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あの温かさに触れたから、「NHKのど自慢」の予選会でまた歌いたい

 幼稚園の頃だったかな。
 祖母と母に向かって歌を歌ったことがある。
 石川さゆりさんの「津軽海峡・冬景色」。
 当時の私は、日曜のお昼に放送されている「NHKのど自慢」に憧れていたんだと思う。
 というか、大きなステージに上がって、人前で歌を歌うことに。
 詳しい経緯は忘れたが、あとの歌詞がうろ覚えなのに「上野発の夜行列車おりたときから~」なんて歌い出した。
 そして、続きの歌詞は祖母や母に教えてもらいながら歌った気がする。
 今になって、そんな40年以上前の出来事を思い出している。


数年前、地元での開催時

 再び私が「のど自慢」に興味を持つようになったのは、数年前のこと。
 妹からスマホにメールが来た。
 妹の故郷であり、私が今も住んでいる地元で「のど自慢」が開催されるというお知らせ。
 あと「面白そうだから出場申込しなよ」とのこと。
 でも、当時の私は「のど自慢」を普段、観ることもなく。
 とりあえずノリで応募。「まぁ地元民なら余裕で予選に行かせてもらえるっしょ」と、かなり「のど自慢」を舐めきっていた。
 で、結果はもちろん書類落ち。
 この悔しさから、毎週「のど自慢」を観るようになった。
 本当なら、出場申込する前に一度でも観ればよかったのにな、とも思うけど。

2023年、初めての予選会へ

 その後、別の地域での「のど自慢」で書類審査を通過し、予選会に出場することはできた。

 でも、正直言えば、このときの私はかなり増長していた。
 自分の歌を歌ったときも、その後のアナウンサーさんとの面談でも(そのときは廣瀬智美アナ)、会場のロビーでリポーターさんから受けたインタビューでも、まぁまぁ調子に乗って痛い言動をしていた。
 思い出すたび、恥ずかしくて消え入りたくなるくらい。

2025年、3度目の応募

 だから、もう「のど自慢」は出なくていい、って思っていたのに。
 また地元から行ける範囲の場所、北海道清水町で「のど自慢」が開かれると知って。
 思わず申し込んじゃったじゃないか、この―!
 でも、結果は書類落ち。
 というわけで、予選と本選の日はきちんと予定を開けていたのに、バラシ決定。

 でも、予選当日。
 別に行ったからって自分が歌えるわけないのに。
 「観客として参加したい」と思い、会場へ出向いた。

会場入り口の看板

 「のど自慢」の予選は観覧自由。んで、もちろん無料。
 空いていた客席に座ったところで、予選会が始まった。
 司会の二宮直輝アナウンサーがステージに登場。
 予選会に出場する参加者の皆さんに呼びかける。
 二宮アナ「本選に出場したいかー?」会場「おー!」
 二宮アナ「ニューヨークに行きたいかー?」会場「?!」
 それ、だいぶ昔の民放のクイズ番組じゃん(笑)。

予選会本編

 進行役は舞台監督さん。細身の男性、推定4~50代。
 予選会のオープニングを飾る0番で歌ってくれるは、地元局の男性スタッフさん。本選当日のゲスト、真田ナオキさんのお師匠である吉幾三さんの「おら東京さ行ぐだ」。
 そこからもう会場は大盛り上がり。
 そして予選の出場者、1番の方から順々に歌っていく。
 ちなみに、この予選の歌う順番、歌唱曲のタイトルのあいうえお順で決まる。
 そして、同じ歌が続く場合も本当によくある。
 特に、当日のゲストとしていらっしゃる歌手の方の代表曲を歌う方、めっちゃ多い!!
 神野美伽さんの「男船」は6組くらい歌う人が続いたし、真田ナオキさんの「恵比寿」と「246」は3組ずつくらい。何回か同じイントロや歌い出しを続けて聞いたら、そりゃ覚えてしまう。
 「恵比寿」は今度カラオケで歌いたくなった。あの歌い出しを片膝に力込めて歌ってみたい。
 「246」もサビでのコール&レスポンスを覚えてしまった。気づけば、たまたま一緒に観覧した真田ナオキさんファンの方と一緒に「にーよんろく!」って歌ってしまってた。

 そして、予選会は50組ごとに休憩を挟みつつ総勢200組、正午から午後4時半ごろまで続いて。
 200番の方の歌唱が終わった後、なんと「201番」として真田ナオキさんご本人がご登場!私服(たぶん)で登場し、「恵比寿」をワンコーラス歌ってくださるというサプライズにも恵まれた。

カラオケ大会

 審査にかかる時間が約1時間、そして結果発表が午後5時半の予定。
 結果待ちの間、なんとステージではカラオケ大会が開かれる。
 地元のFM局「FM-JAGA」のパーソナリティ、梶山憲章さんがMCとしていらっしゃり、司会進行を進めてくださる。
 私が前回、予選に参加できた時はカラオケ大会なんてなかったのでビックリ。

カラオケ大会に入る前のステージ撮影可能タイム
ちなみに左端にいらっしゃるのが梶山さん

 ただ、ここでのカラオケ大会、あらかじめ曲は用意されている。1曲ごとに梶山さんが曲名を発表し、「歌いたい人」を挙手制で募る。そして、選ばれた人はステージに上がり、設置されたカラオケモニターを見ながらワンコーラスを歌うことができる。
 とはいえども、用意されている曲は大体みんな知ってそうな有名曲ばかり。覚えているだけでも「北酒場」「津軽海峡・冬景色」「アンパンマンのマーチ」「WINDING ROAD」「夏の扉」「2億4千万の瞳」など。
 私は「歌えそうな曲が出てきたら手を挙げよっかなー」とのんびりしながら構えつつ、「2億4千万の瞳」で思わず手を挙げた。「ジャパーン」って会場を煽ってみたかった。あと、郷ひろみさんの真似でそのとき着ていたカーディガンの肩だけ脱ぐプレイしたかった(笑)。
 そんなこんなで時計を見ると5時10分は過ぎていたと思う。もうそろそろカラオケ大会も終わるんだなーと思ってたら、次に梶山さんが告げた曲名が、一青窈さんの「ハナミズキ」。
 うーん、歌詞はうろ覚えだけど、メロディは分かるから歌える!
 まっすぐに手を挙げた。
 そして、なんと当てていただけた。
 座っていた後方の席から立ちあがり、ステージに向かう。一つ前の列に座っていたマダム二人が「がんばって」と声をかけてくれて、会場の前列に座っている予選出場者のみなさんも温かい拍手で迎え入れてくれる。
 そして、ステージに上がる。スタッフさんがマイクを渡してくれる。
 中央に設置されたカラオケモニターの前に立つと、画面は「通信中」というマークが表示されている。
 まぁ、演奏が始まったら歌詞が表示されるのかな。
 私は「がんばりまーす!」なんて会場に向かってマイクで宣言。
 うわー、また「のど自慢」の予選で歌えるなんて!(予選には出場できなかったけど)
 そして、「ハナミズキ」のイントロが始まる。
 あれ?
 画面、まだ「通信中」のままなんだけど。
 で、歌い出し部分が始まった。
 わー!パニック!
 とりあえず、覚えてる部分は歌う。
♪ そーらをー おしあーげてー
 あ、この先、わかんない!!!
 画面はまだ「通信中」。
 あー!もー!どうしよう?!
「すみません、歌詞が表示されてないんですけど」
 せっかく、この会場の盛り上がった雰囲気を壊したくないって思ったけど。
 もう、そうとしか言えず。
 すると、途端に聴こえてきたのは、客席からの歌声。
 歌詞を知っている方々が、みんなで「ハナミズキ」の続きを歌ってくれている。
♪ てをのーばすーきみ ごがーつのーことー
 私は会場のお客さん達に体を向け、みなさんの歌声を聴きながら歌う。
 口元を見て、ホントになんとなくだけど。
 中には、次の節に入る前に、その歌詞を大声で伝えてくれる人も。
 サビから先は覚えてる!と思ってたけど、歌ってみたらこれまたうろ覚えで。
 会場のみなさんに始終、助けられて何とか歌いきることができた。
「助けてくれてありがとうございました!」
 って歌い終わったとき、頭を下げた。
 会場の設備担当と思しき方が飛んできて謝ってくださった。でも「大丈夫です」と答えた気が。
 胸がいっぱいだった。やっぱり、この「のど自慢」の会場は温かかった。
 ステージを降りる際にもう一度、頭を下げた。
 マイクは既にスタッフさんにお返ししていたのに。
 「もう一言お伝えしたい」と思ったら言葉が出なくて。
 しばらく頭を下げて屈んだままじーっとしてたから、会場の人たちも「え?」ってなってて。
 やっと出てきた言葉。
「書類選考で落ちたから歌えて嬉しかったです」
 会場からちょっと笑い声が湧いた。
 笑われた?
 でも、まぁ、いいや。
 席に戻ったときにも、一列前のマダムたちから「よかったよ」と声をかけていただけた。
 その時はもう、なんか恥ずかしくもあったんだけど、そう言ってもらえたことがありがたかった。

帰り道で撮った十勝清水駅前
(会場はここから徒歩10分くらい離れたホールでした)

その後

 以降、テレビのCMで「ハナミズキ」の合唱が流れるたび、涙が出そうになる。
 あぁ、やっぱり「NHKのど自慢」の会場って温かかったなって。
 予選会に出場された約200組の方々の歌に、観客の皆さんは惜しみなく拍手して、コールして、手拍子して。
 いつか、またあの場で歌えたらいいな、って思う。
 今度は、できれば書類を通過して予選会の出場者として歌いたい。
 まぁ、本選に出場できるかは運にもよると思うんだけど(でもいつか出られたら嬉しいな)。

 そうだ。
 今月下旬、その清水町での予選会の様子が流れるとのこと(北海道以外の方もNHKプラスで観られます)。
 カラオケ大会の様子は流れないだろうけど、予選会のダイジェストを見るだけでも楽しいかも。

予選会の終了後に会場で頂いたうちわ
今回の記念として大事にしたいなぁ

【追記】イラストエッセイになりました


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