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kayty19
気まぐれ俳句鑑賞20『泉の底に一本の匙夏了る』飯島晴子
泉の底に一本の匙夏了る
飯島晴子
「泉の底に一本の匙」まで一気に読ませる。そして、ほんの一瞬だが、確かな間を置いて「夏了る」と続く瞬間、紙の上と視覚とは別の、第三の場所に、ある幻像が浮かび上がる。一読、これは詩だと直感する。詩情やポエジーという情意豊かで曖昧な言葉ではなく、硬質な詩である。
ではその直感は何に由来するのか?「泉の底」という言語によってしか触れることのできない場所。そこへ銀製の「匙」がすうっと縦に「一本」姿を現す幻像。体験された記憶ではなく、目の前の景物を写生するのでもなく、言葉によって創出され、第三の空間に照射されるイメージを作る。いわば、詩への意志と言うしかない。
「夏了る」という言葉によって、「匙」はむしろ透明な水の中で宙吊りにされているようだ。ただの棒ではなく、鍵でもない。全体はまっすぐで、先の部分だけ唇と舌に馴染むような丸みを帯びた窪みを持つ「匙」は、どこから来るかわからぬ光を受けて、心の中でひっそりと光っている。
出典:『俳句歳時記 第四版増補 夏』角川ソフィア文庫
