「女性が輝く社会」って?
女性活躍推進の「活躍」の主体は誰なのか。
言うまでもなく女性本人です。
「もっと女性が輝く社会」に?
「輝く」が意味するのは昇進昇格だけなのでしょうか。
3月3日付の河北新報(朝刊)マンデー経済・ビズラボのコラム「ちょっとEはなし」で、地方企業における女性活躍の好例を紹介しました。
もっとくわしくお伝えします。
サポート職の女性たち
私は宮城県仙台市を拠点として、1対1のコーチング、企業研修、講演、執筆活動を行っていますが、クライアントは県内に留まりません。東京をはじめ、大阪、名古屋、長野、三重など他地域の方々とも仕事をさせていただいており、各地方の支店・支社でサポート職を務めている女性たちと対話する機会があります。
「サポート職」という言葉が誤解を生みがちなのですが、サポートだからといって「誰にでもできる簡単な仕事」「軽い役割」なのではありません。サッカーの試合を引き合いに出すまでもなく、名アシストがあればこそチームは勝利できるのです。
彼女たちが自信とモチベーションを高め、ポテンシャルを発揮できる環境が必要だと、コーチングの現場でいつも痛感しています。
ジョブ・クラフティング
以前、サポート職の女性たちを対象に、ジョブ・クラフティングを取り入れた研修を行いました。ジョブ・クラフティングとは、従業員一人ひとりが仕事に対する認知や行動を自ら主体的に修正していくことです。会社や上司の指示・命令ではなく、働く人々が自分自身の意思で仕事を再定義し、自分らしさや新しい視点を取り込んでいくことでモチベーションが高まり、パフォーマンスの向上につながるという考え方です。
その研修のクライアントは東京に本社がある大手企業でした。オンラインで地方のサポート職が集い、課題を共有しました。
支店・支社のサポート職という立場は結構孤独な面があります。同じ職場内に同じ仕事をしている人がいない、というケースが多い。もっといえば、自分以外は男性の営業担当者。彼らは外出しがちで、日中事務所にいるのは自分一人…という場合もあるでしょう。
自分の目の前の仕事が会社全体とどうリンクしているのか、営業活動の現場でどのように役立っているのか、なかなか実感できない。情報不足で視野が広がらない。成長実感や自己効力感に乏しく、閉塞感を感じている方も少なくありません。
私自身、会社員としてのスタートは東京支社でした。15名程度の支社に女性は私ともう一人だけ。自分が担当する仕事への疑問を訊く相手がいませんでした。
ある時、同業他社で同じような立場にいる女性たちが集う勉強会に参加しました。参加者は皆さん私より年上でした。先輩たちは、私が抱いている疑問や「これって、変な慣習なのでは?」と感じている点に共感してくれて「わかる、わかる。あれって結構大変な作業だしねぇ」とか、「こういうやり方はどう?」「こういう考え方もあるわよ!」と知恵を貸してくれました。そのときのホッとした感覚、分かってもらえた嬉しさ、具体的な方法を教えていただいたことへの感謝の気持ちを(もう40年以上も前のことなのに)昨日のことのように覚えています。
そのような実体験も踏まえ、ジョブクラフティングを活用しながらの研修を組み立てました。時代は大きく進んで私の若いころとは違ってるよねぇ、参加者の皆さんはどんな反応だろう…と思ったのですが、時代は変われど「思いは同じ」のようで、「課題を共有できて心が軽くなり、やる気が出た」「早速試してみよう!という知恵がたくさんあった」という喜びの声が寄せられました。
時は流れ・・・
昨年、とても嬉しいことがありました。
その企業の仙台支店に「営業マネジメント課」という部署が新設されたというのです。組織変革の目的や現状について、支店長にお話を伺いました。
支店の中には営業チームが複数あり、サポート職の女性たちが一人ずつ配属されています。彼女たちは、新設された「営業マネジメント課」を兼務し、同じ課のメンバーとして横のつながりを強めました。
それぞれが抱えている課題や情報を共有し、互いの仕事に対する理解を深め、業務の平準化を行いました。それにより、誰かが休暇をとった穴を他の人が埋めることができるようになり、「お互い様精神」で気持ちの負担なく休めるようになったそうです。
また、これまで個人で頑張っていたことをチーム全体の資産とし、課題への対応も個人レベルではなくチームで対処できるようになりました。個人個人が感じていた作業に対する不満(たとえば煩雑さや非効率なやり方)を、仕事に対する個人的な「愚痴」や「ボヤキ」ではなく、チームとして取り組むべき「課題」に昇格させ、自分たちで改善方法を検討。解決のために必要なスキルは何かを洗い出し、その習得に乗り出しました。
これら自主的な取り組みにより支店内のDX化が進み、生産性がアップ。ついに、本社からDX推進に関する表彰を受けるまでとなりました。
さらに、これらの流れは他地域のサポート職からも注目されはじめ、交流の輪が広がっているとのことでした。
支店長は、本社に対して営業マネジメント課の新設を提案するにあたり「この支店のサポート職メンバーなら、きっと良い成果を出せる」と確信していたそうです。それは、彼女たちの結束力、自分たちの仕事に対する誇りと意欲の高さを感じたから、と仰いました。そしてそれは、数年前の私のジョブクラフティングの研修がきっかけの一つになっていると、嬉しい言葉をいただきました。そこで芽生えたものが大きく育っているのだとしたら、これ以上嬉しいことはありません。
久しぶりで再会した彼女たちは「課として発信できるので仕事がやりやすくなりました」「ほかにも取り組みたいことがあるんですよ」と明るい声で話してくれました。その様子に内側からにじみ出るような輝きを感じました。
私は、男女に関わらず、そして立場の違いに関わらず、チームに関わる人たちは皆「重要なメンバー」として尊重されなければならないし、誰もが力を発揮できるような工夫をすることが、チームリーダーのもっとも重要なミッションだと考えています。
そういう意味で、支店長はリーダー―シップを発揮して組織を活性化させたと言えるでしょうし、メンバーの女性たちは成功体験を積み重ね、これからも誇りをもって新たな課題にチャレンジしていくと思います。
個人にとっても組織にとっても、仕事を通した成長のスパイラル、上昇気流の誕生です。
私は、「女性が輝く社会って何さ?」という問いかけに対する答えのヒントをもらった気がしています。
女性が輝くって?
私は組織運営において女性がもっとリーダーシップを発揮してほしいと考えていますが、管理職になることだけが全てではない、とも思っています。
自分のポテンシャルを存分に発揮し、周囲を動かしていくことが大切なのです。小さなことでも構わないのですが、昨日までの自分を乗り越え、自分の手で自分の可能性の扉を開いて前進する。それが自信となり「輝き」に変わるのではないでしょうか。
外から強い光を当てて輝かせるのではなく、内側からの光で輝く。
自分で自分にOKを出し、自信を深め、周囲に感謝する心を広めていくことこそが、輝くということです。そして、輝き方は、実に様々、人それぞれのはずです。
組織をリードする立場にある人には「性別や立場の違いに関わらず、全員をプレイヤーとして、チームの大切なメンバーとして扱ってほしい。女性たちをゲーム(仕事の場)にちゃんと迎え入れてほしい。そうすれば、チームはもっと良くなり、勝率が上がりますよ」と力説したいと思います。
