お盆の朝に/秋は、虫の声からやってくる (2026.08.13)
今朝、小豆を煮ています。
鍋の中で、ことことと小豆が踊っています。
今日からお盆。
ご先祖さまを迎える準備をしながら、まだ薄暗い朝の時間を過ごしていました。
すると、ふと気づきました。
少し前まで、朝といえばセミの声でした。
夏をいっぱいに押し広げるような、力強い声。
ところが今朝は、その声が少し遠くなって、
代わりに草むらから、小さな虫の声が聞こえてきます。
鈴虫でしょうか。
コオロギでしょうか。
まだ8月です。
昼になれば、きっと今日も暑いのでしょう。
それでも、季節はもう少しずつ動いている。
昨日、台風が通り過ぎました。
大きな雨や風を心配していましたが、幸い穏やかに一日を終えることができました。
そして台風が去った翌朝、
空気が少し入れ替わったように感じます。
セミから虫へ。
夏から秋へ。
季節の境目というのは、カレンダーに線を引いたようにはやってこないのでしょう。
ある朝、風が少し変わる。
空の色が少し高くなる。
聞こえてくる声が変わる。
そして人は、
「ああ、秋が近づいているんだな」
と気づく。
今朝は、それがお盆の入りの日でした。
小豆を煮る匂い。
鍋から上がる湯気。
外から聞こえる虫の声。
昔の人も、こんなふうに季節を感じながら、ご先祖さまを迎えていたのかもしれません。
現代の生活では、
季節は日付で知ることが多くなりました。
8月だから夏。
9月だから秋。
でも、本当の季節はもっと曖昧で、もっと豊かなものなのだと思います。
耳で聞き、
肌で感じ、
匂いで気づく。
そう考えると、
季節とは「知るもの」ではなく、
「感じるもの」なのかもしれません。
ことことと小豆を煮ながら、
虫の声を聞いている。
特別なことは何もない朝です。
でも、こんな朝に、
時間がゆっくり流れていることを感じます。
今日からお盆。
帰ってくる人を迎えながら、
去っていく夏にも、
そっと耳を澄ませてみようと思います。
秋は、虫の声からやってくる。
今年もまた、季節が静かに次の時間へ進み始めています。

