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nasigorendayo
気まぐれ俳句鑑賞34『うろこ雲ことばを減らしつつ老いる』対馬康子
うろこ雲ことばを減らしつつ老いる
対馬康子
数日前の早朝、出掛けに見上げた空いっぱいに鱗雲が広がっていた。立体的な巨大な網の目のように空を覆う、私の見た「鱗雲」は視覚と思考を一瞬圧倒した。
集合体恐怖症の対象にもなりかねないびっしりとした鱗雲もあれば、どこか心を遠くに漂わせたくなる「うろこ雲」もあるに違いない。ひらがなで書かれた掲句の雲は、多分後者だろう。
しかし、その後に続くいささか情緒味を抑え過ぎたようにも思える「ことばを減らしつつ老いる」という言葉との取り合わせを、どう考えたらいいだろうか。
「ことばを減ら」していくこと、「老いる」こと、そして「うろこ雲」。この三つがなかなか像を結ばなかった。
ただわかるのは、歳を重ねていくことは、言葉をいたずらに増やしていくことではない、ということ。「うろこ雲」に遠く思いを馳せたとき、ことさらに言葉を弄することなく、言葉になりきらないもの、言葉にしなくてもいいことを増やしていくことなのかも知れない。
そして、それは、良い悪いということではなく、我々が、ただ「老いる」ということ。あえて求めず、拒みもせず、それを静かに受け止める気配が、ゆっくりと伝わってくる一句である。
出典:『俳句歳時記 秋 第五版』角川ソフィア文庫
