2026年5月 ワイン業界ニュース
京都の「朝食喜心」という朝ごはん専門の定食屋をご存知だろうか?土鍋の炊き立てご飯に、豚汁、さらに明太子やちりめん山椒などのご飯のお供アベンジャーズが加わり、3,000円ぐらいで、完璧な「THE 日本の最高の朝食」を味わえる。ミシュランのビブグルマンにも掲載されていて、京都に行った際にはぜひ訪れて欲しいイチオシのお店だ。ここの土鍋に感動して、すぐに土鍋を発注した。完全オーダーメイドなので出来上がるまで3ヶ月ほどかかるそうなのだが、届くのが今から楽しみだ。
さて、今月もワイン業界ニュースをご紹介。Diplomaの試験対策にも、しっかりキャッチアップしていきたいところ。
1. 日本酒輸出、史上2番目の高水準——81カ国へ拡大
原題:Sake achieves second-highest export total on record
概要: 2025年の日本酒輸出額は459億円(前年比約6%増)で過去2番目の高水準を記録。輸出先は81カ国に拡大した。金額ベースでは中国が最大市場、数量ベースでは米国が首位。アジアが全体の63%を占め、288億円に達した。
ひとこと解説: ワイン消費が世界的に縮む中、日本酒が逆方向に動いているのが面白い。5年で輸出額がほぼ倍増し、81カ国というカバレッジはすでにニッチ飲料を脱却している。プレミアム化も加速しており、純米大吟醸クラスが輸出の牽引役になっている。日本酒はこれまで安過ぎたと思うので、もっと高値で売りまくって欲しい。
2. 英国スパークリングワインの躍進——気候変動がもたらす新たなワイン地図
原題:Why Sales of English Sparkling Wine are Rising
概要: 英国のぶどう畑は4,841ヘクタールに拡大し、ワイナリー数は238に達した。スパークリングワインの販売量は2018年比187%増の620万本。検索トレンドでもシャンパーニュが15%減少する一方、英国スパークリングは11%増加している。
ひとこと解説: シャンパーニュ地方が暑くなりすぎて酸の保持に苦労し始める一方、イギリスがその恩恵を受けている。英国南部のチョーク質土壌はシャンパーニュと地質学的に同一であり、温暖化によってピノ・ノワールとシャルドネの生育に適した気温帯に入った。先日飲んだGusbourneやNyetimberもかなり高品質だった。とはいえ、お値段はしっかり高いので、今後は価格競争力が鍵になりそう。
3. シャンパーニュ・テルモン、世界初のリジェネラティブ・オーガニック認証を取得
原題:Champagne Turns New Green Leaf
概要: LVMH傘下のシャンパーニュ・テルモンが、スパークリングワインとして世界初のリジェネラティブ・オーガニック認証(ROC)を取得した。2031年までに全契約栽培農家のオーガニック転換を義務化する方針も発表。シャンパーニュ地方全体でオーガニック認証を受けた畑はまだ8%に過ぎない。
ひとこと解説: リジェネラティブ・オーガニック認証(ROC)は、単に農薬を使わないだけでなく、土壌の再生や、生物多様性、さらに農業従事者の公正な待遇まで含む包括的な基準だ。いわゆる「サスティナブル」と言われるやつで、これは大手だからできることで、中小メゾンはやろうとしてもコスト負担に耐えられないだろう。
4. 豪州ワイン輸出14%減——中国関税撤廃後の「蜃気楼」が消える
原題:Australia Wine Exports Fall 14% As Global Demand Weakens
概要: 2026年3月までの12ヶ月間で、豪州ワイン輸出額は前年比14%減の22.8億豪ドル、数量も7%減の6億300万リットルに落ち込んだ。中国向けは金額29%減・数量25%減。米国向けも金額22%減。カナダ(24%増)とアジア他地域が唯一の明るい材料。
ひとこと解説: 2024年3月に中国が対豪ワイン関税を撤廃した直後、輸出額は1,300万豪ドルから10億豪ドルへ急回復し業界は沸いたが、そのわずか1年で29%急落した。関税撤廃直後の急騰は4年分の繰延需要の一括放出に過ぎず、持続可能な実需ではなかったということだろう。そもそも中国のワイン消費自体が13%減少しているので、豪州も中国依存から脱却しないと結構苦しいはずだ。
5. RTD(缶カクテル)が二桁成長——ワインの棚を本格的に侵食
原題:RTDs hit double-digit growth
概要: RTD(Ready-to-Drink、そのまま飲める缶入りカクテル等)の売上は前年比で数量12%増・金額17%増を記録し、英国だけで7億400万ポンド規模に達した。ワインベースのRTDも14%成長。世界のアルコール市場におけるRTDのシェアは2014年の1.1%から2026年には3.5%に拡大している。
ひとこと解説: ワイン業界は品質やストーリーを語る一方で、利便性ではRTDに大きく劣っている。750mlのデカいボトル、オープナー、ワイングラス、という利便性の低さがやはりネックで、テロワールも結構だが、ユーザー体験を見直す必要は大いにある。ワイン業界だけがこの辺りあぐらをかいている気がするのだ。
6. バージニア・メリーランド壊滅的霜害——東海岸ワイン産地の脆弱性が露呈
原題:Virginia and Maryland wineries face major loss after late spring frost
概要: 4月21日、異常な暖春で早期に萌芽したバージニア・メリーランドのぶどう畑を遅霜が直撃。Black Ankle Vineyards(メリーランド)は100エーカーで芽の100%を喪失し推定1,000万ドルの損失。Boxwood Estate(バージニア)は75%喪失。州全体で2026年ヴィンテージの大半が壊滅的被害を受けた。
ひとこと解説: 気候変動が災害をもたらしている典型的なパターン。暖冬→早期萌芽→遅霜で芽が全滅してしまう。温暖化は生育サイクルと霜のリスク期間のミスマッチを生むため、シャルドネのような早期萌芽品種ほど被害が大きくなる。品種選定の見直しと霜害対策インフラ(防霜ファン、スプリンクラー等)への投資が急務になりそうだ。
7. 米国ワイナリー過剰——「消費者が足りない」時代の構造問題
原題:Too Many Wineries, Not Enough Consumers
概要: Wine Searcherの5月報道によると、米国のワイナリー数は飽和状態にあり、小売棚の奪い合いが激化。D2C(消費者への直接販売)も10年前のブームから縮小に転じている。2025年の米国ワイン売上は前年比12億ドル減の743億ドルに落ち込んだ。
ひとこと解説: 明らかに「若年層のワインファン不足」が問題になっている。団塊世代がワインの主力消費層だったが彼らが高齢化しているため、いかにミレニアル世代やZ世代に訴求していくかが今後の課題。Diplomaの教科書にあるような、小規模ワイナリー、ブティックワイナリー、D2C、テイスティングルーム、といった単純な施策は過ぎ去った感じだ。
8. ワイン産業のM&A——縮小市場が加速させる再編の波
原題:Mergers and Acquisitions in a Contracting Wine Industry: Key Valuation and Deal-Structuring Issues
概要: 2026年のワイン業界ではM&A(合併・買収)が加速している。Crimson Wine GroupがRaeburn(年産25万ケース)を買収、香港のTop Wealth Groupがアジア太平洋のワイン認証・取引企業を1億2,500万ドルで取得するなど、規模と地域の両面で再編が進む。
ひとこと解説: ワイナリーは収益性が落ちると、かつて資産と見なされていた在庫・畑・設備が、維持費のかかる負債として評価され始めてしまうのだ。また、ブドウの長期供給契約も、強みではなく過剰生産を固定化するリスクになりうる。こうなるとM&Aの際に大手から買い叩かれやすい。単独で生き残れない中規模ワイナリーは、今後どんどん統廃合されていったり、畑をより収益性の高い作物に転用していく。
今月は以上です。
