第1回テイスティング勉強会をやってみた
ワールドカップが終わり、いよいよここから夏本番だ。10月にD3を控えている受験生の方々は今頃何をしているだろうか?ゲーム・オブ・スローンズ級の壮大な小説を書き始めていないだろうか?星座の瞬きを数えて恋の行方を占っていないだろうか?今やるべきことは、一つでも多くの産地を頭に叩き込み、苦手エリアを作らないことだ。D3では1問1産地という問題は稀で、通常、産地を横断した問題が出題される。3つの産地を問われているのに1つの産地が完全にノーアイデアだとすると、選べる問題が狭まりそれだけ合格から遠ざかる。得意産地の精度を上げるより苦手産地を潰していく方が、結果的に点数は上がりやすいのだ。
さて、この度お試しで勉強会をやってみた。理論とテイスティングを一緒に確認できるよう準備した内容で、それなりに成果が出たのでご紹介してみる。今回はFlight 1(同一品種)とFlight 2(同一国)を想定してやってみた。

Flight 1:同一品種(セミヨン)
①Tyrrell's Vat 1 Hunter Valley, ¥7,095, 12%
②La Meute Blanc, SAS Despagne, Bordeaux ¥7,260, 13%
③Dornier Semillon, Dornier, Stellenbosch ¥3,630, 13%
3つともセミヨン。セミヨンはMid-bud, Mid-ripeで収量の多い品種。環境条件が整えば貴腐菌もつきやすく、甘口ワインとして出題される可能性もある。
辛口に仕上げた場合、若いうちはリンゴやレモン、時には青草を思わせる控えめな香りを示し、ミディアムボディで中程度からやや高めの酸味を備える。最大の魅力は長期熟成能力にあり、瓶熟を経ることでトーストやハチミツのアロマが発展する。また、オーク樽(特に新樽)との相性が良く、バニラや甘いスパイスの風味と調和してワインに厚みが出る。貴腐ワインの場合は、ハチミツやドライフルーツのアロマに加え、ワックス(蝋)をコメントで書かなければならない。
産地ごとのスタイルの違いは以下のとおり。
ハンター・ヴァレー
暑く湿度の高い気候による病害を避けるため早期に収穫され、アルコール度数10〜11%程度の非常に酸味の高い完全辛口に仕上げられる。果皮からの抽出を避け、ステンレスタンクで醸造されるのが特徴。今回はこれをバンカーワインとして想定した。アルコールの低さ(12%)や酸の高さが特徴的だった。
ボルドー
主にソーヴィニヨン・ブランとのブレンドに用いられるが、今回はセミヨン100%で出題。オークの風味とよく調和しており、普通に完成度の高いワインだった。甘口ワインを出題しても良かったが、それだとかなりヒントになってしまうため、今回あえて辛口ワインを出題。
南アフリカ
南アフリカでは主にシュナン・ブランなどを主体とする「ホワイト・ケープ・ブレンド」の構成品種として用いられるセミヨンだが、実は単体のセミヨンもある。特にフランシュフック地区には樹齢100年を超える古木も残されており、ブレンドに複雑さや新鮮さをもたらす貴重な品種として高く評価されている。今回の出題はステレンボッシュの安価なセミヨンで、あまり美味しくなかった。
Flight 2:同一国(ギリシャ)
①Santorini Assyrtiko, Estate Argyros, 2022 ¥4,950 14%
②Nausa, Xinomavro, LAMNISTA 2022 ¥4,950 14.5%
③Agiorgitiko Nemea, Gaia Estate 2021 ¥7,689 14%
「ギリシャかよ!」と思われるかもしれないが、同一国フライトであれば出てもおかしくない問題で、こういう機会でもなければなかなかギリシャワインを飲む機会もない。
サントリーニ アシルティコ
サントリーニはエーゲ海に浮かぶ火山性のカルデラ島で火山性土壌が特徴。「強風で少雨」という過酷な環境から、枝を編み込んで地面近くに仕立てるバスケット型の伝統的な栽培「クルーラ」が行われる。この土地では、毎朝立ちのぼる霧が貴重な水分源となるのだが、このバスケットが霧の水分を閉じ込めるんだそうな。サントリーニは痩せた火山性土壌と乾燥した気候により、低収量ながら凝縮した果実が得られる。あとフィロキセラフリーの地であるため自根の古樹が多く残る。
今回アシルティコを出題したが、この品種は高温乾燥下でも高い酸味を維持したまま完熟することが最大の特徴で、辛口では柑橘類やストーンフルーツに火打石を思わせるミネラル感を示し、高い熟成能力を備えるほか、「ヴィンサント」のような極甘口ワインにも用いられる。このフライトでのバンカーワインはこのアシルティコだった。
ナウサ クシノマヴロ
ナウサはギリシャ北部マケドニア地方のヴェルミオ山南東斜面に位置し、冷涼な大陸性気候と年間を通じて比較的豊富な降雨に恵まれる産地だ。土壌や微気候は斜面の向きや地形によって多様であり、この複雑なテロワールが長期熟成向きの果実を育む。
代表品種クシノマヴロは、イタリアのネッビオーロに例えられる固有品種で、淡い色調ながら高い酸味と強いタンニンを持ち、若いうちは植物的な香りを示すが、熟成により花、ハーブ、スパイス、皮革、土などの複雑な香りへと発展する。近年は抽出を抑えた親しみやすいスタイルや、メルローとのブレンドも生産されている。ネッビオーロだと思ってイタリアを選んでしまうと、迷走してしまう。
ネメア アギオルギティコ
ネメアはペロポネソス半島に位置するギリシャ最大級の赤ワイン産地で、地中海性気候のもと標高によって栽培環境が大きく異なる。低地は甘口や大量消費用、中間地は高品質な赤ワイン、高地は高酸度のロゼワイン用ブドウの栽培に適している。
代表品種アギオルギティコは、軽快な早飲みタイプから長期熟成型、ロゼ、甘口まで幅広いスタイルを生み出す多用途な黒ブドウ。深い色調と中程度の酸味、柔らかなタンニンを持ち、熟した赤い果実や甘いスパイスの香りを示す。オーク樽熟成との相性にも優れ、ネメアの多様なテロワールを反映したさまざまなワインが造られている。割とお値段もするのだが、味わいは・・・であった。
今回は2フライトのみ。
参加してくださった皆さま、ありがとうございました。
