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医療的ケア児支援法改正から見える福祉の未来制度を知る。その先を考える。Vol.1

Today's Insight

「医療的ケア児を支える法律」は、「人生を支える法律」へ変わろうとしています。

法律が改正されると聞くと、多くの人は「何が変わるのだろう」と考えます。

対象者が増えるのか。
新しいサービスが始まるのか。
利用できる制度が変わるのか。

もちろん、それらも大切な視点です。

しかし、制度改正にはもう一つ、見落としてはいけない側面があります。

それは、「国はこれからどのような社会を目指そうとしているのか」というメッセージです。

現在、制定以来初めてとなる大きな改正が進められている「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」。

改正案では、医療的ケア児だけでなく、18歳以降の医療的ケア者や重症心身障害児・者まで支援対象を広げる方向で議論が進められています。

一見すると「対象者が増える改正」に見えるかもしれません。

しかし、この動きを少し引いて眺めてみると、違った景色が見えてきます。

それは、「子どもを支える制度」から、「人生を通して支える制度」への転換です。

今回の『福祉インサイト』では、この制度改正の背景から、これからの福祉が向かう方向を一緒に考えてみたいと思います。


Background

制度は、ある日突然生まれるものではありません。

社会の中で積み重なってきた課題が、「今の仕組みでは支えきれない」となったとき、新しい制度や法律がつくられます。

医療的ケア児支援法も、その一つです。

この法律が制定された令和3年頃、多くのメディアでは「医療的ケア児への支援が始まる法律」と紹介されました。

もちろん、それは間違いではありません。

しかし、本当にこの法律が向き合っていた課題は、別のところにありました。

それは、

「家族だけが支援を担わざるを得ない社会」

です。

医療的ケアが必要な子どもを育てる家庭では、24時間体制でのケアが必要になることも少なくありません。

保育所や学校への受け入れが難しい。
短期入所などの社会資源が不足している。
訪問看護や福祉サービスだけでは支えきれない。

その結果、多くの家庭では、家族が仕事を辞めざるを得ない状況が生まれてきました。

実は、この法律の正式名称は、

「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」

です。

法律名に「家族」が入っていること自体、この法律の特徴と言えるでしょう。

さらに、第1条(目的)には、

「その家族の離職の防止に資すること」

という言葉が明記されています。

福祉関係法令の中でも、とても特徴的な表現です。

つまり、この法律が目指していたのは、「医療的ケア児を支援すること」だけではありません。

家族だけに支援を任せる社会から、地域全体で支える社会へ。

その転換こそが、この法律の原点だったのです。


Current Status

現在、この法律は制定以来初めてとなる本格的な改正に向けて議論が進んでいます。

これまでに、当事者や家族、自治体、関係団体へのヒアリングが重ねられ、改正の骨子案が整理されました。

さらに、超党派の議員連盟では改正条文案が了承され、各党での手続きも進み、法案提出に向けた最終調整の段階に入っています。

今回の改正で大きなポイントとなるのは、支援対象を医療的ケア児だけに限定せず、18歳以降の医療的ケア者や重症心身障害児・者へと広げようとしていることです。

子ども時代だけを支えるのではなく、成長し、大人になってからも切れ目のない支援を続けられる仕組みへ。

その方向性が、今回の改正から読み取れます。


What This Means

制度改正を見るとき、私たちは「何が変わるのか」に目を向けがちです。

しかし、本当に考えたいのは、「なぜ今、この改正が必要なのか」ということです。

今回の改正から見えてくるのは、「人生のどこかを支える福祉」から、「人生そのものを支える福祉」への転換ではないでしょうか。

子どもの頃は児童発達支援や学校、大人になると生活介護や就労支援、医療や訪問看護、地域生活。

これまで、それぞれの制度はライフステージごとに区切られてきました。

しかし、本人にとって人生は一続きです。

18歳になったからといって、医療的ケアが不要になるわけではありません。

家族の負担がなくなるわけでもありません。

だからこそ、これからは制度同士を「つなぐ」ことが、これまで以上に重要になっていくのでしょう。

一方で、この仕組みは一つの法人だけで実現できるものではありません。

医療、福祉、教育、行政、地域住民。

さまざまな人が関わり合いながら、一人の人生を支えていく社会が求められています。

今回の改正は、支援対象を広げるためだけの法律ではありません。

「地域で支える」という考え方を、子どもから大人まで切れ目なく広げていくための一歩なのかもしれません。


編集後記

制度は、社会が抱える課題を映す鏡です。

今回改めて医療的ケア児支援法を読み返して感じたのは、この法律は「医療的ケア児のための法律」というより、「家族だけに支援を背負わせない社会を目指す法律」なのだということでした。

そして、その考え方は今、新たな段階へ進もうとしています。

福祉の制度は、時代の変化とともに少しずつ形を変えていきます。

だからこそ、「制度が変わった」という事実だけで終わるのではなく、「なぜ、その変化が必要だったのか」に目を向けることが、未来の福祉を考える第一歩になるのではないでしょうか。

この『福祉インサイト』が、制度を知るだけではなく、その背景や社会の変化を一緒に考えるきっかけになれば幸いです。


さらに詳しく知りたい方へ

今回の記事は、公表されている法令や行政資料などの一次資料をもとに作成しています。

制度の背景をより深く知りたい方は、ぜひ以下の資料もご覧ください。

■ e-Gov法令検索(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律)
https://elaws.e-gov.go.jp/

■ こども家庭庁「医療的ケア児支援」
https://www.cfa.go.jp/

■ DINF(障害保健福祉研究情報システム)
https://www.dinf.ne.jp/

■ 全国重症心身障害児(者)を守る会
https://www.normanet.ne.jp/~mamoru/

■ 医療的ケア児者支援法改正に関する最新の国会資料・議員連盟資料
(URLが変更する可能性がある為、検索でお願いします)
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