短編小説「明日は優しくしよう」
夕方、息子にきつく言ってしまった。
「何回言ったらわかるの!」
ランドセルは玄関に投げっぱなし。
靴下は片方だけソファの下。
しかもテレビを見ながらお菓子をボロボロこぼしている。
怒る気はなかった。
本当は、なかったのに。
息子はしょんぼりして、
「…ごめんなさい」と小さく言った。
その声を聞いた瞬間、胸の奥が少しだけ痛くなる。
夜、息子が寝たあと。
静かになったリビングで、散らかったお菓子の袋を拾いながら思う。
明日は優しくしよう。
ちゃんと話を聞こう。
怒る前に、理由を聞こう。
今日は疲れてただけだ。きっと。
明日は、きっとできる。
そう思って寝る。
次の日の朝。
「靴下どこ!?ママーー!」
「昨日洗濯カゴに入れてって言ったでしょ!」
「え、入れてない!」
「なんで入れてないの!!」
そして気づく。
ああ、今日もダメだった。
優しくしようと思っていたのに。
息子が学校へ行ったあと、
テーブルの上にメモが置いてあった。
ぐにゃぐにゃの字で書いてある。
「きのうはごめんなさい
あしたはちゃんとします」
それを見て、思わず笑ってしまう。
「あしたはちゃんとする」
その言葉、
どうやら私たち親子は、同じのを使っているらしい。
私はメモを冷蔵庫に貼った。
そして思う。
明日は優しくしよう。
たぶん、またできないけど。
それでも、思っているうちは、きっと大丈夫だ。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
短いお話ではありましたが、ほんのひとときでも楽しんでいただけていたら嬉しいです。
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