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気まぐれ俳句鑑賞16『夜の辻のにほひてどこかプールあり』能村登四郎

夜の辻のにほひてどこかプールあり
能村登四郎

知らない土地を夜、歩いているのだろうか。「辻」という言葉はいささか古風だが、同時にアスファルトで完全に舗装された道ではない、信号も街灯もない分かれ道が目に浮かぶ。ややぬるい土と、草の匂いまで漂ってくるようだ。

この句の詩情はまさにこの「にほひて」から来るのであるが、心惹かれるのは、どういうわけか見えないプールの存在なのだ。

暗がりの「どこか」に水を湛えているプールは、波立つことなく静かで、ただ黒い水であるはずだ。だが、「にほひ」を通して夜のどこかに知覚されることで、ひんやりとした仄明るい水が、読む者の心に接続される。

昼間の光溢れるプールではなく、夜がひとつの実体を持ったような気配。それを発見した、ささやかだが、清らかな喜びがある。


出典:『俳句歳時記 第四版増補 夏』角川ソフィア文庫 

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