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地域で育つを支えるのは誰なのか― 医療的ケア児支援法改正の次に考えたいこと ―制度を知る。その先を考える。

Today's Insight

医療的ケア児支援法が改正されました。

ニュースでは「支援対象が広がる」「法律が改正された」という言葉が紹介されることが多いですが、今回の改正は、それだけではありません。

私は、この法律からもう一つ大きなメッセージを感じています。

それは、

「医療的ケアが必要な人を支える」のではなく、「地域で暮らし続けられる社会をつくる」ことへ、一歩踏み出そうとしている。

ということです。

法律は変わります。

でも、本当に変わるべきなのは、私たちの地域なのかもしれません。


Background

「地域で暮らす」という当たり前

医療技術の進歩によって、人工呼吸器やたんの吸引など、日常的に医療的ケアが必要な子どもたちも、自宅で家族と暮らせるようになりました。

これは医療の大きな進歩です。

しかし、その一方で、新たな課題も生まれました。

保育園に通えるのか。

学校生活を送れるのか。

家族は働き続けられるのか。

困ったとき、誰に相談すればいいのか。

医療は進歩しても、地域の仕組みが追いついていなければ、「地域で暮らせる」ということは実現しません。

そこで2021年に医療的ケア児支援法が制定され、国や自治体が支援に取り組む責務が明確になりました。

そして今回、その法律がさらに改正されました。


Current Status

今回の改正で変わったこと

今回の改正では、支援の対象が大きく広がりました。

これまでは「医療的ケア児」とその家族が中心でしたが、改正後は、医療的ケアが必要なまま成長した人や、重症心身障害のある人なども対象となります。

つまり、

「子どもの時期だけを支える法律」から、「人生を通して支える法律」へ。

という考え方へ広がったのです。

また、本人の意思を尊重しながら地域で暮らすこと、就労や住まい、切れ目のない支援体制なども、これまで以上に重視されるようになります。

制度として見れば条文の改正です。

しかし、その背景には、国からの一つの問いかけがあるように思います。


What This Means

地域で育つことは、誰か一人の仕事ではない

子どもは、福祉事業所だけで育つわけではありません。

家庭があります。

保育園があります。

学校があります。

病院があります。

友達がいます。

地域のお店があります。

近所の人との関わりがあります。

つまり、一人の子どもの成長には、多くの人が関わっています。

だからこそ、「地域で育つ」ということは、福祉だけでは実現できません。

医療だけでもありません。

教育だけでもありません。

それぞれがつながり、一人の子どもを中心に支えていくことが必要になります。

今回の法改正は、そうした「つながる支援」の大切さを、あらためて示しているように感じます。


地域とは、建物ではなく「人とのつながり」

「地域で暮らす」と聞くと、住む場所のことを思い浮かべるかもしれません。

でも、本当の地域とは、建物や地図のことではありません。

困ったときに相談できる人がいる。

学校や医療機関が連携している。

近所の人が自然に声をかけてくれる。

障害があることを特別視するのではなく、一人の子どもとして接してくれる。

そんな人とのつながりがある場所こそ、本当の意味で「地域」なのではないでしょうか。

法律は、そのつながりをつくるきっかけを示してくれます。

けれど、実際につながりを育てていくのは、私たち一人ひとりです。


私たちにできること

福祉の制度は、専門職だけのためにあるものではありません。

地域で暮らすすべての人に関わるものです。

もし近くに医療的ケアが必要な子どもがいたら。

もし学校で一緒に学ぶ機会があったら。

もし地域のイベントに参加していたら。

そのとき私たちは、「特別な存在」として見るでしょうか。

それとも、「同じ地域で暮らす一人」として迎えるでしょうか。

制度は社会の方向性を示します。

その方向へ歩いていくのは、私たち自身です。


編集後記

制度を読んでいると、「支援」という言葉が何度も出てきます。

でも、本当に必要なのは「支援される人」と「支援する人」を分けることではないのかもしれません。

誰もが支えたり、支えられたりしながら暮らしています。

子育てをするとき。

病気になったとき。

高齢になったとき。

困ったとき。

私たちは皆、誰かの力を借りながら生きています。

そう考えると、医療的ケア児支援法の改正は、一部の人のための法律ではありません。

「どんな人でも地域で暮らせる社会を目指そう」という、私たち全員へのメッセージなのではないでしょうか。

制度を知ることは、法律を覚えることではありません。

制度の背景にある願いを知り、自分たちの地域で何ができるかを考えることです。

皆さんの地域は、誰もが安心して暮らせる場所になっているでしょうか。


さらに詳しく知りたい方へ

今回の記事の背景となった一次資料は、次のページから確認できます。

  • こども家庭庁「医療的ケア児等とその家族に対する支援」

  • 衆議院「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律」

  • 参議院 本会議議決情報

法律の条文だけを見ると難しく感じるかもしれません。

そんなときは、「本人の意思」「地域生活」「家族」「切れ目のない支援」といった言葉に注目して読んでみてください。

国がどのような社会を目指そうとしているのかが、少しずつ見えてきます。


制度を知る。その先を考える。

一般社団法人 福祉でつながる会
代表理事 高田 誠

制度は、誰かの暮らしを支えるためにあります。

だから制度を知ることは、制度そのものを理解するだけではなく、その先にいる人の暮らしや、地域の未来を考えることでもあります。

福祉を取り巻く社会は、これからも変化を続けていきます。

だからこそ、一つひとつの制度改正や政策の背景を知り、「国はどのような社会を目指しているのか」「私たちには何ができるのか」を、皆さんと一緒に考え続けていきたいと思います。

この小さな気づきが、誰かの暮らしや地域の未来を考えるきっかけになれば幸いです。

▼ プロフィールはこちら
https://note.com/welfare_connect

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