男女平等実現のための長い列に加わる ~均等法制定40年に寄せて~
1985年、職場での女性差別を禁じた男女雇用機会均等法が制定されました。今年は「制定40年」ということで、マスメディアでは関連企画が組まれています。
本コラムのタイトル「男女平等実現のための長い列に加わる」は、NHKスペシャル「未完のバトン」で、赤松良子さんの残した言葉の一つとして紹介されています。赤松さんは均等法制定の中心的人物。様々な困難と向き合う中で、己を励ましてくれた言葉としてこの1行を記しています。
男女平等実現のための長い列に加わる
・・・って、一体、いつまで並んでいなければならないのだろうか。
ビジネスコーチングの現場で、時に、焦りにも似た感情が湧いてくることがあります。
私は均等法制定の5年前、1980年の春に社会人になりました。
女性は結婚したら家庭に入るよね、普通。
男性は50歳が定年で女性は30歳。まぁ、25歳くらいまでにはダンナさんを捕まえた方がいいよね。
そういう時代でした。
社会に出て5年目の頃・・・
「そろそろ君も頑張らないとね…。クリスマスケーキと同じで25を過ぎると売れなくなるけど、君なら大丈夫、高望みさえしなければ。」
1ミリの悪気もなく、そう諭されたことは1度や2度ではありません。
そんなタイミングで均等法が制定されました。私はこんなふうに思いました。
男女均等ナンチャラ?男並みに働かないといけないのか?私は●●さんや××さんみたいにゴルフも麻雀も出来ないし、「24時間戦えますか」なんてコマーシャルもあるけど、そんなのムリ。
正直言って、均等法、迷惑です。
どうせ世の中、変わりっこないんだし…。
その時は、まさか自分が43年半もその会社に勤め、管理職や執行役員、グループ会社の社長を務め、その後、働く女性たちの「真の」活躍を支援するためのビジネスコーチとして活動することになろうとは、想像もしていませんでした。だいたい「30歳定年」と刷り込まれた頭では、それ以降の、自分が働いている姿をイメージすることなんて、できるはずもない。
この40年で「長蛇の列」はいくらか短くなったのだろうか?
さて、時は流れ、2025年になりました。今年も「企業の未来プロジェクト~仙台女性リーダー・トレーニング・プログラム」が5月下旬に開講し、23名の受講者が参加しています。女性管理職育成のためのこのプログラムに関わって11年目になりました。半年に及ぶプログラムの初回と最終回に「ビジョン構築」をテーマにした講座を担当しています。さらに受講者との1on1コーチとしても参画しています。
このプログラムの11期生となる今年の受講者たちと1期生との間にはどれほどの意識の違いがあるのでしょうか。
まずは古い時代へとワープしてみます。
私の現役時代には、ビジネス界はジャングルに似て、いつ、どこから猛獣が飛び出してくるか分からない。油断すると頭上や沼の中から毒蛇やワニが襲ってくるかも知れないという恐怖心に似たものがありました。サバイバル術を求めてビジネス書を読み漁った経験もあります。
今はどうでしょう。
「管理職になるにあたり、どのような不安や戸惑いを感じていますか?」という問いに対する答えに、それほど大きな違いはありません。相変わらず「なんで私なんかが管理職に?」「女性で初の管理職になってしまって途方に暮れている…」と不安に思っている人たちが少なからずいらっしゃいます。
一方で、「社内の女性管理職の数も増えてきたし、自分も課長くらいにはなるのだろうなぁ」と思っている人が増えたようにも感じます。
少なくとも、世間一般としては女性の昇格が珍しいことではなくなり、ハラスメントに関する意識は高まりました。1期生の頃には暗中模索せざるを得なかったことや、一所懸命に踏ん張らなければいけなかったことも、11期生には、すでに当然のことであり、基本ルールが整備されているところからのスタートになっている面もあろうかと思います。
少しずつですが、世間は変わってきてはいるのですね。その変化をきちんと受け止め、何が変わり、何が変わっていないのかをシェアする必要があるように感じています。
世間の意識とマスメディア
ところで、世間の意識を変えていくのに、マスメディアの担う役割はとても大きいと考えます。特に、中高年男性で構成されるマジョリティの意識改革、さらには女性たち自身が抱えるアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を是正していくためにも、マスに向けて発信を続けるメディアの存在は重要です。
5月、一般社団法人日本女性記者協会のキックオフイベントにオブザーバー参加しました。新聞やテレビの報道記者として仕事をしている女性たちが、どのような想いを抱えているのか、赤裸々な声に触れました。その中には、私がテレビの番組制作に携わっていた頃に感じていたことと同じような話がたくさんありました。
ちっとも変ってないじゃない!時代は進んでいないのか?
私も含めて、先輩女性たちがもっとNo!を言うべきだったのか?
チカラ足らずでごめんなさい、と心の中で何度も頭を下げました。
ニュースルームに多様性を!
一般社団法人日本女性記者協会が目指すことを知っていただきたいと思い、以下に引用します。
私たちのミッション
日本の大手メディアでは、ニュースを送り出す意思決定の大勢を男性が占めています。ジェンダーの偏りは、ニュースの価値判断に影響します。女性たちの多くに見えていて共有されている世界-たとえば性暴力にさらされる日常や、性差別的な社会の構造や欠陥ーは、軽視されてきたのではないか。マジョリティーである日本人の中高年男性による意思決定によって、マイノリティーのかかえる問題に「鈍感」になっているのではないか。私たちはそんな問題意識を持ってきました。
私たちがめざすのは「ニュースルームに多様性を」
メディアの意思決定におけるジェンダーバランスの確保は、多様な人々で構成する社会のニーズにこたえうるニュースを届け、報道の使命を果たすことにつながります。さらにはジェンダー平等で世界に遅れをとる日本社会の変化を加速させ、日本の民主主義や日本経済をしなやかに強くすることにもつながります。
社会の価値観を変えるために重要な役割を果たすマスメディアにおいて、何を、どのように取り上げ、伝えていくかを決める「決定権を持つ人たち」の中に、様々な背景や価値観を持つ人たちが増えてほしいと切に願います。
ジェンダーギャップ指数と改正女性活躍推進法
6月12日、ジャンダーギャップ指数が発表されましたね。日本は相変わらずの体たらくです。
その前日に改正女性活躍推進法が公布されました。来年4月からは101人以上の企業は男女の賃金格差と管理職の女性比率を公表しなければならなくなります。これで少しはスピードが上がるのでしょうか。列に並ぶ時間が少しでも短くなるといいのですが。
もし、企業側が、法律に縛られ、乱暴に(いわゆる数合わせで)女性の登用を進めるのであれば、そのひずみは、性別を問わず、働く人たちとその家族に広がるでしょう。
数を合わせるのではなく、目的地へのベクトルをこそ共有しましょう。女性の活躍だけでなく、男女問わず、若手、ベテラン、中堅が、それぞれのポテンシャルを存分に発揮することこそが、停滞する日本経済を立ち直らせるための鍵です。そのための環境改善と、対話の積み重ねが求められています。
第1世代 私の「働く」~均等法制定40年
このタイミングで私が住む街の新聞社が、均等法の第一世代を取材した特集を組みました。「彼女たちの歩みを通し、誰もが自分らしく働ける雇用環境を考える特集」と書かれています。実名、顔出しで取材に応じた方もいらっしゃれば、匿名で自らの経験を語った方もおられ、形は様々でしたが、いずれも、ある種の使命感をもって取材を受けてくださったのではないかと拝察しています。彼女たちに心から敬意を表しますし、その想いを受けとめて記事という形で伝えてくれた担当記者や関係者の皆さんにも感謝を伝えたい気持ちです。
どうせ、変わりっこないサ、もしも当事者が黙っているとしたら…、ね。
20代の私は「どうせ世の中変わりっこない」なんて思っていました。
60代も半ばを過ぎた今、つくづくこう思います。
ある意味、その通りだと。
同時に、「だけど、そうでもないんだよね」とも。
いくら法律が出来ても、それだけでは変わらない。
当事者が沈黙を続けるとしたら現状は変わるわけない。
声を上げない人たちは、いないことにされてしまいがちです。
だから・・・
大きな声が出なくてもいい。
首を傾げるだけでもいい。
休み休みで構わない。
不利益を被っている人たちが、自分に出来る方法でその違和感を表明し、共感する人たちと緩やかな繋がりを創る。その繋がりを世間に開き、マジョリティの中から仲間を増やすことができれば「未来の扉」は開きます。
対峙するのではなく、ともにハッピーになる世界を目指すことで世界は変えていくことができる。幸せになりたくない人なんて、いないはずだから。
誰もが自分らしく働き、働くことを通して他者と支えあい、充実感をもって暮らせる社会へ。均等法制定40年に寄せて、今、願うことです。
