中小企業が大手を逆転する最大のチャンスが眠っています。
実践:明日から現場ですぐにできること
大掛かりな市場調査も、外部のコンサルタントも必要ありません。明日、会社に行ったらすぐにできる「泥臭い一歩」を提案します。
社長自ら「自社の商品・サービスが使われている現場」をじっと観察する
自社の商品が店舗で売られているなら、1時間だけでいいので売り場の隅に立って、お客様の「手の動き」を見てください。BtoBのビジネスであれば、納品先の社員の方が自社製品をどう扱っているか、どんな表情で使っているかを直接見に行ってください。
【参謀の視点:顧客の痛みを炙り出す3つの問い】
❶お客様は、自社の商品を手にする直前に「どんな困り顔」をしているか?
❷自社の商品説明やWebサイトに、顧客に伝わらない「業界の専門用語(横文字)」が混ざっていないか?
❸顧客が商品を使った後、本当に「あぁ、良かった」と安心する仕組み(アフターフォローや使いやすさ)になっているか?
まずは自社のパンフレットやWebサイトを開き、アース製薬が「マーケティング総合企画本部」を「新価値創造本部」に変えたように、「顧客にとって分かりにくい独りよがりの言葉」を徹底的に排除することから始めてみましょう。
社長参謀からのエール
データは過去の軌跡に過ぎません。未来の顧客の心は、常に変化する現場の空気の中にしかありません。
あなたが今日、パソコンの画面を閉じて、お客様のリアルな「売り場」や「使用現場」に足を運んだとしたら。そこで最初に見つけたい「お客様が言葉にできない小さな違和感」とは、一体何でしょうか?
数字に追われる孤独な夜はもう終わりにしましょう。 机の上の綺麗な戦略よりも、現場で流す泥臭い汗のほうが、ずっと確かな未来を連れてきてくれます。
共に汗をかきましょう。
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