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気まぐれ俳句鑑賞22『ありとあるものの梅雨降る音の中』長谷川素逝

ありとあるものの梅雨降る音の中
長谷川素逝

即物的な語に置き換えられない、およそ膨大なものの気配を封じ込めた句である。

「ありとあるものの」という冒頭の八文字は句またがりとなり、まさに一言で捉えられないありとあらゆるもののひしめく気配を備えているが、その述部が省略されて不明である。「ありとあるもの」が「梅雨降る音の中」に包まれているのか、消えていくのか、無限に繰り返す円環のように、どこか瞑想的である。

聞こえるのは雨の音だけ。「ありとあるもの」は、具体的にこれと明示されないが、人やもの、山川草木の一切とも言えるし、今も視界の端に映るごくありふれた日常の景、ひいては過去や未来も含めた空間、時間への広がりも持っている。

それぞれはばらばらのものだが、「梅雨降る音の中」に、今は同時に束ねられるようにして存在する。「音の中」と途絶されることで、すべてが溶け合うような合一感まで漂わせる。

言葉を削ぎ落とすことで、いっそう大きな広がりを獲得した一句である。


出典:山本 健吉「基本季語五〇〇選」講談社学術文庫

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