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WSET Diplomaの英語を攻略するには?

英語を自由自在に扱える人は良いが、自分のように日本で生まれ育って学生時代に留学経験もない、いわゆる「純ジャパ」の場合、Diploma試験では英語で苦戦しがちだ。この試験を受け終わった今となって、「どうすれば英語で無駄に苦戦せず、最短距離を走れただろうか?」と振り返ることがある。本日はその最適解を用意したので、これから受験する人は是非参考にして頂ければ。

ちなみにWSET公式のSpecificationでは、英語を母国語としない受験生に対し、「IELTS 6.5以上、またはそれと同等の能力を有すること」が強く推奨されている。IELTSを受験したことがない人向けに補足すると、IELTS 6.5は日本では「英語がとてもできる人」とみなされるレベルで、一般的なTOEIC換算では820〜870点程度に相当するとされている。

日本人にとってハッピーなニュース

さて、英語が苦手な受験生のためにとても良いニュースがある。自分が推察するに、おそらくほとんどの日本人受験者は本番で大した英語は書けていない。なぜなら「本番ではタイムプレッシャーがものすごいから」。とても英語の文法や単語を気にしてエレガントな文章を書く余裕なんてないのだ。自分も本番では、「This is 〇〇, so this is 〇〇」ぐらいの文章しか書けなかった。そうなるとIELTSもクソもなく、ただのThis isボットだ。余程普段から英語をアウトプットしている猛者を除けば、試験でしか英語を使わない人は、みんな可愛いドングリちゃんなのだ。

また、細かい文法もどうでもいい。公式のExnaminers' reportでも、「受験生の多くが英語を第二言語としていることや、プレッシャーのかかる試験環境であることを理解しているため、多少の文法ミスやスペルミスについてはある程度許容される」と明確に述べている。たとえば「冷涼な気候は、ブドウ高い酸を保持させる」と「冷涼な気候はブドウ高い酸を保持させる」——助詞が「に」でも「へ」でも意味は問題なく通じる。これをtoだかforだか、単数だか複数だか、現在形だか過去形だか、本番でも書いている途中で間違いに気づくが、正直どうでもいいので書き直す必要もない。

さらにもう一つ良いニュースがある。この試験、日本人は意外と忘れがちだが、英語が堪能なネイティブもガンガン落ちている。どれだけ英語が流暢であっても、設問に正しく答えられていなければ全く点が入らない試験だからだ。たとえばブルゴーニュの赤ワインについて聞かれているのに、白ワインについて2ページ答案を書き上げたところで、その部分は1点にもならない。

ダメ押しでもっと素敵なニュース。この試験は世界中の答案がロンドンの採点センターに送られ、そこで一斉に採点される。つまり採点者が、英語を母国語としている試験官なのだ。ということは、「どんなにカタコトの英語でも絶対に通じる」。我々日本人も、外国人が話すカタコトの日本語を容易に理解できるように、向こうも同じなのだ。ロンドンで実際に受験した際、さまざまな国の受験者がいたが、みんなびっくりするような個性的な答案だった。筆記体だし、癖もバラバラ、全然読めないような答案もあった。それでもネイティブの採点者は読めるし、しっかり点が入るのだ。

Diplomaでは英語より答案構成力の方が大事だった

これは当時勘違いしていたことだが、Diplomaの試験では英語の語彙力、文法力ではなく、「答案構成力」の方がはるかに重要だった。つまり与えられた設問に対して的確に答えているか(Command Verbの深さを含む)、その論理的な「事実A → 理由B → 結果C」というlinkageが作れているか、という部分だ。

つまり、誤解を恐れずに言えば、Diplomaが重要視するのは実は英語力とあまり関係のない箇所になる。日本語の試験であっても設問に対して的外れな回答をしたり論理飛躍や論理矛盾があれば失点するように、これはそもそもの答案構成の問題なのだ。たとえば、

ブルゴーニュは大陸性気候です、だから収量が不安定になります。
(Burgundy has a continental climate.Therefore, yields tend to be unstable.)

上記の例文、明らかに論理が飛躍している。両者を繋ぐには、春の遅霜だったり早い芽吹き、開花時期の雨、雹の被害、夏の干ばつ等に触れなければいけないだろう。

つまり、パーツ自体の文は短くて簡単で良いが、両者を繋ぐ論理的な接続が決定的に重要になる。ここを履き違えて、高度な文章が書ければ高得点が狙える、と勘違いをするのは勿体無いと思う。「英文自体はシンプルで良いが、答案構成や接続のしっかりした答案」の方がWSET好みということになる。

実際のDiploma教科書の英語レベルは意外と簡単

「簡単」というのは見る人の主観が入るので究極的にはその人次第になってしまうが、事実として、実際にDiplomaのテキストで登場するのはこのような英文になる。

"The complex geology of Alsace is due to faulting and erosion, resulting in a diverse mosaic of soil types"
(アルザスの複雑な地質構造は、断層活動と土壌侵食に起因し、その結果、多様な土壌タイプのモザイクが形成されている。)

一見するとis due to、resulting in、の箇所など読みづらさを感じるが、慣れてしまえば意外と中学英語の文法だ。また語彙についても見慣れない単語としてfaultingやerosionなど1個2個あるだろうが、これはワイン特有の語彙に慣れていないことが問題で、数は限られるため慣れれば使う語彙はワンパターンになる。

もし本当に高度なIELTSの試験に出てくるような文章なら、先ほどのアルザスの文章は、おそらくこうなる。これははっきり言って日本語でもキツイし、ちょっと何言ってるか分からない。

"The geomorphological structure, characterized by a high-density and irregularly differentiated mosaic of micro-topographic units, is attributable to the synergistic interplay of complex geomorphic agencies including tectonic deformation, fluvial erosion, gravitational mass displacement, and depositional processes."
「地殻変動、水系侵食、重力性地形変位及び堆積過程等の複合的地形営力に起因して、微地形単位が高密度かつ不規則に分化・錯綜した地貌構造である」

IELTSの単語帳は絶対にやるな

先ほどの例でも触れたように、実際に使われる語彙は意外と限られている。そのため、IELTSや英検1級向けの単語帳を幅広く学習するよりも、ワイン分野で頻出する単語だけを抽出し、重点的に覚える方がはるかに効率的だ。

また、先ほどの英文には is due to や resulting in といった見慣れない表現が出てきた。しかし、Diplomaの教材で使われる文法表現も実際には10〜20パターンほどに収まることが多く、特に頻出なのが、因果関係を表すフレーズだ。こうした定型表現を先に覚えてしまえば、答案の骨格を組み立てるのは格段に楽になる。

いやいや、そんな素敵な単語帳があったら誰も苦労しないよ

さすがにないでしょう・・・。

・・・・。

・・・・・・。

「あるよ。」

この度、「ワインの英単語」を出版

あるそうです。その名も、「ワインの英単語」。そのまんま過ぎて逆に気持ち良い。こんなマニアックな本は本屋にまず並ばないだろうから、ここでしか手に入らない。

ボルドーのシャトーをイメージした可愛い表紙
ワインの単語だけに特化した単語帳
エッセイで使える表現も搭載

本書には、ワイン学習で頻出する英単語・表現689語を収録した。ワインの学術書、雑誌、ニュース記事などで繰り返し登場する語を中心に、また自分自身の受験経験をもとに選定している。栽培・醸造・テイスティング・テロワール・法規制・ビジネスなど、テーマ別に10のユニットへ整理した。すべての見出し語に、イギリス英語の発音記号(IPA)と日本語訳を付している。発音記号を入れたのは、試験では不要でも、現場でワインを語るときに発音できなければ意味がないからだ。例文はワインの文脈に即したものをオリジナルで作成、和訳も添えた。日本語訳は赤シート対応なので、繰り返しの暗記学習にも使える。

WSET、Wine Scholar Guild(WSG)、Court of Master Sommeliers(CMS)などの資格試験を英語で受験する方はもちろん、海外のワイナリーで働きたい方、英語のワイン記事やテイスティングノートを読みこなしたい方にも役立つはずだ。

特に販売はせず「非売品」にして無料で配ることにした。この記事を読んだあなたは、是非ワインのあれこれのインスタをフォローして、プロフィール欄のGoogle Formから申し込んで欲しい。フォローせず単語帳だけ申し込もうとする不届き者にはページごとに上下反転印刷した特別版を送りつける。

(6/14 追記) こちらの本、嬉しいことに公開初日で200冊以上の反響があり、現在増刷中。届くまで2週間程度お時間要する見込み。
(6/16 追記) 申し込みが300冊を突破。嬉しい限り。
(6/21 追記) 申し込みが400冊を突破。ほぼハリーポッター。
(6/25 追記) 申し込みが500冊を突破。みんなありがとう。
(6/29 追記) 申し込みが600冊を突破。北海道から沖縄まで。
(7/5 追記) 申し込みが700冊を突破。在庫がなくなったため、これにていったん終了。


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