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kurogane98
気まぐれ俳句鑑賞31『玉葱の芽がどうしても出るという』阿部青鞋
玉葱の芽がどうしても出るという
阿部青鞋
台所の片隅で貯蔵されていた玉葱から、芽が出てくる。
収穫期の夏、休眠状態に入っていた玉葱は、いくつかの条件が揃うと目を覚ます。しかしこれは、風味や水分が抜けてしまうと言って食する側には歓迎されない。
この句の味わいは、作者が「どうしても出る」という「玉葱」の切なる声を聴き留めたような措辞にある。玉葱としても大人しく食材にされることを受け入れて貯蔵されていたつもりだったが、さすがに堪えきれなくなった。たとえ許されなくとも出ないわけにはいかない。せめて事前に伝えておこう、という健気ささえ感じてしまう。
台所の片隅で交わされる「玉葱」と人のささやかな交信。どこかほのぼのとした命の営みを感じさせる一句である。
出典:『阿部青鞋 俳句全集』暁光堂俳句文庫
