短編小説『献立だけで腹いっぱい』
日曜日。
妻がテーブルにノートを広げた。
「今週こそ、本気で食費管理する」
その顔、家計簿じゃない。
国家予算会議。
まずは献立決め。
月曜、生姜焼き。
火曜、魚。
水曜、カレー。
木曜、カレーうどん。
金曜、カレーグラタン。
カレーの転生回数が多い。
「ここで余ったニンジン使って…」
もう料理じゃない。
在庫処理工場。
僕も乗ってきた。
「じゃあ土曜は?」
「鍋」
「急に冬」
しかも五月。
妻は真剣だった。
「買い物も店分けるから」
始まった。
主婦だけが使える特殊能力、
“スーパーをハシゴしたほうが得という思想”。
一軒目。
「鶏むね安い!」
二軒目。
「こっちの豆腐のほうが安い!」
三軒目。
「卵が一円高い…戻る?」
高速道路の話?
だんだん会話がギスる。
「さっきカゴ入れたよね?」
「それ来週用」
未来を見てる。
カゴも重い。
腕ちぎれる。
ネギ飛び出してる。
エコバッグのフォルム、
完全に捕獲されたワニ。
セルフレジでも事件。
『予期しない商品が置かれました』
こっちも予期してない。
妻がキレる。
「私は置いたよ!?!?」
機械に論破される大人。
帰宅。
ドサッ。
食材を床に置いた瞬間、二人とも動かない。
遠征帰りの兵士。
冷蔵庫に詰める。
豚肉。
豆腐。
もやし。
使われる未来だけ決まってる人たち。
時計を見る。
18時42分。
ここから料理。
無理。
人類には限界がある。
僕が聞く。
「今日…なに食べる?」
さっきまで一週間管理してた会議、
開始六時間で崩壊。
妻がソファから言う。
「…外食しない?」
その“しない?”の速度じゃなかった。
もう心は駐車場。
「何食べる?」
「焼肉」
回復アイテム強すぎる。
十分後。
僕たちは焼肉屋でカルビを焼いていた。
白米、爆速で消える。
妻が肉をひっくり返しながら言う。
「でも献立決まってるから今週ラクだね」
その横で僕は思った。
冷蔵庫のもやし、
たぶん今日が一番輝いてた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
短いお話ではありましたが、ほんのひとときでも楽しんでいただけていたら嬉しいです。
感想など、もしよろしければ「スキ」や「コメント」でみなさんのお声をお聞かせください。
頂きました「コメント」は静かにガッツポーズしながら読ませて頂きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いいなと思ったら応援しよう!
もし、よろしければ応援頂けますと、助かります!頂きましたチップは、子供と美味しもの、楽しい体験に使わせて頂きます。