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この裏切りは、君を守るため 第26話

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第3章 思いがけない再会

6 クレイの秘密

「大丈夫? 落ち着いた?」
 クレイの胸の中で、ファンローゼは静かに頷き、そろりと顔をあげた。
「取り乱してごめんなさい」
「そんなことはいいんだ」
 クレイのしなやかな指先が、目の縁に浮かんだファンローゼの涙を拭った。
「我慢しなくていい」
「ううん、もう大丈夫」
「記憶、取り戻したんだね」
 ファンローゼは今気づいたように、目を見開き唇を震わせた。
「思いだしたわ。何もかも、すべて」
 震える手を胸のあたりに持っていく。
「三年前のことを」
 震えが止まらなかった。
 失っていた記憶のすべてが、一気に流れ込むように脳裏を駆け巡っていく。
 そんなファンローゼの身体を、クレイは再び抱きしめた。
「クレイ……」
「何も言わなくていい。震えが止まるまでこうして抱きしめていてあげるよ」
 身動きがとれないほどに抱きしめられる。
 記憶が蘇ったが、それはつらい過去を呼び覚まさせるだけとなった。
「ファンローゼ、よく聞いて欲しい」
 神妙な顔で切り出したクレイに、ファンローゼは首を傾げた。
「僕、君に内緒にしていたことがある」
「内緒にしていたこと?」
「驚かないで聞いて欲しい」
 クレイの真摯な眼差しがファンローゼを射る。
「実は僕、エスツェリア軍に対抗する組織にいるんだ」
「まさか、反エスツェリア組織」
 言って、ファンローゼは口元を手で押さえ、辺りを見渡した。
 この会話を誰かに聞かれてはいないだろうかと。もし、このことが知られたら、大変なことになる。
 しかし、幸いなことにここは車内。当然、運転している男以外誰もいない。他の者にこの会話を聞かれることはなかった。
 それよりも、いつも穏やかで優しいクレイが、まさかエスツェリア軍に対抗する組織にいたとは、驚きを隠すことはできなかった。
「お父様がいた組織?」
「いや、クルトさんの組織とは別だ。どうだろう? 僕の所に来ないか?」
「クレイの組織に?」
 ファンローゼは言葉をつまらせた。
「いや、誤解しないで欲しい。組織に入ってとか、協力して欲しいと言っているわけではない。ただ、僕のいる組織なら君を匿えるし、何より、君の側にいて守ってあげられる」
 ふと、殺された父のことを思い出す。
 父も軍に対抗する組織に入っていたため殺された。
 正直どうすればいいのか分からなかった。
「いや……今のことは忘れて欲しい。そうだね。君はもうスヴェリアに、アレナさんのところに帰った方がいい。これ以上ここにいるのは危険だ。送っていこう」
 クレイは苦笑いを浮かべる。
「いいえ! 私をそこに、クレイの組織に連れて行って!」

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